「ゴア嗚呼嗚呼嗚゛呼ああああ嗚゛呼嗚呼嗚呼嗚呼゛あああああああ゛ああ゛あああああ゛あああああああああああああああああああああ゛あああ゛ああああああああ!!!」
まさに【悪魔】と表現するのが正しい。
【無神】は両手に力の全てを集中させ、胸を反らせて獣のように吼えた。
その両手には、今見た【圧魔力】。赤い魔力の超塊。
砂煙も、大きな瓦礫さえも巻き込む、巨大な台風の目のようなそれを両手に宿らせて。
無神は可能な限りの速さで動き。
数百のアトラ達の分身をまとめて消し去った。
『や、やばいいい! ワシの【圧魔力】までコピーしよったぁあ!』
『馬鹿アトラが! 【圧魔力】まで盗られたじゃねーか!』
『仕方ないじゃろ!? というか仕方ないじゃろ!?』
『コロス』
テレパシー、により明確に伝えられたのは【無神】の意志である。これほどまでに【無神】第三形態が感情を高ぶらせたのは、初めてなのかもしれない。三国の王は、それだけのフォースを持っているということである。
まあだから【無神】に勝てるのかと言ったら、それとこれとは別で。
『がっ!?』
まだ分身は百近く残っていたはずだった。
だが、それだけの数、確立をものともせず。
【無神】は本物のアトラを引き当てた。
「【圧魔力】」
【無神】は静かに呟いた。その赤い魔力の塊を腹に当てられたアトラは、くるくる、ばきばきと丸まって、小さくなって、最後には消えた。
昇天。天使の歌声
その一撃が決まったのは、【無神】だったから、というしかない。
「ちなみにチーム戦なので三人全員死ぬまで【三国王チーム】の負けは決定しません。あとこれ番外編なんで死んでも別に本編には関係ありません。以上フルファイア注釈」
緊張感のないフルファイア司会の声。だが、アトラがあっさり消され、エキードニアがコロセウムの土に落ちて、カランと寂しく音を立てた。
【分身】はアトラのスキルだったので、残った周とアイゼンの【分身】スキルは消え、【分身】自体も消滅した。
残ったのは、【無神】を睨む周と、あぐらをかいて座っているアイゼンのみだった。
【無神】の片手にはまだ【圧魔力】があった。どうやらスキルを複合させて本来全魔力消費である【圧魔力】を制御しているらしい。一体どんだけだ、と周は思った。
周の目の前に、赤い双眸。
赤い双眸の目の前に、周の不敵な笑顔。
「あばよ、バケモン」
アイゼンの【共有】が発動。広がる巨大な陣。
周は【共有】を既に発動していたので無理だった。この作戦のポイントは、スキルの共有、体力、魔力等の平均化、そして【共有】の対象は自由。敵であろうが、NPCであろうが、関係はない。
あとの問題は時間。【共有】はあぐらをかいて座りながら何分も対象のことを考えるという変態的で無防備な儀式が必要なのである。だがそれはもう解決した。一人犠牲は出したが、解決したのだから、一向に良いのだ。
「私達の勝ちだ。【無神】」
【無神】の全てのスキルがアイゼンと共有される。=アイゼンと共有している周もそのスキルを共有する。
【無神】の驚異的な体力や魔力は全てアイゼンと平均化される。=アイゼンと周の体力も平均化される。=その処理がアイゼン、周、【無神】の体力、魔力全て平均化されるまで繰り返される。
以上をもちましてアイゼン、周、【無神】、同一化計画が完了。
スキル、体力、魔力、全て同じなキャラクターが、二対一でぶつかれば、どちらが勝つのかは誰でもわかるだろう。
「さて、やっと決着がつきました。【三国王チーム】の勝利です!」
フルファイアが高らかに宣言した。
まさに【悪魔】と表現するのが正しい。
【無神】は両手に力の全てを集中させ、胸を反らせて獣のように吼えた。
その両手には、今見た【圧魔力】。赤い魔力の超塊。
砂煙も、大きな瓦礫さえも巻き込む、巨大な台風の目のようなそれを両手に宿らせて。
無神は可能な限りの速さで動き。
数百のアトラ達の分身をまとめて消し去った。
『や、やばいいい! ワシの【圧魔力】までコピーしよったぁあ!』
『馬鹿アトラが! 【圧魔力】まで盗られたじゃねーか!』
『仕方ないじゃろ!? というか仕方ないじゃろ!?』
『コロス』
テレパシー、により明確に伝えられたのは【無神】の意志である。これほどまでに【無神】第三形態が感情を高ぶらせたのは、初めてなのかもしれない。三国の王は、それだけのフォースを持っているということである。
まあだから【無神】に勝てるのかと言ったら、それとこれとは別で。
『がっ!?』
まだ分身は百近く残っていたはずだった。
だが、それだけの数、確立をものともせず。
【無神】は本物のアトラを引き当てた。
「【圧魔力】」
【無神】は静かに呟いた。その赤い魔力の塊を腹に当てられたアトラは、くるくる、ばきばきと丸まって、小さくなって、最後には消えた。
昇天。天使の歌声
その一撃が決まったのは、【無神】だったから、というしかない。
「ちなみにチーム戦なので三人全員死ぬまで【三国王チーム】の負けは決定しません。あとこれ番外編なんで死んでも別に本編には関係ありません。以上フルファイア注釈」
緊張感のないフルファイア司会の声。だが、アトラがあっさり消され、エキードニアがコロセウムの土に落ちて、カランと寂しく音を立てた。
【分身】はアトラのスキルだったので、残った周とアイゼンの【分身】スキルは消え、【分身】自体も消滅した。
残ったのは、【無神】を睨む周と、あぐらをかいて座っているアイゼンのみだった。
【無神】の片手にはまだ【圧魔力】があった。どうやらスキルを複合させて本来全魔力消費である【圧魔力】を制御しているらしい。一体どんだけだ、と周は思った。
周の目の前に、赤い双眸。
赤い双眸の目の前に、周の不敵な笑顔。
「あばよ、バケモン」
アイゼンの【共有】が発動。広がる巨大な陣。
周は【共有】を既に発動していたので無理だった。この作戦のポイントは、スキルの共有、体力、魔力等の平均化、そして【共有】の対象は自由。敵であろうが、NPCであろうが、関係はない。
あとの問題は時間。【共有】はあぐらをかいて座りながら何分も対象のことを考えるという変態的で無防備な儀式が必要なのである。だがそれはもう解決した。一人犠牲は出したが、解決したのだから、一向に良いのだ。
「私達の勝ちだ。【無神】」
【無神】の全てのスキルがアイゼンと共有される。=アイゼンと共有している周もそのスキルを共有する。
【無神】の驚異的な体力や魔力は全てアイゼンと平均化される。=アイゼンと周の体力も平均化される。=その処理がアイゼン、周、【無神】の体力、魔力全て平均化されるまで繰り返される。
以上をもちましてアイゼン、周、【無神】、同一化計画が完了。
スキル、体力、魔力、全て同じなキャラクターが、二対一でぶつかれば、どちらが勝つのかは誰でもわかるだろう。
「さて、やっと決着がつきました。【三国王チーム】の勝利です!」
フルファイアが高らかに宣言した。
【無神】の【神速】。だが。
アイゼン、アトラ、周が。
総勢約一千になっていた。
(分身か……)
【無神】は戦闘が始まって初めて何か考えた。
コロセウムを埋め尽くすほどの食料達。まとめて倒す無神無双をしても良いが、それは敵の思う壺だろう。だが、【神速】は障害物に当たるとすぐ止まる。とりあえずは襲ってきた分身たちをなぎ払うことを選んだ。いや、選ばされたのか。
爆発や爆圧、アイス、ファイア、ウィンド、アース、超能力、斬、潰、全てを尽くす。
ぎゃあ、うわあ、とわざとらしい声をあげて消えていくアトラ、アイゼン、周の分身たち。質量があるので【神速】では通り抜けられないのがネック。だが、分身自体の攻撃力は皆無のようだ。かといって無視して本物に攻撃されれば致命的になる可能性も否めない。
屈辱……
【分身】スキルは得た。こちらもこれで対抗しても良い。だが、我【無神】は唯一無二。
以上。【無神】の思考。
それはさらにアイゼン達の作戦を成功へと導く。
分身たちの合間を縫って、銀色の鞭エキドーニアが【無神】を捕らえた。そして赤髪の分身の一人が、【絶対領域】を展開して【無神】に殴りかかった。
もちろん【無神】も【絶対領域】を展開。激突。
もちろんもちろん数秒で周は負けて弾き飛ばされた。
『はえーんじゃよ! もう少し粘らんかい根性無しが!』
『無茶言うな! じゃあおまえがやれアトラ!』
「言われるまでもない! じぇい! 【圧魔力】!」
【無神】が【絶対領域】でエキドーニアを振りほどこうとした一瞬の隙を狙い、アトラが魔力をぎっしり圧縮させた青の球体を右腕に展開し、【無神】に叩きつけようとしていた。
そのモーションは大振りで、【無神】は【神速】で避けようとしたが。
「おれも今は【鞭術:A】所持していることを忘れないように」
ちぎれたエキドーニアを巧みに操る周のフォローにより。
それは完全に決まった。
空気、というよりも空間が全てそこに殺到したかのような感覚をそこにいたものは味わう。それが【絶対領域】さえ貫く威力を持つことは、どこかで証明されていた。
あり得ないほど回転して、【無神】は壁に叩きつけられた。コロセウムの何メートルもあろうかという壁が、派手に壊れ、崩れ、砂煙が舞う。
『アトラ、おれたちの魔力も全て使ったな……』
『……まあ、圧魔力は全魔力消費技じゃしな……』
アトラ一人の魔力が消費されても、【共有】の平均化効果により、周とアイゼンの分の魔力もアトラに分配され、0にはならない。それはアトラの魔力が減る毎に繰り返されるので、三人の魔力が0にならない限り、終わらないということである。
『今、おれたち全員魔力0だよな』
『――ああ、そうじゃよ』
巨大な壁の瓦礫が宙に舞い上がっていた。赤い双眸が砂煙の向こう側で怒りに燃えていた。
『じゃあ、あれどうすんの』
アイゼン、アトラ、周が。
総勢約一千になっていた。
(分身か……)
【無神】は戦闘が始まって初めて何か考えた。
コロセウムを埋め尽くすほどの食料達。まとめて倒す無神無双をしても良いが、それは敵の思う壺だろう。だが、【神速】は障害物に当たるとすぐ止まる。とりあえずは襲ってきた分身たちをなぎ払うことを選んだ。いや、選ばされたのか。
爆発や爆圧、アイス、ファイア、ウィンド、アース、超能力、斬、潰、全てを尽くす。
ぎゃあ、うわあ、とわざとらしい声をあげて消えていくアトラ、アイゼン、周の分身たち。質量があるので【神速】では通り抜けられないのがネック。だが、分身自体の攻撃力は皆無のようだ。かといって無視して本物に攻撃されれば致命的になる可能性も否めない。
屈辱……
【分身】スキルは得た。こちらもこれで対抗しても良い。だが、我【無神】は唯一無二。
以上。【無神】の思考。
それはさらにアイゼン達の作戦を成功へと導く。
分身たちの合間を縫って、銀色の鞭エキドーニアが【無神】を捕らえた。そして赤髪の分身の一人が、【絶対領域】を展開して【無神】に殴りかかった。
もちろん【無神】も【絶対領域】を展開。激突。
もちろんもちろん数秒で周は負けて弾き飛ばされた。
『はえーんじゃよ! もう少し粘らんかい根性無しが!』
『無茶言うな! じゃあおまえがやれアトラ!』
「言われるまでもない! じぇい! 【圧魔力】!」
【無神】が【絶対領域】でエキドーニアを振りほどこうとした一瞬の隙を狙い、アトラが魔力をぎっしり圧縮させた青の球体を右腕に展開し、【無神】に叩きつけようとしていた。
