100.魔王

2009年4月20日 Live2
 シンリはすぐさま、中立国への宣戦と、自身の国の人間達の【選別】を宣言する。つまりは、役に立つ人間と、役に立たない人間を分けて、役に立たない方を減らすという単純なことだ。その方が世界の安定に良いとシンリは考えた。そしてそれをすぐさま実行した。
 もちろん世論は反発する。世界の破滅という一応の事情はシンリは説明したが、そこで【カリスマ】は全く発動しなかった。なぜなら別にシンリはその事情を信じてもらってももらわなくても、つまりはどっちでも良かったからだ(カリスマの発動条件1、自身が『信じてもらいたい』と思わなければならない)。今、シンリは人に何の期待もしていなかった。なので、ところどころで反乱、テロ、もしくは革命運動が起きようとも、それはそれで都合がよく、シンリの私兵(狂信兵)で、選別はスムーズに進むことになる(反発者の処刑によって)。【カリスマ】は死という概念など軽く超越して人を縛るし、得てしてこういうときの独裁者の多少の無茶はまかり通るものなのである。
 効率よくプレイヤーを減らすためにシンリはさまざまな方法を考えた。単純な銃殺、ギロチン、焼殺エトセトラ。アレクサンドル首都にあるコロシアムを密閉仕様に改造し、中に大量のプレイヤーを放り込み『毒殺』、あるいは強力な魔物を放って好き勝手に殺させる。ここまでくるとシンリの「効率よい選別」、という考え方からは離れ、一部の物好きたちによる趣味の領域に入っていたが、何にせよシンリはそれら全てを許可したのだ。

 ちなみに彼は宣戦布告したその日から、リバーシブルローブをひっくり返し、着ていた。白いローブの裏側にあった黒いローブは、黒という一文字であらわすのはもったいないほどの深淵色であり、それはシンリの眼の色とこれ以上ないほど合致し、見るもの全てに陰惨な死と絶望的な未来を印象付けた。

 ――故にシンリは、裏で【魔王】と呼ばれた。

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