国の価値がまるでそこらの道端に落ちていた10円玉のようだ。

「いいですよ」

 さらりと答える、シンリもシンリ。

「でも、それには条件が一つあります」

「聞こう」

「『誰も死なせない』」

「無理だな」

 目の前で繰り広げられる、常軌を逸した会話。ライは、その全てが真実なのをどことなく悟った。

「では、私も国をあげるのは無理です。そもそも、それがスムーズに行くかどうかも疑問ですし」

「残念だ」

「残念です」

 そこで、シンリとなゆたの会話は途切れた。

 何故か、酒場の空気も一瞬で冷え、不意に襲い掛かってくる静寂。

 いつのまにか、なゆたが右手の人差し指を中空に掲げていた。

「シン……」

 ライがシンリをかばおうとする前に、突然天井裏から現れたジョーカーマスクが、なゆたの体を一撃でぶっ飛ばしていた。なゆたは勢いそのまま酒場の壁を突き破り、雪で少し白く染まったフォロッサのレンガ道上を転がった。

「ありがとうございます、ジョーカーマスカー走電さん」

「いや、あれの対処は俺では無理だ」

 黒いドレスを着た金髪の女性が、走電の現れた場所、そのさらに上から現れた。瞬時に走電はシンリとライを蹴飛ばし、自身も離脱しようとしたところで、上から女性の『のしかかり』攻撃を受け、酒場の床の破片と砂煙の中へ消えた。シンリとライは自身の戦闘能力のなさを熟知している。なゆたが飛んでいった逆方向へと全力で駆けた。爆発が、2発、3発、走電と金髪の女性が存在していた場所で巻き起こる。酒場の天井が剥げ、ガラスが割れ、プレイヤー達が逃げ惑う中でまず、シンリ諜報部門最高責任者『走電』VSなゆたインペリアルガード『アデル』の一戦が始まった。

コメント

痺れ武蔵
2008年10月25日9:33

かっけえ

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