「ちょっと傍聴していただけで何をする!」

 堂々と言う走電。

「いやぁ、そこは別にいいんですけどね。貴方、強そうなんで……」

 堂々と言うアデル。
 爆発で抉れた地面を挟み、走電とアデルは向かい合っていた。走電が爆破の直撃をどうやって避けたかというと、気合というほかない。

「戦いましょう!」

 アデルの持つリボルバーカノンが、ガシャンと重厚な音を立て、地面に落ちた。

「?」

 明らかに主戦力っぽい武器を簡単に手放したアデル。その様に疑問を覚えるのは、このレベルの戦いでは少し油断が過ぎる。走電の目の前に突然アデルは現れ、例えるなら一般人VSトラックという例えが正しい拳を、その腹部に見舞った。

「お×っ!」

 声にならない声を出せず、人間離れしたパワーを不意に受けた走電は、紙くずのように吹き飛ばされ、天井に一度叩きつけられ、突き破る寸前でゴミ箱のカウンターに落ちた。

「……もしかして、終わりました?」

 型も何もない、ただ、パワーだけを叩きつけるアデルの構えは、終わったあとにも何もない。だらりと両腕をたらし、立ち上がってくるならもう一度叩きつけるだけ。

「あ、やばい、おわ、終わ……る……」

 ガラガラとカウンターやら天井やらの瓦礫をどけて、血を吐きながら立ち上がった走電。もちろん満身創痍である。なるほど、最初の爆発はリボルバーカノンではなく、素手のパワーか。

「あれ? あれを喰らって立ち上がれました? 貴方本当に人間ですか」

「俺の台詞なんだがな……」

 顎にまで滴った血を拭い、走電は、

「うん、こいつは『俺』、じゃ駄目だな。よし、『僕』で行くか……」

「?」

 今度はアデルが油断する番だった。

「初めまして、アデルさん。次は僕、『スタイナー』がお相手しましょう」

 ジョーカー仮面で走電の顔は見えない。だから、唯一『走電』を識別できる、走電の声色が、確かに変わったのをアデルは感じることができた。
 刹那、『スタイナー』もその場から消え、アデルの背後を取った。

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