92.とりあえず、はじめよう
2009年4月16日 Live2 シンリとシシが対峙したのは、
「やあ、僕はなゆた四天王が一人、グランミィル」
赤い髪の少年、そうまだ十五歳にも満たないような見た目の少年だった。
「とりあえず、なゆた様を邪魔するやつは――」
すとん、という音がした。いや、むしろしなかった。
グランミィルの首に奇妙な横線が入っていた。彼は唇を動かすも、空気が出ないのか、ぱくぱくと餌をねだる金魚のような真似をした。すらりと彼の首が体から外れて、後は凄惨な光景だった。
「――う」
シンリが黙ることに耐えかねたといった様子で声を出した。逆にライは呆然と立ち尽くしただけだった。グランミィルの背後には、英雄級の力を手に入れた一人の青年が立っていた。
「シンリ様、ご無事で」
両目が塞がっているポチは、血の涙の後を拭おうとせず、先に剣の刃にわずかに付いた血を振って落とし、うやうやと首を傾け礼をした。最早彼が以前の彼ではないことは明らかであり、時間軸などの常識さえ突破しそうな勢いがある。カタストラを退けてまだ五分も経っていない。もちろんシンリ軍は追いついていない。リペノさえも。
「では、次の敵は何処ですか?」
そのとき既に、なゆたが無数の光球を携え、中空に躍り出ていた。ありえないジャンプ力である。
「あれですか?」
シンリの答えを待たず、ポチは前に一歩出る。その一歩は一歩でありながら、誰にもシンリに手を出せることができなくなる一歩だった。
「【オールオアナッシング】、この光球に触れると」
「不要」
敵の情報垂れ流しさえ切り、ポチは剣を再び構える。家をひとつ押しつぶし、白く巨大な龍の手がポチを捉え、民家の壁へと叩きつけた。ポチの姿は白い龍の手で完全に見えなくなり、民家の壁にはいくつもの亀裂が入るほどの衝撃が与えられた。
「ははははは!」
なゆたが大笑いしながら、光球にポチへの殺到を命じた。その前に龍の手が同じく、ポチの手によって殴り飛ばされた。ヒジから骨ごと吹き飛ばされた白い龍の手は、ぐるぐると回りながら空へ舞う。
次にポチは弾幕を全て 避 け た 。それ以外の表現が見つからない。誘導も、速度も、全ての要素を決定的に征服し、ポチは数十にもおよぶ光球の殺到を避けた。
「は……」
なゆたの大笑いは、とまる。ポチは剣を親指と人差し指の力だけではじくと、白龍の頭の部分を建物越しに見切っていたのか、するりと障害物の間を縫って、剣が龍の下顎へと突き刺さった。コンマ秒後には、剣は完全に白龍の脳へと達し、その意識を奪った。ちなみにそのとき逃げ出した元カイド軍軍師、シシの行動をポチが見透かしていないわけもなく、間もなく空から血の雨を降らせながら落下してきた巨大な龍の腕によって、軍師は押しつぶされあえなく昇天の結末を辿ることになる。
「僕の主の道には、邪魔だ」
ポチの思想と、敵への手向けの言葉であった。光球が諦めたように自然消滅し、なゆたがLiveの自然法則にしたがって落ちてゆくのと同時。ポチは空手になったが、何にも不安などなかった。勝つ、負けるという概念さえ消えていた。ただ、彼はそう思ったから、そう行動し、それは実現する。
ふいとポチはライの腰ベルトから短剣をするりと抜き出し、なゆたへ放った。その行動はもはやポチ自身さえも意識しておらず、ライは後になって自分の短剣がなくなっていることに気づくほどだった。
するりと綺麗になゆたの額に突き刺さった短剣は、貫通するのを流石に諦めて、なゆたの脳を完全に破壊し、頭蓋骨に大きな穴とヒビを入れるだけで留まった。
「……いやいやいや」
その光景は、誰もが、信じることが取り得のシンリさえもが、信じられない程度の光景だったという。