そのモーションは大振りで、【無神】は【神速】で避けようとしたが。
「おれも今は【鞭術:A】所持していることを忘れないように」
ちぎれたエキドーニアを巧みに操る周のフォローにより。
それは完全に決まった。
空気、というよりも空間が全てそこに殺到したかのような感覚をそこにいたものは味わう。それが【絶対領域】さえ貫く威力を持つことは、どこかで証明されていた。
あり得ないほど回転して、【無神】は壁に叩きつけられた。コロセウムの何メートルもあろうかという壁が、派手に壊れ、崩れ、砂煙が舞う。
『アトラ、おれたちの魔力も全て使ったな……』
『……まあ、圧魔力は全魔力消費技じゃしな……』
アトラ一人の魔力が消費されても、【共有】の平均化効果により、周とアイゼンの分の魔力もアトラに分配され、0にはならない。それはアトラの魔力が減る毎に繰り返されるので、三人の魔力が0にならない限り、終わらないということである。
『今、おれたち全員魔力0だよな』
『――ああ、そうじゃよ』
巨大な壁の瓦礫が宙に舞い上がっていた。赤い双眸が砂煙の向こう側で怒りに燃えていた。
『じゃあ、あれどうすんの』
【共有】スキル。
それは指定されたプレイヤー達の思考、魔力、体力、スキルまでも共有するスキルである。つまりは変態スキルである。
長い詠唱時間、プレイヤー同士の相性によるムラ、少ないメリットなどが特徴。
「……うるさい説明文だな」
スキルは全員で共有されるが、魔力、体力などの数値は大体平均値で統一される。
周があり得ない体力、魔力を持って、アトラ、アイゼン両名と対峙していた【無神】の【絶対領域】を突き破り、そのままコロシアムの壁まで殴り飛ばしたのも、不思議ではないということである。
「お主、おいしいところだけもっていきおって……」
【無神】が激突して崩れたコロシアムの壁が、砂煙を出した。三人は思考も共有している。それぞれ三方向に分かれて着地し、まだ健在であろう【無神】を待ち構える。
『これが共有か。アトラ、周のスキルも使えるのは良いが、なんだか体が重くなった気がする』
『体力、魔力は平均値じゃから周にレベルを落とされたんじゃろうて』
『殺すぞ』
『思考、スキルの共有は便利だな。思考共有はテレパシーよりもレスポンスが良いようだ』
『一々スキル発動がいらないようじゃからな。常時発動、思考が共有者全員にだだ漏れ状態か。変態すぎるぞ周』
『殺すぞ』
3秒ほどの思考のやり取り。その間で砂煙を弾き飛ばし、【無神】は微妙に表情を変えた。
『どうやら奴はスキルを見てコピーするようだが、流石に【共有】は使わんようだな』
『まあこんな役に立たないスキル、使ってものう……』
『殺すぞ』
【無神】が軽く腰を落とした。【神速】の発動体勢。
『――分身系のスキルはアトラがちょっと持っているようだな。有効に使わせてもらおう』
『うむ、この状態なら瞬殺されることもあるまいて。――どれだけヤツを欺けるかがキモじゃな』
『――実行役はどうする。おれは無理だぞ』
『アイゼンにやってもらうよ。わしは動かんのは好かん』
『了解した。皆の健闘を祈る』
リミット:10分35秒
それは指定されたプレイヤー達の思考、魔力、体力、スキルまでも共有するスキルである。つまりは変態スキルである。
長い詠唱時間、プレイヤー同士の相性によるムラ、少ないメリットなどが特徴。
「……うるさい説明文だな」
スキルは全員で共有されるが、魔力、体力などの数値は大体平均値で統一される。
周があり得ない体力、魔力を持って、アトラ、アイゼン両名と対峙していた【無神】の【絶対領域】を突き破り、そのままコロシアムの壁まで殴り飛ばしたのも、不思議ではないということである。
「お主、おいしいところだけもっていきおって……」
【無神】が激突して崩れたコロシアムの壁が、砂煙を出した。三人は思考も共有している。それぞれ三方向に分かれて着地し、まだ健在であろう【無神】を待ち構える。
『これが共有か。アトラ、周のスキルも使えるのは良いが、なんだか体が重くなった気がする』
『体力、魔力は平均値じゃから周にレベルを落とされたんじゃろうて』
『殺すぞ』
『思考、スキルの共有は便利だな。思考共有はテレパシーよりもレスポンスが良いようだ』
『一々スキル発動がいらないようじゃからな。常時発動、思考が共有者全員にだだ漏れ状態か。変態すぎるぞ周』
『殺すぞ』
3秒ほどの思考のやり取り。その間で砂煙を弾き飛ばし、【無神】は微妙に表情を変えた。
『どうやら奴はスキルを見てコピーするようだが、流石に【共有】は使わんようだな』
『まあこんな役に立たないスキル、使ってものう……』
『殺すぞ』
【無神】が軽く腰を落とした。【神速】の発動体勢。
『――分身系のスキルはアトラがちょっと持っているようだな。有効に使わせてもらおう』
『うむ、この状態なら瞬殺されることもあるまいて。――どれだけヤツを欺けるかがキモじゃな』
『――実行役はどうする。おれは無理だぞ』
『アイゼンにやってもらうよ。わしは動かんのは好かん』
『了解した。皆の健闘を祈る』
リミット:10分35秒
「アイゼン! まだか、周!」
あぐらをかいて座っていた周が、眼を瞑り術を展開しようとしていたことを皆さんご存知だったろうか。
「急くな。今、完了した」
周を中心として、コロシアム全体をカバーするほどの巨大な円と文字が展開された。カイドでよく見かけるような、魔法陣ではない。それはもっと堅苦しい形式ばったのものであると、アトラは感じた。
「展開、完了。指定、三名、アトラ、アイゼン、周、完了。スキル発動準備――完了。スキル発動。いけるが、アトラ?」
「よしやれすぐやれいますぐやれ」
「見るがいい、そして慄くがいい! スキル発動【共有】!」
周が全ての詠唱を終えた瞬間、巨大な円、文字から見えないエネルギーが放出され、周の長い赤髪を逆立てさせた。アトラとアイゼンもそのエネルギーを感じ、今までにない感覚を味わう。
「少し気持ち良いのが、また嫌じゃな……」
アトラがぶつくさ言いながらも、空中で衝突するアイゼンと【無神】の元へと跳び向かった。もちろん凄まじいエネルギーの衝突は今も続いていた。
「さて、わしも行くぞ……! 【絶対領域】!」
白と赤の領域に、緑が飛び込むカタチになりましたとさ。
あぐらをかいて座っていた周が、眼を瞑り術を展開しようとしていたことを皆さんご存知だったろうか。
「急くな。今、完了した」
周を中心として、コロシアム全体をカバーするほどの巨大な円と文字が展開された。カイドでよく見かけるような、魔法陣ではない。それはもっと堅苦しい形式ばったのものであると、アトラは感じた。
「展開、完了。指定、三名、アトラ、アイゼン、周、完了。スキル発動準備――完了。スキル発動。いけるが、アトラ?」
「よしやれすぐやれいますぐやれ」
「見るがいい、そして慄くがいい! スキル発動【共有】!」
周が全ての詠唱を終えた瞬間、巨大な円、文字から見えないエネルギーが放出され、周の長い赤髪を逆立てさせた。アトラとアイゼンもそのエネルギーを感じ、今までにない感覚を味わう。
「少し気持ち良いのが、また嫌じゃな……」
アトラがぶつくさ言いながらも、空中で衝突するアイゼンと【無神】の元へと跳び向かった。もちろん凄まじいエネルギーの衝突は今も続いていた。
「さて、わしも行くぞ……! 【絶対領域】!」
白と赤の領域に、緑が飛び込むカタチになりましたとさ。
「やったか!?」
アイゼンのこの一撃は、アイゼンの持ちうる最大の破壊力を持った攻撃であった。だからアイゼンがこれで終わったと願いたくなる気持ちはよくわかる。
だが事態はさらに最悪へと移行する。
巻き起こった砂煙が、一瞬で拡散した。同時に【無神】を捕らえていた筈の【神鞭エキドーニア】が数本に千切れて空を舞っていた。
突然明瞭に見えたクレーターの中央に、赤いオーラを纏う最悪の存在が立っていた。
「……奴も【絶対領域】を!?」
気付けばまだ落下中だったアイゼンの目の前に、赤い双眸。
『……』
――無言でその化物は、片手でアイゼンの首を掴もうとした。
アイゼンは全力で【絶対領域】を展開! 両手でその赤い腕を防ごうとした。すさまじいエネルギーの衝突が始まった。白い領域と赤い領域の攻防が、始まった。
「ぐおおおおお!」
「……」
アイゼンのこの一撃は、アイゼンの持ちうる最大の破壊力を持った攻撃であった。だからアイゼンがこれで終わったと願いたくなる気持ちはよくわかる。
だが事態はさらに最悪へと移行する。
巻き起こった砂煙が、一瞬で拡散した。同時に【無神】を捕らえていた筈の【神鞭エキドーニア】が数本に千切れて空を舞っていた。
突然明瞭に見えたクレーターの中央に、赤いオーラを纏う最悪の存在が立っていた。
「……奴も【絶対領域】を!?」
気付けばまだ落下中だったアイゼンの目の前に、赤い双眸。
『……』
――無言でその化物は、片手でアイゼンの首を掴もうとした。
アイゼンは全力で【絶対領域】を展開! 両手でその赤い腕を防ごうとした。すさまじいエネルギーの衝突が始まった。白い領域と赤い領域の攻防が、始まった。
「ぐおおおおお!」
「……」
(ちなみにコロセウム観客席とコロセウム闘技場は空間の隔たりがありますので、観客の皆様はご安心ください)
緊張に水を差すアナウンスをするフルファイア。
もちろんその間に【無神】は消えていた。残像も残さず。
「【神速】か!」
アトラが叫んだ。だが、アイゼンが上空5m程まで、吹っ飛ばされていた。少々のタイムログの後、アイゼンを守っていた何層かのバリアがガラスのように砕け散って綺麗に輝いた。
アトラの内心。
(助かった!)
正直言って今の一撃はアトラでは耐えられなかった。アイゼンだからこそ、耐えられた凶悪の一撃であった。耐えたといってもそのアイゼンさえ一瞬何が起こったのか把握できていないのだが。
それはそれとて、戦闘が始まった瞬間からアトラは銀色に輝く【神鞭エキドーニア】を闘技場全体に満遍なく振りかざしていた(もちろん周やアイゼンを避けて)。
アイゼンが吹っ飛んだと同時に、アトラはそれを捕らえていた。ちょうど飛んでいるアイゼンの真下辺り。
「補足!」
エキドーニアはまるで意志があるかのように【無神】をぐるぐる巻きにし、そして鉄より硬くなった。【無神】の【剛力】さえも一瞬だが抑えた。
「アンドフィーィィィッシュ!」
アトラの【神鞭エキドーニア】による【無神】一本釣りである。思いっきり引かれた【無神】は、その力に為すすべもなく引っ張られ、コロシアムの壁すれすれのところを一回転させられてから、上空へと放たれた。
そこにはバリアを何層か割られながらも、笑うアイゼンがいた。
「試してみるか……【絶対領域】!」
アイゼンは空中で攻撃体勢をとり、猛スピードで迫ってくる【無神】のボディー目掛けて、眩い白光を放つ右腕を突き出し、完膚なきまでに、叩きつけ、隕石が落下したかのような轟音と、振動を、コロセウムに残した。
緊張に水を差すアナウンスをするフルファイア。
もちろんその間に【無神】は消えていた。残像も残さず。
「【神速】か!」
アトラが叫んだ。だが、アイゼンが上空5m程まで、吹っ飛ばされていた。少々のタイムログの後、アイゼンを守っていた何層かのバリアがガラスのように砕け散って綺麗に輝いた。
アトラの内心。
(助かった!)
