「ブラボー、ブラボー!」

 ぱんぱんと両手を鳴らして、ライを迎えたのはアメツキだった。

「流石は【裏切】のライ! 噂に違わぬ【裏切】っぷり!」

 最大の賞賛を、ライに送る。キルタイムメンバーはやっと成就された最大のショーに満足し、それぞれ笑みを隠せていない。

「しかし、【裏切】のライ。何処までが計算だったんだい?」

 キルタイムのメンバーの一人、【邪眼】ネクターが興味深そうに聞いた。

「もちろん、シンリと出会う前からさ。賊として行動して偶然さをアピールしつつシンリと接触、敵から味方への変貌で、もう裏切らないという印象を植え付け、あとはなるべく近くで行動しただけに過ぎない。シンリからは『君は素晴らしい人間になれる』というカリスマをかけられたが、何せ、俺にとってはこういう【裏切】という行為そのものが、『素晴らしく』、てね。【裏切】って背徳行為でありながらも、人である限り切り離せない、本当に素晴らしい行為だと思うんだな、俺は。=(イコール)【裏切】を推奨する、『俺という人間』は素晴らしいということになり、実質やつのカリスマなんざ効いていなかった。実はシンリには裏切っていいというお墨付きを貰ったわけだな。あとは適当に身を案じてみたり、お互いの呼び方を変えてみたり、親友になってみたりしてダメージ値を増やしていったわけだ」

 どうしたら人は、ここまで歪めるのだろうか。キルタイムのメンバーの一人、タナトスはその話を聞いて、満足そうに笑った。

「かかか、『あえて知らなかった』が、アメツキ、お前がライがヤバいって言ってたのはこういうことだったんだな。確かに俺も何か同じニオイを感じてはいたが、ここまでとは予想外だった。かかか、やられたぜ。しかし、かつて俺がお前と出会ったときは、裏切る『心』なんて少しも見出せなかったぞ?」

 タナトスは今も、ライの精神状態を『読む』のは躊躇っていた。それほどまにで、構造が違うのだと、表情で、言葉で悟り、タナトスは『やめた』のだ。

「ああ、タナトスか。あの時は計画をやめそうになっていたシンリを『正しく』導いてくれて、ありがとう。『心』を見出せなかった? もちろんそれは、俺の【裏切】という二つ名の由来になる。俺はある条件を満たすまで、【自分の心を偽る】ことができるんだよ。うん、それがどういうことなのかは具体的には言えないけれど、かなり特殊な条件下じゃないと発動しない能力だから、これはお仲間達は警戒しなくてもいいよ。ともかくスイッチが入るまでは俺はシンリに本当に心酔していたんだけど、あの、スイッチが入ってからの、シンリの表情、仕草、絶望、ああ、あああああああああああ! いいなあああ!」

 くねくねとよじれながら、ライは叫ぶ。自身を抱きながら、ライは叫ぶ。

「ああ、いいよぉ! いいよシンリぃ! もっと壊れてぇ!」

 キルタイムのメンバーさえちょっと引き気味になるほどの壊れっぷりで、【裏切】ライは、キルタイムメンバーとなった。もちろんシンリには内緒である。

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