83.剣士、到来

2008年11月30日 Live2
「ねぇ、これ、マズいかもしれないねぇ?」

 銀が球体に映し出された、現在のカイド首都フォロッサの状況を見て呟いた。

「パワーバランス的に、『失敗作』の方が勝ってしまうよ? アメツキ」

「そうかもしれないな……」

 果たしてどちらが『失敗作』なのか、アメツキは頷く。今は興味なさそうに。

「予定されていた協力は……?」

「まだ時期じゃあない。ここで潰れるようなら、俺のシンリの方が『失敗作』だ」

「……君は可愛い子にも、厳しいねぇ」

「銀のなゆたにも、チャンスを与えないと不公平だろう? チャンスは与える。与えるが……」

 アメツキがチラリと見た球体に映る人影に、銀も気付いた。そして目の色を変えた。

「ああ、そういうことか。だが、何故彼みたいなバグが動く?」

「友達に買い物を頼まれたんじゃないか?」

 本気で、アメツキは言った。

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「『ラトピスト教会のクッキー』……?」

 厳戒態勢のはずのフォロッサを、小さなメモを歩きながら見ている剣士がいた。

「茶菓子までこだわりだして……、これじゃあ本当に喫茶店じゃないか……。何を考えてるんだシンカは……」

 長い金髪をキラキラと輝かせながら、しなやかに歩くその女顔の剣士は、当然フォロッサの警備兵の目に入った。

「おい、今は厳戒態勢だぞ!」

「俺は今、早くしないと不死に嫌味を言われそうなんだ」

「何をワケのわからないことを……。女だが怪しいヤツだな、とっと詰め所にこ……」

「誰が女だ」

 既にその剣士はフォロッサ警備兵の視界から消え、その抜刀しようとしていた剣をなんなく奪っていた。

「粗悪な剣だな。一度振っただけでも壊れそうだ」

「な……!」

 次いで振り向こうとした警備兵の首筋に、奪った剣柄で一撃。その様は鮮やかという他ない。

「お仕事中すみませんでした。でもこっちも必死なモンで」

 再びクッキーの捜索にとりかかる彼の名は、

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