正直言って今の一撃はアトラでは耐えられなかった。アイゼンだからこそ、耐えられた凶悪の一撃であった。耐えたといってもそのアイゼンさえ一瞬何が起こったのか把握できていないのだが。
それはそれとて、戦闘が始まった瞬間からアトラは銀色に輝く【神鞭エキドーニア】を闘技場全体に満遍なく振りかざしていた(もちろん周やアイゼンを避けて)。
アイゼンが吹っ飛んだと同時に、アトラはそれを捕らえていた。ちょうど飛んでいるアイゼンの真下辺り。
「補足!」
エキドーニアはまるで意志があるかのように【無神】をぐるぐる巻きにし、そして鉄より硬くなった。【無神】の【剛力】さえも一瞬だが抑えた。
「アンドフィーィィィッシュ!」
アトラの【神鞭エキドーニア】による【無神】一本釣りである。思いっきり引かれた【無神】は、その力に為すすべもなく引っ張られ、コロシアムの壁すれすれのところを一回転させられてから、上空へと放たれた。
そこにはバリアを何層か割られながらも、笑うアイゼンがいた。
「試してみるか……【絶対領域】!」
アイゼンは空中で攻撃体勢をとり、猛スピードで迫ってくる【無神】のボディー目掛けて、眩い白光を放つ右腕を突き出し、完膚なきまでに、叩きつけ、隕石が落下したかのような轟音と、振動を、コロセウムに残した。
「いきなり最狂すぎた戦いです! 最狂のNPC対三強です! なんと一戦目にして片方がチームという異例な戦い! コロセウムの観客の命! そしてこの後のネタのやり辛さなどが心配なところです! それでは私は早々に待避します!」
フルファイアは一瞬でワープし、コロセウム中央から消えた。
「……あー……。なんじゃこれは」
映える緑のTシャツ。【王】とは書かれていなかった。見た目にはわからないが、オーラに若さが満ち溢れている。
アトラ王が、銀色に輝く鞭、【神鞭エキドーニア】を持って佇んでいた。
「……【未来視】も使えないようだ。何がどうなっているのかわからん。その顔を見ると、お前達にもわからないようだな」
赤い灼熱の長髪、ギラギラと現代よりさらに鋭い眼を持った若き日のやくtじゃなくて周が、そのアトラの横に。
「ふむ、私もわけがわからないが……。何故かぼんやりと頭に浮かぶものがある」
その二人の後ろに、恐ろしいほどの覇気を放つシムシ国の首相、アイゼン。
現在の三国を代表する三名の、現役の頃の姿である。
「『敵を倒せ』か……。気に入らんのう」
アトラが神鞭を肩にかけ、ため息をついた。
「おれもだアトラ。命令されるのがまず気に入らない。だが……」
周はコロッセウム全体を見渡し、そして正面にいつのまにか現れた大きな白い箱を見た。
「あの箱の中身は、危険だな」
アイゼンが巨大なツーハンデッドソードを抜き放つ。
「同意じゃ。久しぶりというかほとんど初めてか?」
アトラは神鞭エキドーニアを一度振り、地面に綺麗な半円を描いた。
「三人で協力してNPC戦か。気に入らないが仕方あるまい。おれの本能がそう告げている」
周は何故かゆったりとその場に座った。
「一分かかるな。まあそれでも早い方か。おれたち三人は意外と相性がいいようで困るぞ、アトラ、アイゼン」
「はん、それはわしの台詞じゃ、周。無駄話が長い、行くぞいアイゼン」
「さて、あの時以来か、アトラ。今回は周もいるが、どうかな、強いぞ……」
三人の脳内には既に電波的な力で【無神】の概要は説明されている。
白い箱の角が綺麗に割れて、まるでサイコロを切り開いたように綺麗に中身が晒される。
赤いワンピースを着た完璧なヒトノカタチがそこにいた。
フルファイアは一瞬でワープし、コロセウム中央から消えた。
「……あー……。なんじゃこれは」
映える緑のTシャツ。【王】とは書かれていなかった。見た目にはわからないが、オーラに若さが満ち溢れている。
アトラ王が、銀色に輝く鞭、【神鞭エキドーニア】を持って佇んでいた。
「……【未来視】も使えないようだ。何がどうなっているのかわからん。その顔を見ると、お前達にもわからないようだな」
赤い灼熱の長髪、ギラギラと現代よりさらに鋭い眼を持った若き日のやくtじゃなくて周が、そのアトラの横に。
「ふむ、私もわけがわからないが……。何故かぼんやりと頭に浮かぶものがある」
その二人の後ろに、恐ろしいほどの覇気を放つシムシ国の首相、アイゼン。
現在の三国を代表する三名の、現役の頃の姿である。
「『敵を倒せ』か……。気に入らんのう」
アトラが神鞭を肩にかけ、ため息をついた。
「おれもだアトラ。命令されるのがまず気に入らない。だが……」
周はコロッセウム全体を見渡し、そして正面にいつのまにか現れた大きな白い箱を見た。
「あの箱の中身は、危険だな」
アイゼンが巨大なツーハンデッドソードを抜き放つ。
「同意じゃ。久しぶりというかほとんど初めてか?」
アトラは神鞭エキドーニアを一度振り、地面に綺麗な半円を描いた。
「三人で協力してNPC戦か。気に入らないが仕方あるまい。おれの本能がそう告げている」
周は何故かゆったりとその場に座った。
「一分かかるな。まあそれでも早い方か。おれたち三人は意外と相性がいいようで困るぞ、アトラ、アイゼン」
「はん、それはわしの台詞じゃ、周。無駄話が長い、行くぞいアイゼン」
「さて、あの時以来か、アトラ。今回は周もいるが、どうかな、強いぞ……」
三人の脳内には既に電波的な力で【無神】の概要は説明されている。
白い箱の角が綺麗に割れて、まるでサイコロを切り開いたように綺麗に中身が晒される。
赤いワンピースを着た完璧なヒトノカタチがそこにいた。
私のLIVEって単純な戦闘が少なくないですか?
2007年9月23日 LIVE番外編 ある青空の澄んだ日のことである。
以前阿呆みたいな戦いが行われたシムシ首都アレクサンドルコロシアムにまた、阿呆みたいな戦いが開かれようとしていた。
照明の電源がONされ、高電圧が数十とある巨大なスポットライトに流れる音を観客は聞いた。コロシアム中央の、白スーツに赤い蝶ネクタイを締めた男が、マイクを必要以上に高々と上げて、こう言った。
「レディースエーンドジェントルメーン。ここ、アレックサンドルコロッセウムにお越しの暇人の皆様! ようこそ! 私は今回の『第一回LIVE天下一武道会』の司会を務めさせていただきます! 『フルファイア』です!
昔はPKを少々嗜んでおりましたがご安心下さい! こんな面白そうなものの司会ができるということなので現在はPKをしないただのフルファイアとなっておりますので!
さて、早速今回の大会のルールを説明します。こらっ、そこっ、『フルファイアキャラ違うくね?』とか言わない。このごろ方向性を考えている最中なんですから!
ごほん! さて、気を取り直して続けます!
『今大会は作者の気まぐれと暇な時間の積によって求められる』 はい! これを説明いたしますと、『気まぐれ』×『暇な時間』=今大会、ということになります。今大会はLIVEキャラ総出演となる予定ですので、当然今回だけでは終わりません。連載の途中に、番外編として突然現れることもあるかもしれません。そこ、連載進んでないとか言わない!
さて、ルールの説明は疲れました! 後付けとかそんな事情もあるのでルール説明を終えます! ちなみに選手達の対戦の組み合わせも、作者の気まぐれによって決まります! で、そんなグダグダな戦いの記念すべき第一戦目は!」
照明が司会から離れ、それぞれコロシアムの端と端を対角線上に照らした。コロシアムの門の前に、二人のプレイヤーが立っていた。
LIVE天下一武道会第一戦。
無神【第三形態】VS現役の頃のアイゼン・周・アトラ
以前阿呆みたいな戦いが行われたシムシ首都アレクサンドルコロシアムにまた、阿呆みたいな戦いが開かれようとしていた。
照明の電源がONされ、高電圧が数十とある巨大なスポットライトに流れる音を観客は聞いた。コロシアム中央の、白スーツに赤い蝶ネクタイを締めた男が、マイクを必要以上に高々と上げて、こう言った。
「レディースエーンドジェントルメーン。ここ、アレックサンドルコロッセウムにお越しの暇人の皆様! ようこそ! 私は今回の『第一回LIVE天下一武道会』の司会を務めさせていただきます! 『フルファイア』です!
昔はPKを少々嗜んでおりましたがご安心下さい! こんな面白そうなものの司会ができるということなので現在はPKをしないただのフルファイアとなっておりますので!
さて、早速今回の大会のルールを説明します。こらっ、そこっ、『フルファイアキャラ違うくね?』とか言わない。このごろ方向性を考えている最中なんですから!
ごほん! さて、気を取り直して続けます!
『今大会は作者の気まぐれと暇な時間の積によって求められる』 はい! これを説明いたしますと、『気まぐれ』×『暇な時間』=今大会、ということになります。今大会はLIVEキャラ総出演となる予定ですので、当然今回だけでは終わりません。連載の途中に、番外編として突然現れることもあるかもしれません。そこ、連載進んでないとか言わない!
