75.ライ、思考

2008年7月18日 Live2
「カイド東側、シムシ北との国境沿いに、カイド軍が展開しているようです。数は不明。国境沿いは森も多いですから、各所で隠れられると、敵軍全容の把握は困難といわざるを得ません」

「わかった」

 では、と下がったのはシンリ軍の諜報担当、ジョーカーマスク仮面、走電である。それに短く答えたシンリは、王座で無表情を保っている。

(第一連隊でポチさんとリペノさんが国境防衛に向かってはくれてはいるが、シンリの指示通り、あくまでも威嚇、自衛の手段。こちらから戦争をしかけるようなことはしない。というかできない。なぜなら、それがシンリだから……)

 シンリは、行軍時にも、駐屯時にも、やむをえない場合を除き、全ての兵に『モンスター』の殺生さえ禁止していた。事実、シンリはいままで一度もモンスター、プレイヤーを直接その手で殺したことはない。
 シンリの基本行動理念は、『殺さない』のである。

(それは、『保つ』こととも言える。シンリが何故そこまでしてLive世界を保ちたいのか、わからないが、だからこそ、俺はシンリを全力で助けると誓った。だが、所詮はこの世界で『保つ』ことは不可能だ。どうしても、何かを『保つ』ためには、何かを『壊す』、必要がでてしまう)

 その役を、俺がやろう。

 ライは、ひそかに思い、そしてそれを、静かに行動に移す。

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