59.6、進む

2008年6月4日 Live2
 7−6は特に無口なわけではなかった。

 ただ、言いたいことを兄達が言ってくれていただけだった。

 そんな兄達はもういないのだ。

 だから。

「全軍!」

 かつては、7の端くれ。もう1になってしまったが。屈した膝が真っ直ぐになるのは早かった。

「あの青き光を見たか!」

 これからは、自分自身で進まなければならない。

「あの、7のバリア【守り】を見たか!」

 これからは、自分が声を出さなければならない。

「そして、かつてのアイゼン様の心を、     見たか!

 千名が、吼える。 応 と。答える。

「この戦争に、意味などない! 我々は、我々の国を取り戻し、真の平和を手に入れるしかない! 自分の軍に向けて、砲を撃つ王など、王ではない!」

 一年分以上の言葉を、7−6は吐く。喉がかれようとしていても。

「全軍! 進むぞ! 目指すは裏切り者、【法王】カナンの首だ!」

 「「「おおおお!」」」 千名が衆の方向からぐるりと180度方向転換し、シムシ総司令部のある陣地へと向かって一斉に進みだした。千名が各々怒りを露にし、全力で走り、民族大移動を始めた。

 それを見てシンリが、何事か叫ぼうとしたが、ライに止められた。シンリの行為をここで初めて止めたライは、静かに首を横に振った。

「俺達も総司令部に向かって、少しでも双方の被害を少なくしましょう。今できるのはそれしかありません」

 ライが静かに言うと、シンリも悟ったのか、すぐに待機させていた自分の軍を呼び寄せる。

 だが、到底間に合わないだろう。

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