さて、ルールの説明は疲れました! 後付けとかそんな事情もあるのでルール説明を終えます! ちなみに選手達の対戦の組み合わせも、作者の気まぐれによって決まります! で、そんなグダグダな戦いの記念すべき第一戦目は!」
照明が司会から離れ、それぞれコロシアムの端と端を対角線上に照らした。コロシアムの門の前に、二人のプレイヤーが立っていた。
LIVE天下一武道会第一戦。
無神【第三形態】VS現役の頃のアイゼン・周・アトラ
Live小話(5) めちゃくちゃ
2007年9月3日 LIVE番外編 思わず閉じた眼を開いて、アレックスは信じられない光景を見ることができた。とりあえず生きてた。流石元主人公である。
炎の男の前に、上半身裸の男が立っていた。その男は、炎の男が放った炎を片手で軽く防いでいた。同じ程度の炎をその片腕から噴出させることによって。
もう片方の腕で余裕のグッジョブマークを作り、そのジーパンをはいただけの上半身裸の男は、
「久しぶり、アレックス君」
と言ったので
「誰だァーー、アンタハァァアアー!」
アレックスはうろたえた。
アレックスはかつてないほど混乱した。上半身裸は衆とか行けば見慣れるが、こいつは色白で何処となく色気を感じさせるいうなれば非常に気色悪い上裸であった。こんな変態かつ高レベル、上半身裸な知り合いは断じて生まれてこの方記憶の底を探ってもいない、いないはずだッ、と。
アレックスが混乱しているその間に、相殺された炎は大気に溶けて消えていった。そもそも上半身の男は何処から現れたのか、答えは天井が丸い形に溶けていたことから推測された。炎で天井を溶かして上の階層から降りてきたのだ。上裸男はもう何もかもめちゃくちゃだった。なんだかこの小説自体むちゃくちゃだ。
「おや、忘れたんですか。凄いですね、貴方の記憶力は。チェスで対戦する際、記憶力は重要な要素となるのですよ。つまりそれは闘いにおいても同じということ」
上裸が何だか、聞き覚えのある言い方で語りだした。顔はまだよく見えない。炎の男と上裸男が対峙する。
「私の記憶によると、私は貴方を二回ほど殺しかけましたよ。神速のイレブン。もしくは、今や『救世のアレックス』、ですか。ふふ、貴方はあまりその名を好んでいないようですが世界がそう呼ぶのなら貴方は最早その名を得たも同然であり、いわゆる共通ルール。チェスはルールのゲーム」
ああ、とアレックスは思い出した。長い口上。何処となく優雅な仕草。そして何かとチェスで例えたがる。なんだか言うことの整合性がなくなったような気もするが。
上半身裸の男、ネーム確認:フルファイア。
「さて、そんなルールを破壊したがるそんな貴方は誰ですか。ネーム確認:シュヴァ。そしてその格好は様々な人々に誤解を散々生みますよね。別にそれはそれで面白くて構わないのですがそれを潰すのも私としては面白くて構わないのです!」
確認するが今まで喋っていたのは全部上半身裸の男、フルファイアだった。アレックスが今まさに確認した偽炎の男、シュヴァはフルファイアが現れてから一言も言葉を発していなかった。
「黙するというのはいけませんね! それは人であるということを放棄しているのも同然! チェスも当然黙してやるべきゲームですが、その裏では実は対戦者同士、様々な会話が繰り広げられていることを人類は知らなければなりません!」
こんな人だったっけ、とアレックスは思わざるをえない。
炎の男の前に、上半身裸の男が立っていた。その男は、炎の男が放った炎を片手で軽く防いでいた。同じ程度の炎をその片腕から噴出させることによって。
もう片方の腕で余裕のグッジョブマークを作り、そのジーパンをはいただけの上半身裸の男は、
「久しぶり、アレックス君」
と言ったので
「誰だァーー、アンタハァァアアー!」
アレックスはうろたえた。
アレックスはかつてないほど混乱した。上半身裸は衆とか行けば見慣れるが、こいつは色白で何処となく色気を感じさせるいうなれば非常に気色悪い上裸であった。こんな変態かつ高レベル、上半身裸な知り合いは断じて生まれてこの方記憶の底を探ってもいない、いないはずだッ、と。
アレックスが混乱しているその間に、相殺された炎は大気に溶けて消えていった。そもそも上半身の男は何処から現れたのか、答えは天井が丸い形に溶けていたことから推測された。炎で天井を溶かして上の階層から降りてきたのだ。上裸男はもう何もかもめちゃくちゃだった。なんだかこの小説自体むちゃくちゃだ。
「おや、忘れたんですか。凄いですね、貴方の記憶力は。チェスで対戦する際、記憶力は重要な要素となるのですよ。つまりそれは闘いにおいても同じということ」
上裸が何だか、聞き覚えのある言い方で語りだした。顔はまだよく見えない。炎の男と上裸男が対峙する。
「私の記憶によると、私は貴方を二回ほど殺しかけましたよ。神速のイレブン。もしくは、今や『救世のアレックス』、ですか。ふふ、貴方はあまりその名を好んでいないようですが世界がそう呼ぶのなら貴方は最早その名を得たも同然であり、いわゆる共通ルール。チェスはルールのゲーム」
ああ、とアレックスは思い出した。長い口上。何処となく優雅な仕草。そして何かとチェスで例えたがる。なんだか言うことの整合性がなくなったような気もするが。
上半身裸の男、ネーム確認:フルファイア。
「さて、そんなルールを破壊したがるそんな貴方は誰ですか。ネーム確認:シュヴァ。そしてその格好は様々な人々に誤解を散々生みますよね。別にそれはそれで面白くて構わないのですがそれを潰すのも私としては面白くて構わないのです!」
確認するが今まで喋っていたのは全部上半身裸の男、フルファイアだった。アレックスが今まさに確認した偽炎の男、シュヴァはフルファイアが現れてから一言も言葉を発していなかった。
「黙するというのはいけませんね! それは人であるということを放棄しているのも同然! チェスも当然黙してやるべきゲームですが、その裏では実は対戦者同士、様々な会話が繰り広げられていることを人類は知らなければなりません!」
こんな人だったっけ、とアレックスは思わざるをえない。
「……フル……ファイア!?」
アレックスが驚くのも無理はなかった。
赤い短髪、赤いサングラス、炎の男が、そこにいた。
「……」
アレックスを確認した炎の男は、すぐさま右手から炎の魔法をノータイムで放った。それをアレックスは【危険察知】で軽々と避ける。が、熱いものは熱かった。
(何故こんなところにッ!?)
一度倒したとはいえ二回程殺されかけたことを決して忘れていないアレックスは、とにかく焦った。それこそ、ネーム確認もできないぐらいに。
「……死ね」
狭い船内である。いくつか炎を避けたが、その程度の出力ではアレックスは倒せないと悟ったらしい。少し長い詠唱を炎の男は始めた。
隙。
だがその隙にも、アレックスは『恐れ』を感じてしまった。
(罠?)
脳内を過ぎってしまった。
隙を見せたことにより、できた隙に、アレックスは目の前の通路を埋め尽くす炎を見た。
もちろんアレックスは、魔法など使えない。後退しかない。
が、気付くと後ろの通路の扉は、鍵がどろどろに溶かされていて ――それがあの炎の男、最初の炎の魔法で溶かされた結果、計算尽くだとアレックスは知って、
(しまっ――)
------------------------
滲み出た黒い霧が、だんだんと広がっていく。
「……ミスト能力って珍しいな」
「ええ、ブラッドさん。僕こういうの苦手です。逃げていいですか」
「いいわけないだろ馬鹿やろう。青さんはミスト系能力が苦手なんだから、俺達がサポートしないと」
「ブラッドさん、そんなこと言うと」
「苦手――、否」
「ほら、青さんが意地になっちゃった」
持っていたハンドガンで弾を数発ぶっ放し、青は黒い霧が滲み出ていた箱を破壊した。さらにミストが多量に発生した。
「しまった。ミスト系能力じゃなくて、アイテムか」
ブラッドが間違いに気付いた。時既に遅し。広大な倉庫は真っ黒な霧で満たされた。
アレックスが驚くのも無理はなかった。
赤い短髪、赤いサングラス、炎の男が、そこにいた。
「……」
アレックスを確認した炎の男は、すぐさま右手から炎の魔法をノータイムで放った。それをアレックスは【危険察知】で軽々と避ける。が、熱いものは熱かった。
(何故こんなところにッ!?)
一度倒したとはいえ二回程殺されかけたことを決して忘れていないアレックスは、とにかく焦った。それこそ、ネーム確認もできないぐらいに。
「……死ね」
狭い船内である。いくつか炎を避けたが、その程度の出力ではアレックスは倒せないと悟ったらしい。少し長い詠唱を炎の男は始めた。
隙。
だがその隙にも、アレックスは『恐れ』を感じてしまった。
(罠?)
脳内を過ぎってしまった。
隙を見せたことにより、できた隙に、アレックスは目の前の通路を埋め尽くす炎を見た。
もちろんアレックスは、魔法など使えない。後退しかない。
が、気付くと後ろの通路の扉は、鍵がどろどろに溶かされていて ――それがあの炎の男、最初の炎の魔法で溶かされた結果、計算尽くだとアレックスは知って、
(しまっ――)
------------------------
滲み出た黒い霧が、だんだんと広がっていく。
「……ミスト能力って珍しいな」
「ええ、ブラッドさん。僕こういうの苦手です。逃げていいですか」
「いいわけないだろ馬鹿やろう。青さんはミスト系能力が苦手なんだから、俺達がサポートしないと」
「ブラッドさん、そんなこと言うと」
「苦手――、否」
「ほら、青さんが意地になっちゃった」
持っていたハンドガンで弾を数発ぶっ放し、青は黒い霧が滲み出ていた箱を破壊した。さらにミストが多量に発生した。
「しまった。ミスト系能力じゃなくて、アイテムか」
ブラッドが間違いに気付いた。時既に遅し。広大な倉庫は真っ黒な霧で満たされた。
Live小話 リッカとバイン(3)
2007年8月7日 LIVE番外編「青さん!」
「応。発見、敵、三!」
エンジンルームはホバークラフト内最下層にあった。狭い通路の中はもう黒煙で充満しそうなひどい状態であったが、青の眼は確かにエンジンルームから散り散りに逃げた人影を三つ、視界が悪い中でも捉えていた。
「中々敵も素早いですね、正体がわからない以上攻撃するのもどうかと思いますが……」
ローランの言葉が聞こえているのかいないのか、青はハンドガンに弾をジャキンと気持ちよく込めた。ヤル気マンマンである。
「ローラン、青さんの辞書に『穏便』という文字はないぞ」
ブラッドは剣をスラリと抜き放つ。敵は三。通常ならば三人それぞれ散って追うべきなのだろうが……。
「……一人、放置」
青は少し考え、そして何かを感じたようだ。ある方向に向かった一人は放置し、ある程度同じ方向に逃げた二人の方を追うと青は決めた。青が決めたなら、三人組は二人を追うことに決まったも同然である。
エンジンルームの爆発はやっと集まってきた数少ない技能員達に任せられることとなった。エンジンルームは通常無人なので死者は出ていないだろう。
(さて、青さんが一人を放置したのは、中立なあの人たちに任せるつもりなのかな。それとも……)
ローランは青が一人を放置する理由を、考えるだけに留めた。
-----------------------
アレックスの【神速】はワープに近い。が、障害物を通り抜けたりすることはできない。
「だから、例えばこういう狭いホバークラフトの船内とか、苦手なんですよねえ」
言いながらも、0秒で船内を駆け巡るアレックス。よく地理を把握していないアレックスは、とりあえず階段を探し、降りまくっていた。
正直、アレックスは何か事故が起こった程度にしか考えていなかった。自分が行っても、役に立てることはないだろう。そんな甘い考えなのは、自分がトラブルに巻き込まれやすい性格、立場(主人公)であるということに、無自覚だからだ。そのへんをもう少し、自覚していれば。
赤い髪の男との遭遇にも、もう少し冷静に対処できたはずなのだが。
--------------------------
場面戻って青三人組は、結果から言えば二人に追いついていた。そこは船倉だった。ホバークラフト内で最も広い空間。だったが、今は支援品の食料や雑貨が箱に詰められ、積みあがっている所為で、三次元迷路のような状態になっている。そこに怪しい二人組みが入っていくのを、青は確かに感じたのだという(【勘】スキルA)。
