「再充填! 急いで! そのための機構、工夫も施してあるはずでしょう!」

 爆発に包み込まれた7−1などには目もくれず、カナンは狂ったような表情で、シムシ兵達に命じた。元々魔導士達はカナン、エラシナの部下が多く、技術員達も非戦闘員ばかりだったので、7−1の爆殺を見た後、逆らうものは誰もいなかった。

 すぐにエネルギーの再充填が始まる。シャッターが再び下ろされ、砲身をズシンと揺らした。砲内の空気が抜かれ、大気中に開放される。その蒸気は何百度に達していたが、カナンは【防御魔法】で、その蒸気の中でも平然としている。
 アルル大渓谷から、ここ総司令部までは、直線距離にして2km程しか離れていない。全速力であの大群が走ってくるならば、遅くとも十分程で千名はたどり着いてしまうだろう。

「まだなのッ!? エラシナっ!?」

 そういえば、いつも傍にいたはずのエラシナが、何処にもいない。なぜにも、こんなにも、誰もが、私を裏切るのだ! その想いだけでカナンの中は充満していく。

「ここにいますよ、カナン様」

「エラシナッ!? いままで一体何処に……」

 カナンが振り向くと、蒸気で全身を焼かれたエラシナが立っていた。皮膚が焼け爛れ、髪の毛が肌ごと抜け落ち、真っ赤に血走った目をカナンに向けた。

「カナン様が、来いとおっしゃったので――」

 肉の焼ける匂い、肌が人の脂でベタつくのがわかった。防御魔法を突き破って、全身こんがりとしたエラシナが、カナンの頬を触った。

 べしゃり。血と膿で覆われた手の、湿った感触と音を聞いて、

 カナンは――。

「――××××――!!」

 声にならない声をあげた。

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