夢。
【禁忌】、に手を伸ばした【彼】が、
急激に変化した黒塗りの物体に包まれた。
すぐさまアイゼンが【禁忌】を彼から剥がそうと、手を伸ばす。それを冷静に止めたのは銀。彼の目には、好奇心がまず真っ先に宿り、次にこの危機的状況把握を素早く済ませた冷徹な光が宿っていた。
「【彼】なら大丈夫だろう! それより今は!」
「……ああ!」
【彼】を助けようとして、走り出した私を、アイゼンが軽く片手でひょいと持ち上げた。そのままアイゼンと銀はダンジョンの出口へと疾走を始める。
「あいつなら大丈夫だ!」
そう言い切ったアイゼンだが、彼の表情には焦りと困惑しかない。黒い蠢きがダンジョンの壁を伝ってくる。それがだんだん近づいているということも、二人はもちろん理解していた。そして私も。
「ちょっとこの状態では強力な召喚は無理ですねぇ」
「わかっておるわ! 立ち止まるしかないが、開けた場所じゃないと分が悪い!」
言った直後、その開けた場所が視界に入る。
「しめた! 絶好の場所だ!」
「モンスター全滅させといてよかったねぇ、アイゼン」
すぐさまアイゼンは背負っていた大剣を抜き放ち、開けた場所から【禁忌】の追手を防ぐため、今来た道を一太刀で崩し、塞いだ。銀は開けた場所の中央に行き、巨大な召喚陣を既に展開させている。
「よし、自滅覚悟で呼びますよ! 【離別を呼ぶロノ……」
「――■▲○?」
銀の後ろには、黒塗りの、さらに黒塗りになった、【彼】がいた。
「――ウェ】!」
召喚陣から突然伸びでた、巨大な紫色の腕が、銀の後ろにいつのまにか立っていた、【彼】を捕えた。はずだった。
「■―−?」
一瞬で悪魔の手のひらの中から消えた彼は、いつのまにか銀の肩を後ろから掴んでいた。【彼】の表情は黒い物体に囲われ、黒い霧に囲われ、見えないはずなのに、何故かわかった。
【彼】は――笑っていた。
黒い物体が一瞬で銀の体を包み込む。
「――!」
銀の瞳はその時、自分が敗れる、その信じられない状況への驚愕へ染まった。そして銀の魂は、あの出会ったばかりの赤い髪の男を思い出していたのかもしれない。果ては親友となる――。
ベコリ。不気味な泡が破裂するような音と共に、完全に銀は黒い物体、または【禁忌】に包まれた。
同時にツーハンデッドソードを【彼】に対して振り下ろしていたのは、アイゼンである。
それを避けるのは、もちろん【彼】にとっては容易なことである。だが、【彼】はあえてそうしなかった。
右腕だけを、【彼】は掲げた。当然、アイゼンが全力で振り下ろす巨大な剣、ツーハンデッドソードの威力を受け止められるわけもなく、右腕はバラバラに砕け散ったが、
それでも彼は笑っていた。
「■○×???」
何を言っているのか、本能的な恐怖によって、その開けた場所の端でうずくまる私には、理解できない。
逆の【彼】の左腕が、アイゼンの顎を捕まえた。同時にアイゼンがツーハンデッドを横薙ぎし、【彼】の胴体を吹き飛ばした。それでも【彼】の胸から上は、アイゼンの顎を離さず、笑っていた。
【禁忌】が、【彼】の左腕を伝い、アイゼンを包んだ。銀と同じように。
ひたすら恐怖していた私は、その場から逃げようと決心する。尊敬していた【彼】らが、変わってしまったことに恐怖し、逃げようと決心する。しかし、四本の足が震えて動かない。いつのまにか目の前には、【彼】がいた。左腕と肩と頭だけになっても、体を包む【禁忌】が出血を止め、一部の臓器の役目を肩代わりしているらしい。
「……ア、 ……」
私が、やっと搾り出した声。というより思念。
「……ア……メツキ?」
黒い霧が解き放たれ、眠そうな表情に、虚ろな目をした青髪の青年――【彼】、アメツキが、目の前に現れた。いや、ついに明らかになったが正しいのか。
私は死を覚悟した。
【禁忌】、に手を伸ばした【彼】が、