「青さんの勘は相当、当たりますからねぇ」
小さな数個の電灯だけで照らされた船倉内を、警戒しながら三人は進む。いつも人はいないが、今は船倉内には青達三人と侵入者二人、五人のプレイヤーがいるはずだった。
「居。犯人」
「犯人……やっぱりエンジンルーム爆発はこいつらの仕業なんですかね」
ローランが剣(槍は船内が狭いので置いてきた)の先をある箱に向けた。その箱の間から、黒い霧が滲み出ていた。
「来!」
「応。発見、敵、三!」
エンジンルームはホバークラフト内最下層にあった。狭い通路の中はもう黒煙で充満しそうなひどい状態であったが、青の眼は確かにエンジンルームから散り散りに逃げた人影を三つ、視界が悪い中でも捉えていた。
「中々敵も素早いですね、正体がわからない以上攻撃するのもどうかと思いますが……」
ローランの言葉が聞こえているのかいないのか、青はハンドガンに弾をジャキンと気持ちよく込めた。ヤル気マンマンである。
「ローラン、青さんの辞書に『穏便』という文字はないぞ」
ブラッドは剣をスラリと抜き放つ。敵は三。通常ならば三人それぞれ散って追うべきなのだろうが……。
「……一人、放置」
青は少し考え、そして何かを感じたようだ。ある方向に向かった一人は放置し、ある程度同じ方向に逃げた二人の方を追うと青は決めた。青が決めたなら、三人組は二人を追うことに決まったも同然である。
エンジンルームの爆発はやっと集まってきた数少ない技能員達に任せられることとなった。エンジンルームは通常無人なので死者は出ていないだろう。
(さて、青さんが一人を放置したのは、中立なあの人たちに任せるつもりなのかな。それとも……)
ローランは青が一人を放置する理由を、考えるだけに留めた。
-----------------------
アレックスの【神速】はワープに近い。が、障害物を通り抜けたりすることはできない。
「だから、例えばこういう狭いホバークラフトの船内とか、苦手なんですよねえ」
言いながらも、0秒で船内を駆け巡るアレックス。よく地理を把握していないアレックスは、とりあえず階段を探し、降りまくっていた。
正直、アレックスは何か事故が起こった程度にしか考えていなかった。自分が行っても、役に立てることはないだろう。そんな甘い考えなのは、自分がトラブルに巻き込まれやすい性格、立場(主人公)であるということに、無自覚だからだ。そのへんをもう少し、自覚していれば。
赤い髪の男との遭遇にも、もう少し冷静に対処できたはずなのだが。
--------------------------
場面戻って青三人組は、結果から言えば二人に追いついていた。そこは船倉だった。ホバークラフト内で最も広い空間。だったが、今は支援品の食料や雑貨が箱に詰められ、積みあがっている所為で、三次元迷路のような状態になっている。そこに怪しい二人組みが入っていくのを、青は確かに感じたのだという(【勘】スキルA)。
「青さんの勘は相当、当たりますからねぇ」
小さな数個の電灯だけで照らされた船倉内を、警戒しながら三人は進む。いつも人はいないが、今は船倉内には青達三人と侵入者二人、五人のプレイヤーがいるはずだった。
「居。犯人」
「犯人……やっぱりエンジンルーム爆発はこいつらの仕業なんですかね」
ローランが剣(槍は船内が狭いので置いてきた)の先をある箱に向けた。その箱の間から、黒い霧が滲み出ていた。
「来!」
Live小話 リッカとバイン(2)
2007年7月31日 LIVE番外編 もちろん、バイン、アレックス、ネットもその爆発の衝撃で踊っていた。
「うわっとっと!」
「なんだあ! テロかぁ?」
ネットは鉄柵を掴み、ぐるりと周りを見渡した。ホバークラフト後方から黒煙が上がっていた。
「セオリー通りエンジンルームが爆発したっぽいな。おい、11」
「アレックスです」
「どっちでもいいだろうが、見てこい」
「何で私が――」
「うっ、そんなこと言うんだなお前は。嗚呼、俺が【神速】を持っていればなあ……!」
「あー! あー! わかりましたよ!」
バインを置いて一騒ぎした二人組みのうちの一人は、少し体を低くして、眼を鋭くした。
「バインさんは、そこのバカさんと一緒にいてくださいね。まあ少しは頼りになりますから」
「後半はいいが、前半のバカを取り消せ」
「え? ――あ、はい」
そしてアレックスは、薄い笑みを残して一瞬で消えた。
【神速】である。
「うわっとっと!」
「なんだあ! テロかぁ?」
ネットは鉄柵を掴み、ぐるりと周りを見渡した。ホバークラフト後方から黒煙が上がっていた。
「セオリー通りエンジンルームが爆発したっぽいな。おい、11」
「アレックスです」
「どっちでもいいだろうが、見てこい」
「何で私が――」
「うっ、そんなこと言うんだなお前は。嗚呼、俺が【神速】を持っていればなあ……!」
「あー! あー! わかりましたよ!」
バインを置いて一騒ぎした二人組みのうちの一人は、少し体を低くして、眼を鋭くした。
「バインさんは、そこのバカさんと一緒にいてくださいね。まあ少しは頼りになりますから」
「後半はいいが、前半のバカを取り消せ」
「え? ――あ、はい」
そしてアレックスは、薄い笑みを残して一瞬で消えた。
【神速】である。
Live小話 リッカとバイン
2007年7月30日 LIVE番外編「今回の『無神』事件で死亡したプレイヤーは約一千人以上になるらしいわ。間接的に死亡したプレイヤーも合わせると相当な数になるらしいわよ」
初心者の街、ビギナのあるギルドで働く女性剣士、『リッカ』は新人ギルド員である『バイン』を連れて、報告書を読みながらある場所へと向かっていた。リッカは赤髪ショートの軽剣士、バインはこれまた赤髪ショート、ローブを着ているので魔法使いといった風貌だ。ちなみに遠目ではわからない童顔、女顔をしているが『バイン』は男である。遠目から見れば二人は姉妹に見えなくもない。が、二人はもちろん上司と部下という関係、現在それ以上でもそれ以下でもなし。
「……凄まじいですね」
「ええ、中立国の被害は少なかったけれど、それでも『無神』と戦った中立国のギルド員や一般プレイヤーはほぼ全滅したわ。シムシ、衆はもっとひどい有様。それぞれの治安ギルドもかなりやられたらしいから、治安もひどいようね」
「それで、私とリッカさんが」
「そう、シムシの治安維持応援に行くの」
ちょうどリッカが無神災害報告者を読み終わり、バインが自分のこれからの仕事を深く理解し緊張したところで、ビギナの街の外に停められていた、巨大なシムシ製ホバークラフトが二人の視界に入った。
「中立国、そしてビギナの街は、どの国とも敵対しない。敵対しないためにどの国とも友好にならない。
でも、大勢のプレイヤーが困ってるなら、助けないといけないの」
リッカが少し力むバインの眼を見て言葉をかける。それに強くうなづき、バインは
「……はい、リッカさん」
と答えた。
ビギナを出て数時間後。
バインは『魔法習得初級本 〜これで君も大魔道〜』を甲板で熱心に読んでいた。上司であるリッカはシムシ兵との打ち合わせで忙しく、ある程度の風の中での読書はバインにとってちょっと新鮮だった。乗り物酔いもしないので嬉しい。(する人もいるかもしれない)
バインがそうしていると、いつのまに甲板には人が一人も居なくなっていた。空は少し夕暮れ。なるほど、夕食時なのかもしれない。
「何を読んでいるんですか?」
「わあっ!」
突然後ろから声をかけられ、バインは驚き、本を空高く放り投げてしまった。本は風に乗って、甲板の外へと落下――する前に緑色に発光する網のようなものが本をまさしく掴んだ。
「よっしゃ!」
「ナイスプレイ! 時々は良い動きするんですねネットさん!」
「てめえ、褒めてるのかそれは!」
いつのまにかもう一人、甲板の端の鉄柵の近くに、今まさに本を網で捕らえた変なプレイヤーが網を引いていた。赤い派手なスカーフ、ヒーローのような格好、名前はネットというらしい。
「いやあ、すみません、驚かせてしまいましたね」
そしてバインの後ろに立っていた男は、黒髪のナチュラルショート、威圧感のない優しいオーラ、深い黒い瞳を持った、名前確認:アレックス。
---------------------------
――そして。
爆発が起こったのは勿論、エンジンルームでだった。ゲームの世界では、そういう出来事が付き物だが、リアルを追求したゲームであるLiveとしては、これは稀なことになる。
「なっ!」
「おおっ!」
「わっ!」
当然、ある部屋でシムシの兵三人組とミーティングをしていたリッカも、その衝撃を感じることができた。
(爆発!?)
リッカの行動はすばやい。すぐさまバインとの合流を目指し、「失礼」も言い終えぬままその部屋を飛び出す。ドアは壁に一度叩きつけられ、半開きで止まった。
残された三人組は。
「……」
「……どうします……? なんだかマズそうですけど……」
「そりゃ、――青さんに聞けよ……ローラン」
「……行!」
『やっぱりね』。すぐさまエンジンルームへと向かった青を、ブラッドローランの二人は口を揃えて追った。
初心者の街、ビギナのあるギルドで働く女性剣士、『リッカ』は新人ギルド員である『バイン』を連れて、報告書を読みながらある場所へと向かっていた。リッカは赤髪ショートの軽剣士、バインはこれまた赤髪ショート、ローブを着ているので魔法使いといった風貌だ。ちなみに遠目ではわからない童顔、女顔をしているが『バイン』は男である。遠目から見れば二人は姉妹に見えなくもない。が、二人はもちろん上司と部下という関係、現在それ以上でもそれ以下でもなし。
「……凄まじいですね」
「ええ、中立国の被害は少なかったけれど、それでも『無神』と戦った中立国のギルド員や一般プレイヤーはほぼ全滅したわ。シムシ、衆はもっとひどい有様。それぞれの治安ギルドもかなりやられたらしいから、治安もひどいようね」
「それで、私とリッカさんが」
「そう、シムシの治安維持応援に行くの」
ちょうどリッカが無神災害報告者を読み終わり、バインが自分のこれからの仕事を深く理解し緊張したところで、ビギナの街の外に停められていた、巨大なシムシ製ホバークラフトが二人の視界に入った。
「中立国、そしてビギナの街は、どの国とも敵対しない。敵対しないためにどの国とも友好にならない。
でも、大勢のプレイヤーが困ってるなら、助けないといけないの」
リッカが少し力むバインの眼を見て言葉をかける。それに強くうなづき、バインは
「……はい、リッカさん」
と答えた。
ビギナを出て数時間後。
バインは『魔法習得初級本 〜これで君も大魔道〜』を甲板で熱心に読んでいた。上司であるリッカはシムシ兵との打ち合わせで忙しく、ある程度の風の中での読書はバインにとってちょっと新鮮だった。乗り物酔いもしないので嬉しい。(する人もいるかもしれない)
バインがそうしていると、いつのまに甲板には人が一人も居なくなっていた。空は少し夕暮れ。なるほど、夕食時なのかもしれない。
「何を読んでいるんですか?」
「わあっ!」
突然後ろから声をかけられ、バインは驚き、本を空高く放り投げてしまった。本は風に乗って、甲板の外へと落下――する前に緑色に発光する網のようなものが本をまさしく掴んだ。
「よっしゃ!」
「ナイスプレイ! 時々は良い動きするんですねネットさん!」
「てめえ、褒めてるのかそれは!」
いつのまにかもう一人、甲板の端の鉄柵の近くに、今まさに本を網で捕らえた変なプレイヤーが網を引いていた。赤い派手なスカーフ、ヒーローのような格好、名前はネットというらしい。
「いやあ、すみません、驚かせてしまいましたね」
そしてバインの後ろに立っていた男は、黒髪のナチュラルショート、威圧感のない優しいオーラ、深い黒い瞳を持った、名前確認:アレックス。
---------------------------
――そして。
爆発が起こったのは勿論、エンジンルームでだった。ゲームの世界では、そういう出来事が付き物だが、リアルを追求したゲームであるLiveとしては、これは稀なことになる。
「なっ!」
「おおっ!」
「わっ!」
当然、ある部屋でシムシの兵三人組とミーティングをしていたリッカも、その衝撃を感じることができた。
(爆発!?)