「やあ、僕はなゆた四天王が一人、グランミィル」
赤い髪の少年、そうまだ十五歳にも満たないような見た目の少年だった。
「とりあえず、なゆた様を邪魔するやつは――」
すとん、という音がした。いや、むしろしなかった。
グランミィルの首に奇妙な横線が入っていた。彼は唇を動かすも、空気が出ないのか、ぱくぱくと餌をねだる金魚のような真似をした。すらりと彼の首が体から外れて、後は凄惨な光景だった。
「――う」
シンリが黙ることに耐えかねたといった様子で声を出した。逆にライは呆然と立ち尽くしただけだった。グランミィルの背後には、英雄級の力を手に入れた一人の青年が立っていた。
「シンリ様、ご無事で」
両目が塞がっているポチは、血の涙の後を拭おうとせず、先に剣の刃にわずかに付いた血を振って落とし、うやうやと首を傾け礼をした。最早彼が以前の彼ではないことは明らかであり、時間軸などの常識さえ突破しそうな勢いがある。カタストラを退けてまだ五分も経っていない。もちろんシンリ軍は追いついていない。リペノさえも。
「では、次の敵は何処ですか?」
そのとき既に、なゆたが無数の光球を携え、中空に躍り出ていた。ありえないジャンプ力である。
「あれですか?」
シンリの答えを待たず、ポチは前に一歩出る。その一歩は一歩でありながら、誰にもシンリに手を出せることができなくなる一歩だった。
「【オールオアナッシング】、この光球に触れると」
「不要」
敵の情報垂れ流しさえ切り、ポチは剣を再び構える。家をひとつ押しつぶし、白く巨大な龍の手がポチを捉え、民家の壁へと叩きつけた。ポチの姿は白い龍の手で完全に見えなくなり、民家の壁にはいくつもの亀裂が入るほどの衝撃が与えられた。
「ははははは!」
なゆたが大笑いしながら、光球にポチへの殺到を命じた。その前に龍の手が同じく、ポチの手によって殴り飛ばされた。ヒジから骨ごと吹き飛ばされた白い龍の手は、ぐるぐると回りながら空へ舞う。
次にポチは弾幕を全て 避 け た 。それ以外の表現が見つからない。誘導も、速度も、全ての要素を決定的に征服し、ポチは数十にもおよぶ光球の殺到を避けた。
「は……」
なゆたの大笑いは、とまる。ポチは剣を親指と人差し指の力だけではじくと、白龍の頭の部分を建物越しに見切っていたのか、するりと障害物の間を縫って、剣が龍の下顎へと突き刺さった。コンマ秒後には、剣は完全に白龍の脳へと達し、その意識を奪った。ちなみにそのとき逃げ出した元カイド軍軍師、シシの行動をポチが見透かしていないわけもなく、間もなく空から血の雨を降らせながら落下してきた巨大な龍の腕によって、軍師は押しつぶされあえなく昇天の結末を辿ることになる。
「僕の主の道には、邪魔だ」
ポチの思想と、敵への手向けの言葉であった。光球が諦めたように自然消滅し、なゆたがLiveの自然法則にしたがって落ちてゆくのと同時。ポチは空手になったが、何にも不安などなかった。勝つ、負けるという概念さえ消えていた。ただ、彼はそう思ったから、そう行動し、それは実現する。
ふいとポチはライの腰ベルトから短剣をするりと抜き出し、なゆたへ放った。その行動はもはやポチ自身さえも意識しておらず、ライは後になって自分の短剣がなくなっていることに気づくほどだった。
するりと綺麗になゆたの額に突き刺さった短剣は、貫通するのを流石に諦めて、なゆたの脳を完全に破壊し、頭蓋骨に大きな穴とヒビを入れるだけで留まった。
「……いやいやいや」
その光景は、誰もが、信じることが取り得のシンリさえもが、信じられない程度の光景だったという。
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