(あ、やべ……)
三日ぶりに見た家臣達には表情がない。
(わし、久しぶりに……)
三日ぶりに聞いた報告には現実味がない。
「王、ご決断を」
三日間アトラを閉じ込めたシシは、『シンリ』という名の国に、宣戦布告していた。
(ぷっつん)
アトラの中の、何かが切れた。
「この、たわけがぁぁあああああああアア!!!!」
目を最大まで見開き、あまりの怒りに溢れ出した魔力で髪が怒髪天を仰ぎ、いまだかつて誰も聞いたことがないほどの大声を、なんらためらうことなく容赦なく家臣たちに浴びせた王、アトラは、逃げ行くシロトラと、何名か気絶してしまった家臣等には目もくれない。
「わしを牢屋に三日も閉じ込めておいて、何が せ ん せ ん ふ こ く じゃぁああああ!!! あ? 三度ぶち殺すぞォオオオオオ!」
次の叫びには、王の覇気と、本気の殺気がブレンドされているのだから、流石のシシもそれを正面から受けて、汗をかき一歩下がった。シシが手に持つ扇子の装飾である白い羽がバタバタとはためき、ローブがアトラの怒りになびく。それが止まらない。
「い・ま・す・ぐ・だ! 取り消すぞ! わしに逆らった覚悟は、できて おるん じゃろう なぁああああああアア!」
しまいには城の中のはずなのに雷がアトラの背後に落ちる始末である。あるいはその家臣たちが味わったのは、原始の恐怖と呼ぶにふさわしいかもしれない。自分の一番怖いものを想像して、それを10個ぐらいに増やしてみるといい。近いぞ。
今にも家臣全員を皆殺しにしようとするアトラを、流石にシシは止める。止めなければ死ぬ。
「王、これは、カイドの意志です」
「違うな、わしが、カイドじゃ」
「違います。国が、民が、カイドです」
「それは、アイゼンの考え方だろうが」
「違います。世界共通です」
「たわけ」
突然シシが床に倒れこむ。というよりも押し付けられた。いつのまにかシシのまわりには薄黒い空間が発生しており、その空間内ではシシは自由に身動きができないようだった。
「潰すぞ」
ミシリ、と、シシの骨が軋んだ。それでも、シシは、潰れそうな気管から声を吐き出した。
「今こそ、世界を」
ドン。その言葉を最後に、恐ろしく短い、重低音は、アトラの正面、今の今までシシが存在した場所に、きれいな真円を描いた。【重力魔法】によって、何十倍もの負荷を受けた床が、きれいに抜けたのである。
「……たわけめ……」
ある程度怒りを排出したおかげか、アトラは元の冷静さを取り戻していた。家臣は既に屈強な精神力を持つ数名しか立っていなかったが、アトラは王として命じる。
「立っているもの、今すぐ宣戦布告を取り消す……」
「……王」
やっと丸く収まりそうなのに、穴から再び聞こえるのは、シシの声。
「世界を、救うのです」
三日ぶりに見た家臣達には表情がない。
(わし、久しぶりに……)
三日ぶりに聞いた報告には現実味がない。
「王、ご決断を」
三日間アトラを閉じ込めたシシは、『シンリ』という名の国に、宣戦布告していた。
(ぷっつん)
アトラの中の、何かが切れた。
「この、たわけがぁぁあああああああアア!!!!」
目を最大まで見開き、あまりの怒りに溢れ出した魔力で髪が怒髪天を仰ぎ、いまだかつて誰も聞いたことがないほどの大声を、なんらためらうことなく容赦なく家臣たちに浴びせた王、アトラは、逃げ行くシロトラと、何名か気絶してしまった家臣等には目もくれない。
「わしを牢屋に三日も閉じ込めておいて、何が せ ん せ ん ふ こ く じゃぁああああ!!! あ? 三度ぶち殺すぞォオオオオオ!」
次の叫びには、王の覇気と、本気の殺気がブレンドされているのだから、流石のシシもそれを正面から受けて、汗をかき一歩下がった。シシが手に持つ扇子の装飾である白い羽がバタバタとはためき、ローブがアトラの怒りになびく。それが止まらない。
「い・ま・す・ぐ・だ! 取り消すぞ! わしに逆らった覚悟は、できて おるん じゃろう なぁああああああアア!」
しまいには城の中のはずなのに雷がアトラの背後に落ちる始末である。あるいはその家臣たちが味わったのは、原始の恐怖と呼ぶにふさわしいかもしれない。自分の一番怖いものを想像して、それを10個ぐらいに増やしてみるといい。近いぞ。
今にも家臣全員を皆殺しにしようとするアトラを、流石にシシは止める。止めなければ死ぬ。
「王、これは、カイドの意志です」
「違うな、わしが、カイドじゃ」
「違います。国が、民が、カイドです」
「それは、アイゼンの考え方だろうが」
「違います。世界共通です」
「たわけ」
突然シシが床に倒れこむ。というよりも押し付けられた。いつのまにかシシのまわりには薄黒い空間が発生しており、その空間内ではシシは自由に身動きができないようだった。
「潰すぞ」
ミシリ、と、シシの骨が軋んだ。それでも、シシは、潰れそうな気管から声を吐き出した。
「今こそ、世界を」
ドン。その言葉を最後に、恐ろしく短い、重低音は、アトラの正面、今の今までシシが存在した場所に、きれいな真円を描いた。【重力魔法】によって、何十倍もの負荷を受けた床が、きれいに抜けたのである。
「……たわけめ……」
ある程度怒りを排出したおかげか、アトラは元の冷静さを取り戻していた。家臣は既に屈強な精神力を持つ数名しか立っていなかったが、アトラは王として命じる。
「立っているもの、今すぐ宣戦布告を取り消す……」
「……王」
やっと丸く収まりそうなのに、穴から再び聞こえるのは、シシの声。
「世界を、救うのです」
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