リッカの行動はすばやい。すぐさまバインとの合流を目指し、「失礼」も言い終えぬままその部屋を飛び出す。ドアは壁に一度叩きつけられ、半開きで止まった。
残された三人組は。
「……」
「……どうします……? なんだかマズそうですけど……」
「そりゃ、――青さんに聞けよ……ローラン」
「……行!」
『やっぱりね』。すぐさまエンジンルームへと向かった青を、ブラッドローランの二人は口を揃えて追った。
たわいもないおはなし
2007年6月26日 LIVE番外編 ポチ vs ローラン・ブラッド
絶対忘れていた人のほうが多い。
-----------------------------
何故か追われる立場になっていたポチは、アレックスと思わぬ再会を果たし、その後シムシの追っ手と遭遇していた。
ブラッド、ローランと名乗る両名と切り結んだポチは、その後狙撃による不意打ちにより、ブラッドに肩を剣で切られ、ローランに左手を槍で貫かれた。
ポチは一瞬で深く、息を吸い込んだ。
(ブラッド、おそらく剣術はマスタークラス。同じくローラン、槍は中々。補助も上手い。それにスナイパー、か。完璧、お手上げだな)
一瞬で状況を分析し、ブラッドが浅かった一撃目からそのまま振り上げの二撃目に転じるのを確認。
(イチかバチか)
もちろんアレックスが消えたのを確認していたポチは、左手に刺さった槍はとりあえず放置し、ブラッドの二撃目回避に全力を注いだ。
(これは可能)
予想通り、限界まで仰け反ったポチのアゴの下を掠めたブラッドの剣は、まるで誰かへの合図だった。
(ここで銃弾が飛んできたらジ・エンド)
になることは何故かなかった。ブラッド、ローラン両名が一瞬戸惑いを見せたことからも、それがどれだけの奇跡なのかがわかる。
(感謝)
だからといって危機が去ったわけではなかった。振り上げられた剣をそのまま振り下ろせばブラッドはポチに勝てるし、ローランは少し力を入れて槍を前へ出せばポチのわき腹を突き刺せるだろう。
(だが、その時は)
ポチの決意を知ったのか、二人は一瞬怯む。勝負の分かれ目その1。
どちらか一方を、確実に殺す。そんなメッセージをポチは確実に全身で表現していた。どちらか、それは決定されていない。些細な動きで、どちらか一方に決め、確実に一方を殺す。そのメッセージはブラッド、ローラン両名の絆の深さのおかげで、一瞬動きを躊躇わせることに成功した。
(惜しい、70点です)
コンビネーション、互いを尊重しあうことで生まれる隙もある。ブラッドはポチの覇気に怯まず剣を振り下ろしたかのように見えた。だが、実際はポチに全ての軌道を見切られた死んだ一撃だった。
上手い具合にその剣をローランの槍の尖部切断に使うのだから、ポチの戦闘技術と精神いわゆる度胸は並大抵のものではなかった。
「!」
「!」
もちろんこれにはかなり鍛えられていたブラッド、ローランも驚いた。ブラッドの剣によって切断された自分の槍の先端が飛んでいくのを認めたローランは、両目に炎を灯した。
「バ、やめとけ、このタイミングは!」
ブラッドの静止を聞かず、ローランはその特殊なスキルを発動した。
「!」
突然、ポチの全身が燃え上がった。あわててブラッドは飛びのく。が、ローランはその燃え上がったポチの直視を止めなかった。
ローランの能力は【念力発火】、しかも見ただけで対象を燃やすという超レア先天性、名づけて【炎の眼】なのである。
「両目に炎が灯るエフェクトがなかったら、危なかった」
燃え盛っていたマントを突き抜けて、ポチの鋭い拳がローランに突き刺さった。【眼】に何かエフェクトがあるのは、経験上、全般的に【魔眼】と呼ばれる視ただけで物事に何らかの影響を与える超強力先天性スキルだけだとポチは、知っていたからこの結果になった。
強力なスキルを保持していても、使いどころを誤るとこうなるという良い例である。
---------------------------
「やっぱり最初からガンガン能力使っていったらよかったんですよ、ブラッドさん!」
「馬鹿ローランが。切り札は取っておくものだろうが。それをあんなタイミングで使いやがって」
「そんな考え方古いんですよ。これからの時代使えるものは最初から最大限利用してですねー」
【炎の眼】の有効射程距離やエフェクト、タイムラグを理解したポチは、二人をふん縛ることに成功していた。なんだか大通りでドンパチをやらかしたせいか人が集まってきていたので、ポチは二人を酒場の裏に移動させていた。
(あ、危なかったー。アレックスさんありがとう)
ポチは安堵の表情をひとまず敵の前で押さえ込んだ。防ぎきれず焼けてしまったところどころがジンジンと痛みを主張している。酒場の表に戻ると、いろいろ置いてけぼりにされたザクロが立っていた。
「だ、大丈夫ですか……?」
戦闘に入り込むタイミングを逃したザクロが言いながら、ポチの治療を始めた。
「ええ、大丈夫です。生きた心地はしませんでしたが」
だが、よくもまあ、まだ生きているものだと、暖かい治療の光を受けてポチは思った。
今日の教訓:何事もタイミング
絶対忘れていた人のほうが多い。
-----------------------------
何故か追われる立場になっていたポチは、アレックスと思わぬ再会を果たし、その後シムシの追っ手と遭遇していた。
ブラッド、ローランと名乗る両名と切り結んだポチは、その後狙撃による不意打ちにより、ブラッドに肩を剣で切られ、ローランに左手を槍で貫かれた。
ポチは一瞬で深く、息を吸い込んだ。
(ブラッド、おそらく剣術はマスタークラス。同じくローラン、槍は中々。補助も上手い。それにスナイパー、か。完璧、お手上げだな)
一瞬で状況を分析し、ブラッドが浅かった一撃目からそのまま振り上げの二撃目に転じるのを確認。
(イチかバチか)
もちろんアレックスが消えたのを確認していたポチは、左手に刺さった槍はとりあえず放置し、ブラッドの二撃目回避に全力を注いだ。
(これは可能)
予想通り、限界まで仰け反ったポチのアゴの下を掠めたブラッドの剣は、まるで誰かへの合図だった。
(ここで銃弾が飛んできたらジ・エンド)
になることは何故かなかった。ブラッド、ローラン両名が一瞬戸惑いを見せたことからも、それがどれだけの奇跡なのかがわかる。
(感謝)
だからといって危機が去ったわけではなかった。振り上げられた剣をそのまま振り下ろせばブラッドはポチに勝てるし、ローランは少し力を入れて槍を前へ出せばポチのわき腹を突き刺せるだろう。
(だが、その時は)
ポチの決意を知ったのか、二人は一瞬怯む。勝負の分かれ目その1。
どちらか一方を、確実に殺す。そんなメッセージをポチは確実に全身で表現していた。どちらか、それは決定されていない。些細な動きで、どちらか一方に決め、確実に一方を殺す。そのメッセージはブラッド、ローラン両名の絆の深さのおかげで、一瞬動きを躊躇わせることに成功した。
(惜しい、70点です)
コンビネーション、互いを尊重しあうことで生まれる隙もある。ブラッドはポチの覇気に怯まず剣を振り下ろしたかのように見えた。だが、実際はポチに全ての軌道を見切られた死んだ一撃だった。
上手い具合にその剣をローランの槍の尖部切断に使うのだから、ポチの戦闘技術と精神いわゆる度胸は並大抵のものではなかった。
「!」
「!」
もちろんこれにはかなり鍛えられていたブラッド、ローランも驚いた。ブラッドの剣によって切断された自分の槍の先端が飛んでいくのを認めたローランは、両目に炎を灯した。
「バ、やめとけ、このタイミングは!」
ブラッドの静止を聞かず、ローランはその特殊なスキルを発動した。
「!」
突然、ポチの全身が燃え上がった。あわててブラッドは飛びのく。が、ローランはその燃え上がったポチの直視を止めなかった。
ローランの能力は【念力発火】、しかも見ただけで対象を燃やすという超レア先天性、名づけて【炎の眼】なのである。
「両目に炎が灯るエフェクトがなかったら、危なかった」
燃え盛っていたマントを突き抜けて、ポチの鋭い拳がローランに突き刺さった。【眼】に何かエフェクトがあるのは、経験上、全般的に【魔眼】と呼ばれる視ただけで物事に何らかの影響を与える超強力先天性スキルだけだとポチは、知っていたからこの結果になった。
強力なスキルを保持していても、使いどころを誤るとこうなるという良い例である。
---------------------------
「やっぱり最初からガンガン能力使っていったらよかったんですよ、ブラッドさん!」
「馬鹿ローランが。切り札は取っておくものだろうが。それをあんなタイミングで使いやがって」
「そんな考え方古いんですよ。これからの時代使えるものは最初から最大限利用してですねー」
【炎の眼】の有効射程距離やエフェクト、タイムラグを理解したポチは、二人をふん縛ることに成功していた。なんだか大通りでドンパチをやらかしたせいか人が集まってきていたので、ポチは二人を酒場の裏に移動させていた。
(あ、危なかったー。アレックスさんありがとう)
ポチは安堵の表情をひとまず敵の前で押さえ込んだ。防ぎきれず焼けてしまったところどころがジンジンと痛みを主張している。酒場の表に戻ると、いろいろ置いてけぼりにされたザクロが立っていた。
「だ、大丈夫ですか……?」
戦闘に入り込むタイミングを逃したザクロが言いながら、ポチの治療を始めた。
「ええ、大丈夫です。生きた心地はしませんでしたが」
だが、よくもまあ、まだ生きているものだと、暖かい治療の光を受けてポチは思った。
今日の教訓:何事もタイミング
あらすじ
さっき書いてたお疲れ様会が操作ミスで消えた私は
Liveでラヴコメをやるという横暴を思いつき
自棄になったハートのパワーを
自分の立場を最大限に利用した形で放とうとしていた。
-------------------------
「やばい、遅れてしまう」
私の名前は『アレックス・しげお』。都内の高校に通うごく一般的な高校生だ。
「こういうときに使うしかないだろう。【神速】」
風景が線へと変わっていく。私はこの一瞬だけ100mを0秒で駆け抜けることが可能になる……!
「きゃっ!」
「うわっ!」
しかし、【神速】は障害物を認めて自動的にとまってしまった。どうやら障害物というのは今倒れている少女のようだ。
「だ、大丈夫ですか?」
【神速】は速すぎて視認も困難だ。彼女には私が突然現れたように見えたのだろう。
「だ、大丈夫です……」
立ち上がったのは、白いローブをきた金髪ブロンドのしょう
カーーーーーーーーーーット!
「なんでヒロインがザクロなんじゃ? その前におかしいじゃろうが都内の日常的登校風景に【神速】て! ワシは認めんぞ! こんなものラヴコメでもなんでもない!」
「私にはアトラさんがどんなポジションにいるのかわからない」
「だまらっしゃいアレックス! ふん、起こってしまったものはしょうがない! そのまま続けよ!」
アクション
「ちょっと待って! お兄ちゃん!」
「!」
「!」
そのギャルゲでは日常的光景を目撃したある人物が黙っていられなくなったようだ。
「サ、サティン!」
「その子を殺せばいいのね!」
「まず落ち着け!」
泣きながらサティンにしがみつく私。だが暴走するサティンは止まらない。
「大丈夫よ、一瞬だから。証拠も残さないわ」
「に、逃げて見知らぬ人ー!」
「え? えー?」
こうして私とサティンと巻き込まれた少女(ザクロ)は学校に遅刻した。
カーーーーット!
「ま、アリじゃな」
「あ、アリなんですか……?」
「もう少し血みどろになっても構わん」
「アトラさーん? 何言ってんですかー?」
「ゆけ! アレックス! 誤解に誤解を重ねてゆけ!」
「だから何言ってるんですか!?」
アクション!
「ひどいめにあった……」
私は三限目にやっと自分の教室にたどり着くことができていた。あの後、斧や銃をサティンから奪い取るのに手間取り、集まってきた野次馬達を説得するのに手間取り、混乱するザクロさんを落ち着けるのに手間取り……
「何やってるんだろう、私は」
キンコーン――
昼休みになった。さて、どうしよう。
→一つ下の学年のサティンに会いに行く。
→いとしいサティンに会いに行く。
→昼食に行かずサティンに会いに行く。
なんだか世界が操作されているような気がしてならない。私はとりあえず一つ下の学年のサティンに会いに行こうとした。すると――。
「きゃー! ポチ様よ!」
「今日も麗しいわ!」
「ちょっとどいてくれたまえ、レディ達」
カーーーーーーーーーーット!
「どうしたんじゃ、アレックスよ」
「ハァ……ハァ……ポチさんが……ポチさんがいないよ!」
「いたじゃろうが」
「いないよ!」
「ほれ、さっき『どいてくれたまえ、レディ―達』と言っていたのが――」
「わー! わー! そんなのポチさんじゃあーりーまーせーん!!!」
「知るか、続けるぞ」
アクション!