急激に変化した黒塗りの物体に包まれた。
すぐさまアイゼンが【禁忌】を彼から剥がそうと、手を伸ばす。それを冷静に止めたのは銀。彼の目には、好奇心がまず真っ先に宿り、次にこの危機的状況把握を素早く済ませた冷徹な光が宿っていた。
「【彼】なら大丈夫だろう! それより今は!」
「……ああ!」
【彼】を助けようとして、走り出した私を、アイゼンが軽く片手でひょいと持ち上げた。そのままアイゼンと銀はダンジョンの出口へと疾走を始める。
「あいつなら大丈夫だ!」
そう言い切ったアイゼンだが、彼の表情には焦りと困惑しかない。黒い蠢きがダンジョンの壁を伝ってくる。それがだんだん近づいているということも、二人はもちろん理解していた。そして私も。
「ちょっとこの状態では強力な召喚は無理ですねぇ」
「わかっておるわ! 立ち止まるしかないが、開けた場所じゃないと分が悪い!」
言った直後、その開けた場所が視界に入る。
「しめた! 絶好の場所だ!」
「モンスター全滅させといてよかったねぇ、アイゼン」
すぐさまアイゼンは背負っていた大剣を抜き放ち、開けた場所から【禁忌】の追手を防ぐため、今来た道を一太刀で崩し、塞いだ。銀は開けた場所の中央に行き、巨大な召喚陣を既に展開させている。
「よし、自滅覚悟で呼びますよ! 【離別を呼ぶロノ……」
「――■▲○?」
銀の後ろには、黒塗りの、さらに黒塗りになった、【彼】がいた。
「――ウェ】!」
召喚陣から突然伸びでた、巨大な紫色の腕が、銀の後ろにいつのまにか立っていた、【彼】を捕えた。はずだった。
「■―−?」
一瞬で悪魔の手のひらの中から消えた彼は、いつのまにか銀の肩を後ろから掴んでいた。【彼】の表情は黒い物体に囲われ、黒い霧に囲われ、見えないはずなのに、何故かわかった。
【彼】は――笑っていた。
黒い物体が一瞬で銀の体を包み込む。
「――!」
銀の瞳はその時、自分が敗れる、その信じられない状況への驚愕へ染まった。そして銀の魂は、あの出会ったばかりの赤い髪の男を思い出していたのかもしれない。果ては親友となる――。
ベコリ。不気味な泡が破裂するような音と共に、完全に銀は黒い物体、または【禁忌】に包まれた。
同時にツーハンデッドソードを【彼】に対して振り下ろしていたのは、アイゼンである。
それを避けるのは、もちろん【彼】にとっては容易なことである。だが、【彼】はあえてそうしなかった。
右腕だけを、【彼】は掲げた。当然、アイゼンが全力で振り下ろす巨大な剣、ツーハンデッドソードの威力を受け止められるわけもなく、右腕はバラバラに砕け散ったが、
それでも彼は笑っていた。
「■○×???」
何を言っているのか、本能的な恐怖によって、その開けた場所の端でうずくまる私には、理解できない。
逆の【彼】の左腕が、アイゼンの顎を捕まえた。同時にアイゼンがツーハンデッドを横薙ぎし、【彼】の胴体を吹き飛ばした。それでも【彼】の胸から上は、アイゼンの顎を離さず、笑っていた。
【禁忌】が、【彼】の左腕を伝い、アイゼンを包んだ。銀と同じように。
ひたすら恐怖していた私は、その場から逃げようと決心する。尊敬していた【彼】らが、変わってしまったことに恐怖し、逃げようと決心する。しかし、四本の足が震えて動かない。いつのまにか目の前には、【彼】がいた。左腕と肩と頭だけになっても、体を包む【禁忌】が出血を止め、一部の臓器の役目を肩代わりしているらしい。
「……ア、 ……」
私が、やっと搾り出した声。というより思念。
「……ア……メツキ?」
黒い霧が解き放たれ、眠そうな表情に、虚ろな目をした青髪の青年――【彼】、アメツキが、目の前に現れた。いや、ついに明らかになったが正しいのか。
私は死を覚悟した。
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