『照準』を合わせ、『充填』し、『発射』する。

 たったの三動作である、がしかし、これだけの質量となると、その動作一つ一つに莫大なエネルギーが必要とされる。『照準』、『充填』はまだいい。持続してエネルギーを与え続ければ良いだけなのだから。
 ――しかし、最後に訪れる、この『発射』には、瞬間的にすさまじい量のエネルギーが必要とされる。
 五メートルを超える直径の砲身と、数百人分の魔力が詰まった巨大なエネルギータンクとを遮る巨大な『壁』は、厚さ約三メートル、機械的な材質強度、幾重にも張られた魔力的なコーティング、通算的には世界で最強の『壁』となっていた。
 もちろん、それを瞬間的に『開ける』という行為には、それなりのエネルギーと、【覚悟】が必要とされる。機械的な機構では、自重の問題によってある程度限界があった。魔力コーティングによって軽量化をはかろうともしたが、それに反比例して強度に問題が出る。

 ならば、どうするか?

 壁は強度の問題上、シャッターのような作りになっていた。しかし、内部からの圧力と自重によって、そう簡単には開かないようになっていた。今も電力とシムシの科学の結晶であるモーターが最大出力でシャッターをあげようとしているが、ビクともしない。機械的な機構はあくまでこのバケモノ砲台にとっては補助であり、メインは――。

「【全魔法行使】」

 カナンが薄く眼を開けて、呟いた。

「【座標指定】」

 巨大な砲台に手を添え、あらかじめ確認していた壁の位置を包囲。

「【重力魔法】」
「【防御魔法】」
「【水魔法】」
「【氷魔法】」
「【風魔法】」
「【雷魔法】」
「【破壊魔法】」

 カナンは、それらを同時に呟いた。どうやってかは知らない。

「【発動】」

 閃光が、世界を包む。

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