背景に青いバラを散りばめた御曹司『ポチ・シェパード・田中・よしお』が何故か私の前に現れた。
「ジュテーム、君がアレックス君だね?」
「……そうなんだけど、そうだと言いたくないです」
「君は今日の朝、麗しき女生徒と衝突したそうだね」
「……何故それを」
「ということで、勝負だ!」
「どういうことだーー!」
一瞬にして舞台は整った。校庭のグラウンドの真ん中に、リングが用意され、その周りを全校生徒が囲む形。
「状況についていけない」
「人生とは戦いなのさ、アレックス君……」
ワァーッ、と、何故か盛り上がる観客。なんだこの空気は。助けてドラ○もん。
さっき書いてたお疲れ様会が操作ミスで消えた私は
Liveでラヴコメをやるという横暴を思いつき
自棄になったハートのパワーを
自分の立場を最大限に利用した形で放とうとしていた。
-------------------------
「やばい、遅れてしまう」
私の名前は『アレックス・しげお』。都内の高校に通うごく一般的な高校生だ。
「こういうときに使うしかないだろう。【神速】」
風景が線へと変わっていく。私はこの一瞬だけ100mを0秒で駆け抜けることが可能になる……!
「きゃっ!」
「うわっ!」
しかし、【神速】は障害物を認めて自動的にとまってしまった。どうやら障害物というのは今倒れている少女のようだ。
「だ、大丈夫ですか?」
【神速】は速すぎて視認も困難だ。彼女には私が突然現れたように見えたのだろう。
「だ、大丈夫です……」
立ち上がったのは、白いローブをきた金髪ブロンドのしょう
カーーーーーーーーーーット!
「なんでヒロインがザクロなんじゃ? その前におかしいじゃろうが都内の日常的登校風景に【神速】て! ワシは認めんぞ! こんなものラヴコメでもなんでもない!」
「私にはアトラさんがどんなポジションにいるのかわからない」
「だまらっしゃいアレックス! ふん、起こってしまったものはしょうがない! そのまま続けよ!」
アクション
「ちょっと待って! お兄ちゃん!」
「!」
「!」
そのギャルゲでは日常的光景を目撃したある人物が黙っていられなくなったようだ。
「サ、サティン!」
「その子を殺せばいいのね!」
「まず落ち着け!」
泣きながらサティンにしがみつく私。だが暴走するサティンは止まらない。
「大丈夫よ、一瞬だから。証拠も残さないわ」
「に、逃げて見知らぬ人ー!」
「え? えー?」
こうして私とサティンと巻き込まれた少女(ザクロ)は学校に遅刻した。
カーーーーット!
「ま、アリじゃな」
「あ、アリなんですか……?」
「もう少し血みどろになっても構わん」
「アトラさーん? 何言ってんですかー?」
「ゆけ! アレックス! 誤解に誤解を重ねてゆけ!」
「だから何言ってるんですか!?」
アクション!
「ひどいめにあった……」
私は三限目にやっと自分の教室にたどり着くことができていた。あの後、斧や銃をサティンから奪い取るのに手間取り、集まってきた野次馬達を説得するのに手間取り、混乱するザクロさんを落ち着けるのに手間取り……
「何やってるんだろう、私は」
キンコーン――
昼休みになった。さて、どうしよう。
→一つ下の学年のサティンに会いに行く。
→いとしいサティンに会いに行く。
→昼食に行かずサティンに会いに行く。
なんだか世界が操作されているような気がしてならない。私はとりあえず一つ下の学年のサティンに会いに行こうとした。すると――。
「きゃー! ポチ様よ!」
「今日も麗しいわ!」
「ちょっとどいてくれたまえ、レディ達」
カーーーーーーーーーーット!
「どうしたんじゃ、アレックスよ」
「ハァ……ハァ……ポチさんが……ポチさんがいないよ!」
「いたじゃろうが」
「いないよ!」
「ほれ、さっき『どいてくれたまえ、レディ―達』と言っていたのが――」
「わー! わー! そんなのポチさんじゃあーりーまーせーん!!!」
「知るか、続けるぞ」
アクション!
背景に青いバラを散りばめた御曹司『ポチ・シェパード・田中・よしお』が何故か私の前に現れた。
「ジュテーム、君がアレックス君だね?」
「……そうなんだけど、そうだと言いたくないです」
「君は今日の朝、麗しき女生徒と衝突したそうだね」
「……何故それを」
「ということで、勝負だ!」
「どういうことだーー!」
一瞬にして舞台は整った。校庭のグラウンドの真ん中に、リングが用意され、その周りを全校生徒が囲む形。
「状況についていけない」
「人生とは戦いなのさ、アレックス君……」
ワァーッ、と、何故か盛り上がる観客。なんだこの空気は。助けてドラ○もん。
「……【無神】攻略班、全滅……」
「……」
「……どうしますか?」
「…………うーーーーーん……」
「私達のレベルでは処理しきれませんよ? 上位GMに――」
「――君は新参だな。あの変わり者達はたとえ世界が滅びることになろうとも、プレイヤーが起こした事件には介入しないだろうよ。きっと今回も傍観を決め込むはずだ」
「なっ……。なら上位GM陣は、一体何の為に存在するんですか!?」
「さあな、俺に聞くな。……全滅、全滅……? よし、とりあえず仲間を集めろ」
「戦うんですか?」
「まさか。第一陣で敵わなかったんだ。俺達に勝てるわけがないさ」
「……え?」
「俺達GMは降りるぞ。
新しいLive世界を作った方が建設的だ。Live第二期計画だな」
以上、『諦め』。
――GM陣の会話より。
「……」
「……どうしますか?」
「…………うーーーーーん……」
「私達のレベルでは処理しきれませんよ? 上位GMに――」
「――君は新参だな。あの変わり者達はたとえ世界が滅びることになろうとも、プレイヤーが起こした事件には介入しないだろうよ。きっと今回も傍観を決め込むはずだ」
「なっ……。なら上位GM陣は、一体何の為に存在するんですか!?」
「さあな、俺に聞くな。……全滅、全滅……? よし、とりあえず仲間を集めろ」
「戦うんですか?」
「まさか。第一陣で敵わなかったんだ。俺達に勝てるわけがないさ」
「……え?」
「俺達GMは降りるぞ。
新しいLive世界を作った方が建設的だ。Live第二期計画だな」
以上、『諦め』。
――GM陣の会話より。
番外編 ザ・ワールド
2007年3月16日 LIVE番外編「青先輩どうしたんですか?」
シムシとカイドの国境沿いの森。今日も元気に魔法使いやモンスターテイマー達の軍団と戦うシムシ軍。ブラッド、ローラン、青の三人組。忘れていた方も多いであろうが、この三人組は本部直轄部隊として【隻眼の剣士】ポチの拘束を命ぜられていたあの三人組である。が、見事に失敗し、辺境の戦地に飛ばされたという結果になってしまったかわいそうな三人組でもある。
「見……東、光」
「東に光が見えたんですか? うーん……僕には見えませんでしたけど……」
「おいローラン、青先輩の戯言に一々付き合うな」
「黙ッ」
「ぎゃっ!」
驚くべきことに三人組で一番の先輩であるらしい青のコブシにより一撃でダウンするブラッド(金髪)。ローラン(茶髪)はその光景を見ながら、にこにこと笑っている。ちなみに三人組がいるのは、数百メートル前では普通にカイド兵との戦争が行われている地点である。激・戦・区♪ というやつだ。
『突撃ー! 突撃だー!』
という指揮官の大声も聞こえる、立派な戦場。他の人々の足音が森の奥に消えていく最中。
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
「あれっ! なんでしょうこの声、先輩!」
「無……神……?」
「最強最悪!? 大変だ! すぐに皆でルツェンに行かないと!」
ローランは戦場で暢気に寝ているブラッドを起こそうとする。青は東の空を見つめて動かない。
『何をやっとるかー! これは敵の策略だー! 突撃ー!』
そんな指揮官の声は、もちろん青とローランの耳には届いていなかった。ブラッドなんて最初から気絶していたほどだ。
*
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
……。
周は、ついにきてしまったか、と思っただけだった。
……。
*
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
「ええい、ますます忙しくなってしまった!」
「そうだね」
そう言いながら横になって休んでいるクサモチを、アトラは迷いなく蹴飛ばしたそうな。
*
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
「どーも、詳細を伝えない、ってーのが怪しいわよねェ……」
薄暗い店内で、ある物を探すロッカク堂店主シンカ。それを見守る初心者風の男。
「GMって本当にいたんだー、みたいな感じだな」
「あたしは知ってたけどね。はいコレでしょ」
随分大きな荷物袋を取り出したシンカは、それを男に投げて渡した。
「ゲホッ、ゲヘェッ! 埃が!」
「あー、随分放ったらかしだったからねぇ……」
「やってくれるぜ埃……、だが俺の誇りは……」
「はいはい、代金は?」
「出世払いで!」
元気よく店を飛び出した元気な男を見送り、シンカは
(ウチ……いつか潰れるわ)
と思ったそうな。
*
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
全世界へと届いたテレパシー。だがその言葉の本当の意味に気づいたものは全世界でどれだけいるのだろうか。
初めてのイベントに心躍らせるもの、世界を滅ぼすという単語に怯えるもの、力を合わせようと奮闘するもの、その言葉が世界に多少の変化を与えたのはいうまでもない。
それがよい方向に向かうのか、悪い方向に向かうのか、誰にもわからない。作者にもわからん。乞うご期待です。
シムシとカイドの国境沿いの森。今日も元気に魔法使いやモンスターテイマー達の軍団と戦うシムシ軍。ブラッド、ローラン、青の三人組。忘れていた方も多いであろうが、この三人組は本部直轄部隊として【隻眼の剣士】ポチの拘束を命ぜられていたあの三人組である。が、見事に失敗し、辺境の戦地に飛ばされたという結果になってしまったかわいそうな三人組でもある。
「見……東、光」
「東に光が見えたんですか? うーん……僕には見えませんでしたけど……」
「おいローラン、青先輩の戯言に一々付き合うな」
「黙ッ」
「ぎゃっ!」
驚くべきことに三人組で一番の先輩であるらしい青のコブシにより一撃でダウンするブラッド(金髪)。ローラン(茶髪)はその光景を見ながら、にこにこと笑っている。ちなみに三人組がいるのは、数百メートル前では普通にカイド兵との戦争が行われている地点である。激・戦・区♪ というやつだ。
『突撃ー! 突撃だー!』
という指揮官の大声も聞こえる、立派な戦場。他の人々の足音が森の奥に消えていく最中。
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
「あれっ! なんでしょうこの声、先輩!」
「無……神……?」
「最強最悪!? 大変だ! すぐに皆でルツェンに行かないと!」
ローランは戦場で暢気に寝ているブラッドを起こそうとする。青は東の空を見つめて動かない。
『何をやっとるかー! これは敵の策略だー! 突撃ー!』
そんな指揮官の声は、もちろん青とローランの耳には届いていなかった。ブラッドなんて最初から気絶していたほどだ。
*
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
……。
周は、ついにきてしまったか、と思っただけだった。
……。
*
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
「ええい、ますます忙しくなってしまった!」
「そうだね」
そう言いながら横になって休んでいるクサモチを、アトラは迷いなく蹴飛ばしたそうな。
*
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
「どーも、詳細を伝えない、ってーのが怪しいわよねェ……」
