二国の王となったシンリ。
二国の新たな首都となったのは、アレクサンドルだった。
その城のほぼ中央に位置する玉座で、
――何を思う?
死んだように、体を玉座に預け、
元々黒かった髪に、少し白髪が目立ちはじめていた。
生気のない目、色を失った唇。
まさに【真っ白】と化していくシンリ。
つまり、彼の疲れ方は、尋常ではなかった。
「――」
それを無言で見つめていたのは、唯一側にいることを許された、ライである。近頃は何の取り得も能力もないと、著しく増えたシンリ軍での権力者達に陰口を叩かれているが、誰も公には言わない。しかし、実はライは気づいている。彼も並ではない頭脳の持ち主なのだ。
「……」
そんなことよりも。彼には連日やつれていくシンリを見ているほうが辛かった。もはや白のローブとシンリの顔が見分けつかなくなるのも時間の問題だった。
――ということで。
アレクサンドルの城下町に、二人はいた。
「……どういうことでですか?」
シンリが聞くのも、無理はない。
「ええ、まあ、どうしてでしょうね」
ライがシンリを無理やり連れてきた理由も、わからない。
城の中は大騒ぎだろう。下手をしたら責任問題になるかもしれない。もはやかなり遠く感じてしまう、昔とは違うのだから。
「でも、シンリ様!」
「……はい?」
ライが力強く拳を握った。シンリは戸惑いながらも、返事をする。
「とりあえず忘れましょう!」
「……元々記憶喪失なんですが」
……まあその通りである。
「……とりあえず、今までのことをですよ!」
「む、無理ですよ。今、どこかで誰かが死んでいるかもしれないのに……」
そう言って、シンリは城へと戻ろうとする。ライはそれにしがみつく。
「だ、だ、ダメですー! このままだとシンリさんが死んでしまいます!」
見てくれはイナヅマ色の瞳と短髪を持つ、結構ワイルドでカッコよい部類に入るライが、人にしがみついて泣く様は結構人目を引いた。しかもしがみつかれている人物が、革命者、現国王と似ている時の人ならなおさらである。
「わ、わかった! とりあえず人目のつかないところに!」
「あ、ありがとうございます! しがみついて申し訳ありませんでした!」
ライがシンリに意見するのは、これが二度目であった。
-------------------------
とりあえず人気の無い喫茶店に、二人は入る。現国王と、実質そのNo.2軍師の二人がただの喫茶店でお茶するとは、何の冗談かと思うが、それをライは必要だと判断したのだ。
「――もう、やめませんか」
何の緩衝材もなく、無慈悲に、考えなしに、一撃で、ライはシンリを真っ二つにする言葉を放った。
「……」
始め、シンリはその言葉の意味を理解できなかった。いや、理解したくなかった。
「もう、無理なんて、国王なんて、世界を平和にするなんて、やめましょう」
今度は、ハッキリと、「やめる」。そう、ライは言った。
二国の新たな首都となったのは、アレクサンドルだった。
その城のほぼ中央に位置する玉座で、
――何を思う?
死んだように、体を玉座に預け、
元々黒かった髪に、少し白髪が目立ちはじめていた。
生気のない目、色を失った唇。
まさに【真っ白】と化していくシンリ。
つまり、彼の疲れ方は、尋常ではなかった。
「――」
それを無言で見つめていたのは、唯一側にいることを許された、ライである。近頃は何の取り得も能力もないと、著しく増えたシンリ軍での権力者達に陰口を叩かれているが、誰も公には言わない。しかし、実はライは気づいている。彼も並ではない頭脳の持ち主なのだ。
「……」
そんなことよりも。彼には連日やつれていくシンリを見ているほうが辛かった。もはや白のローブとシンリの顔が見分けつかなくなるのも時間の問題だった。
――ということで。
アレクサンドルの城下町に、二人はいた。
「……どういうことでですか?」
シンリが聞くのも、無理はない。
「ええ、まあ、どうしてでしょうね」
ライがシンリを無理やり連れてきた理由も、わからない。
城の中は大騒ぎだろう。下手をしたら責任問題になるかもしれない。もはやかなり遠く感じてしまう、昔とは違うのだから。
「でも、シンリ様!」
「……はい?」
ライが力強く拳を握った。シンリは戸惑いながらも、返事をする。
「とりあえず忘れましょう!」
「……元々記憶喪失なんですが」
……まあその通りである。
「……とりあえず、今までのことをですよ!」
「む、無理ですよ。今、どこかで誰かが死んでいるかもしれないのに……」
そう言って、シンリは城へと戻ろうとする。ライはそれにしがみつく。
「だ、だ、ダメですー! このままだとシンリさんが死んでしまいます!」
見てくれはイナヅマ色の瞳と短髪を持つ、結構ワイルドでカッコよい部類に入るライが、人にしがみついて泣く様は結構人目を引いた。しかもしがみつかれている人物が、革命者、現国王と似ている時の人ならなおさらである。
「わ、わかった! とりあえず人目のつかないところに!」
「あ、ありがとうございます! しがみついて申し訳ありませんでした!」
ライがシンリに意見するのは、これが二度目であった。
-------------------------
とりあえず人気の無い喫茶店に、二人は入る。現国王と、実質そのNo.2軍師の二人がただの喫茶店でお茶するとは、何の冗談かと思うが、それをライは必要だと判断したのだ。
「――もう、やめませんか」
何の緩衝材もなく、無慈悲に、考えなしに、一撃で、ライはシンリを真っ二つにする言葉を放った。
「……」
始め、シンリはその言葉の意味を理解できなかった。いや、理解したくなかった。
「もう、無理なんて、国王なんて、世界を平和にするなんて、やめましょう」
今度は、ハッキリと、「やめる」。そう、ライは言った。
コメント