52.7、撤退

2008年5月27日 Live2
 もはや遅い。

 『戦争に意味はない』

 ならばこの場にいる、意味はない。

 それを千がゆっくりと理解していくまで、それほど時間はいらなかった。

「……すごい」

 『一人でシムシを止める、きっとわかってくれる』、信じて疑ってはいなかったが、やはり、すごい。並の人間にはできない芸当である。それを再確認したのは、シンリ軍幹部の、リペノやポチ達である。
 ライは最初からシンリが凄まじいことはわかっていた。ことが終わると、すぐさまシンリの元に駆ける。

 逆に7−2は、これは敗北であるということさえ、認識することができなかった。7−6も魔法媒体の魔力が尽きたことにより、状態異常解除魔法の再発動は不可能。

 戦争に、意味がなくなった。

 ここで、シンリの能力が大規模な洗脳だとわかったところで、それがどうしたというのだろう。もはや争う意味さえなくなった。

「全軍、撤退!」

 今、確実にわかっていたそれだけを、7−2は叫んだ。

 7−4も、7−6もそれに従い、歩き出す。アイゼン様の理想の世界は、魔導による完璧な世界は、どうやらこの方法では無理なようだ。

 同時に、7−2の懐でコールが鳴り響いた。

 ――法王、カナンからの。

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