薄暗い店内で、ある物を探すロッカク堂店主シンカ。それを見守る初心者風の男。
「GMって本当にいたんだー、みたいな感じだな」
「あたしは知ってたけどね。はいコレでしょ」
随分大きな荷物袋を取り出したシンカは、それを男に投げて渡した。
「ゲホッ、ゲヘェッ! 埃が!」
「あー、随分放ったらかしだったからねぇ……」
「やってくれるぜ埃……、だが俺の誇りは……」
「はいはい、代金は?」
「出世払いで!」
元気よく店を飛び出した元気な男を見送り、シンカは
(ウチ……いつか潰れるわ)
と思ったそうな。
*
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
全世界へと届いたテレパシー。だがその言葉の本当の意味に気づいたものは全世界でどれだけいるのだろうか。
初めてのイベントに心躍らせるもの、世界を滅ぼすという単語に怯えるもの、力を合わせようと奮闘するもの、その言葉が世界に多少の変化を与えたのはいうまでもない。
それがよい方向に向かうのか、悪い方向に向かうのか、誰にもわからない。作者にもわからん。乞うご期待です。
番外編 ゲームマスター
2007年3月14日 LIVE番外編 ゴッドレスを滅ぼした後、謎の集団もルツェンに『境の閃光』が出たことを確認した。その謎の集団の正体は、アイゼンの考え通り、GMの集団だった。古今東西色々な国からランダムに集められたような統一性のないプレイヤー達の集団は、その実はそれぞれ強力なスキルを保有しているLive最強の集団だった。
「……まさか第三段階か!? 早すぎる!」
「やばいな。まだ第二段階なら、俺達だけでもなんとかなったんだが」
「これでは総力戦になるぞ」
「やはり【無神】捜索に時間を割いたほうが良かったんじゃなか」
「終わったことだろ。それに俺達は【無神】と戦わない方が良かったんだ。だが、状況が変わったな」
ゴッドレスを容易く滅ぼした集団が、うろたえ始めた。
「ペルとかが見物に行ってなきゃいいんだが」
「いいや、あいつは絶対に見に行ってるね」
「頼むからあのスキルだけは奪われないでくれよ……本当に……」
『境の閃光』が消えてゆく中で、GM達のざわめきは止まなかった。実はGM達の間でもあまり知られていないことだが、ゲームマスターといえども、出現したモンスターをポンと消したり、悪の組織の親玉をすぐさま特定することはできない。多くのプレイヤーが奮闘し、築き上げてきたLive世界の全把握は、もはやLiveを作った者たちにも不可能に近くなった。Live世界は今現在も膨れ上がっており、最早GM達の手から離れようとしているのだ。
だからGMは、プレイヤーに紛れてLive世界を管理していくしかなかった。世界に敵対する組織ができたとしても、調査は自分達でするしかない。世界を滅ぼすモンスターが誕生したとしても、そのモンスターは直接自分達、あるいはプレイヤー達が倒さなければならない。
「全く、厄介なものを復活させてくれたな……」
「今回のは重労働だ……」
「まあ、あの案で決定だな」
「全世界テレパシー使えるやつは?」
「あ、俺使えます」
「じゃ、ヨロシク」
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
緊急告知なんて、何年ぶりだったのだろうか。決められていた告知の後、GM達は二手に分かれた。【無神】と相性のいいプレイヤー、相性の悪いプレイヤーの二手だ。
GM達によるスキル調節も、この頃は困難になってきた。若いGM程所有するスキルは弱くなっている。GM達はどんどん一般プレイヤーと変わらなくなってきたのだ。
「それでも、Live世界は回り続ける、と」
【無神】攻略派のプレイヤー達のリーダーが、剣を掲げた。
「行くぞぉっ!」
「応っ!」
「……まさか第三段階か!? 早すぎる!」
「やばいな。まだ第二段階なら、俺達だけでもなんとかなったんだが」
「これでは総力戦になるぞ」
「やはり【無神】捜索に時間を割いたほうが良かったんじゃなか」
「終わったことだろ。それに俺達は【無神】と戦わない方が良かったんだ。だが、状況が変わったな」
ゴッドレスを容易く滅ぼした集団が、うろたえ始めた。
「ペルとかが見物に行ってなきゃいいんだが」
「いいや、あいつは絶対に見に行ってるね」
「頼むからあのスキルだけは奪われないでくれよ……本当に……」
『境の閃光』が消えてゆく中で、GM達のざわめきは止まなかった。実はGM達の間でもあまり知られていないことだが、ゲームマスターといえども、出現したモンスターをポンと消したり、悪の組織の親玉をすぐさま特定することはできない。多くのプレイヤーが奮闘し、築き上げてきたLive世界の全把握は、もはやLiveを作った者たちにも不可能に近くなった。Live世界は今現在も膨れ上がっており、最早GM達の手から離れようとしているのだ。
だからGMは、プレイヤーに紛れてLive世界を管理していくしかなかった。世界に敵対する組織ができたとしても、調査は自分達でするしかない。世界を滅ぼすモンスターが誕生したとしても、そのモンスターは直接自分達、あるいはプレイヤー達が倒さなければならない。
「全く、厄介なものを復活させてくれたな……」
「今回のは重労働だ……」
「まあ、あの案で決定だな」
「全世界テレパシー使えるやつは?」
「あ、俺使えます」
「じゃ、ヨロシク」
“緊急イベント告知! シムシ極東の町、ルツェンにて、最強最悪のモンスター【無神】が復活しました! 【無神】の力は放っておけば世界を滅ぼすほど強大です! プレイヤーの皆さんは、力を合わせて【無神】を倒してください! 以上です”
緊急告知なんて、何年ぶりだったのだろうか。決められていた告知の後、GM達は二手に分かれた。【無神】と相性のいいプレイヤー、相性の悪いプレイヤーの二手だ。
GM達によるスキル調節も、この頃は困難になってきた。若いGM程所有するスキルは弱くなっている。GM達はどんどん一般プレイヤーと変わらなくなってきたのだ。
「それでも、Live世界は回り続ける、と」
【無神】攻略派のプレイヤー達のリーダーが、剣を掲げた。
「行くぞぉっ!」
「応っ!」
番外編 一つの終わり
2007年3月13日 LIVE番外編 コメント (2) チャットルームは消滅した。
謎の集団による攻撃の第一波で、ゴッドレス構成員の約七割が昇天。主なメンバーでは、【障壁】村正、【蠢動】ミゼッタ、【治癒】ゴルガリが昇天した。完全無欠であるはずのチャットルームは、謎の集団の奇襲によりあっけなく陥落した。
抗戦しようとした【無常】アイゼンは、【空間】アカシアの【転移空間】により、強制的に転移させられた。チャットルームを滅ぼしたメンバーは、その後【空間】アカシアを断罪。ゴッドレスに捕らえられていた二十七名のプレイヤーを解放した。
ゴッドレス残党の処理は困難に近いと判断した謎の集団は、その後、チャットルーム跡地から最も近いシムシ極東の町、ルツェンへと向かった。
ゴッドレスは、あっけなく滅びた。
そして【無神】発見の報は、ゴッドレスが滅びるまで、ついになかった。
*
所詮は、駒だった。感慨はない。ある目的に至るためだったのだから、損害はないのだ。
……。
“無常様さえ、生き延びれば、ゴッドレスは滅びません”
我の命令にもまともに従わぬ奴らだった。本当に、不愉快な奴らだった。
……。
「損害……。ないわけでは、なかったか」
終わったこと、しかも明らかに考えても無駄であることを考えている時点で、奴らの存在が我に何らかの影響を与えていたのは間違いがない。だからと言って、謎の集団に復讐を考える暇など我にはない。
「ふん……見当はついているがな……」
このLive世界では、『GM』、『ゲームマスター』と分類されるプレイヤーが確かに存在する。見た目ではわからず、表舞台にも出ないが、確かにいる。我は知っていた。組織の一員に、『GM』と呼ばれるプレイヤーがいることを。
プレイヤーを殺す【ゴッドレス】に入るGMがいるのならば、無条件でプレイヤーを守るGMが存在してもおかしくはない。
「……それだけのこと……だな」
また無駄なことを考えた。飛ばされた場所は、シムシだった。帰ってきたという気はしない。最早ここは我の国などではない。何も考える必要はない。
故に、我、思う。
……【無神】は何処にイル……。
そして我、【無常】は、東に、『境の閃光』を見タノダ。
謎の集団による攻撃の第一波で、ゴッドレス構成員の約七割が昇天。主なメンバーでは、【障壁】村正、【蠢動】ミゼッタ、【治癒】ゴルガリが昇天した。完全無欠であるはずのチャットルームは、謎の集団の奇襲によりあっけなく陥落した。
抗戦しようとした【無常】アイゼンは、【空間】アカシアの【転移空間】により、強制的に転移させられた。チャットルームを滅ぼしたメンバーは、その後【空間】アカシアを断罪。ゴッドレスに捕らえられていた二十七名のプレイヤーを解放した。
ゴッドレス残党の処理は困難に近いと判断した謎の集団は、その後、チャットルーム跡地から最も近いシムシ極東の町、ルツェンへと向かった。
ゴッドレスは、あっけなく滅びた。
そして【無神】発見の報は、ゴッドレスが滅びるまで、ついになかった。
*
所詮は、駒だった。感慨はない。ある目的に至るためだったのだから、損害はないのだ。
……。
“無常様さえ、生き延びれば、ゴッドレスは滅びません”
我の命令にもまともに従わぬ奴らだった。本当に、不愉快な奴らだった。
……。
「損害……。ないわけでは、なかったか」
終わったこと、しかも明らかに考えても無駄であることを考えている時点で、奴らの存在が我に何らかの影響を与えていたのは間違いがない。だからと言って、謎の集団に復讐を考える暇など我にはない。
「ふん……見当はついているがな……」
このLive世界では、『GM』、『ゲームマスター』と分類されるプレイヤーが確かに存在する。見た目ではわからず、表舞台にも出ないが、確かにいる。我は知っていた。組織の一員に、『GM』と呼ばれるプレイヤーがいることを。
プレイヤーを殺す【ゴッドレス】に入るGMがいるのならば、無条件でプレイヤーを守るGMが存在してもおかしくはない。
「……それだけのこと……だな」
また無駄なことを考えた。飛ばされた場所は、シムシだった。帰ってきたという気はしない。最早ここは我の国などではない。何も考える必要はない。
故に、我、思う。
……【無神】は何処にイル……。
そして我、【無常】は、東に、『境の閃光』を見タノダ。
番外編 フルファイアとオルゾフ
2007年3月12日 LIVE番外編 11が必死でトゥエルを治している最中のことだった。
「ぐへへ、負けたかフルファイア」
「ええ、負けたましたよ……オルゾフ」
黒いローブを着た小柄な男が、いつのまにかフルファイアの側に立っていた。
「ぐへへ、お前にしちゃあ、随分潔いじゃねえか」
「……心外ですね。炎は潔く消えるから、美しいんですよ。それになんだか……燃えないんです。全く、嫌になりますね。愚かな初心者の考え方というのは」
フルファイアは眼を閉じて首を静かに横にふった。その顔は何処か諦めていた。
「……さて、貴方がここにいるということは?」
「ぐへへ……そうだなあ、そういうことだなあ?」
オルゾフは落ちていた名前隠し君を、ヒョイと拾い上げた。
――そして
ルツェンの町から、全てを白に染めあげるような強烈な閃光が放たれた。
「ぐへへ、負けたかフルファイア」
「ええ、負けたましたよ……オルゾフ」
黒いローブを着た小柄な男が、いつのまにかフルファイアの側に立っていた。
「ぐへへ、お前にしちゃあ、随分潔いじゃねえか」
「……心外ですね。炎は潔く消えるから、美しいんですよ。それになんだか……燃えないんです。全く、嫌になりますね。愚かな初心者の考え方というのは」
フルファイアは眼を閉じて首を静かに横にふった。その顔は何処か諦めていた。
「……さて、貴方がここにいるということは?」
「ぐへへ……そうだなあ、そういうことだなあ?」
オルゾフは落ちていた名前隠し君を、ヒョイと拾い上げた。
――そして
ルツェンの町から、全てを白に染めあげるような強烈な閃光が放たれた。