49.衆、シムシ

2008年5月22日 Live2
“GM緊急告知! まことに申し訳ありませんが、Live世界はただいまよりしばらくの間、ログインができなくなります。Liveよりログアウトか、死亡をいたしますと、しばらくの間Liveへは戻れませんので、ご注意ください。以上です”

「――シムシが衆に宣戦布告した、このタイミングで?」

「できすぎです。明らかにプレイヤー人口を減らしにかかっています」

(……ああ、でも私は納得している。なぜだろう)

 衆の長の間にて。ライ、ポチ、ザクロ、リペノ、走電など、そうそうたるメンバーが集まり、シムシへの宣戦布告に対する会議を開いている最中に、その全世界テレパシーは届いた。
 長の間は一瞬、どよめきが走ったが、さすがにそれぞれの分野の隊長格である。すぐに落ち着きは取り戻した。

(まあ、はじめから隊長格にはログアウトを頻繁に行うプレイヤーはいなかったし、死んだら死んだで一週間はLiveに帰れない。状況はあまり変わっていない。

 ――私なんて、何故かログアウトさえできないのだから)

 自分が記憶を失っていたことさえ、この頃は忘れていたシンリであった。

「……さて、今のテレパシーは後回しにして、シムシへの対応ですが……」

「戦争する気ですか?」
「リペノ!」

 シンリの言葉を遮るようにして、立ち上がったのはリペノだった。ポチがそれを制そうとする。

「いいです、ポチさん。答えましょう、リペノさん」

 シンリの漆黒の瞳が、リペノを正面から捉える。それを右目だけで受け止めるリペノ、一歩も引かない。

「結論から言えば、私はシムシと戦争をしません」

「そんな言葉だけで!」

 リペノが叫ぶ。ポチもいよいよ、立ち上がった。

「『戦争はしません』。リペノさん、ポチさん、座ってください」

 二重低音となった声が、リペノの、長の間にいた全員の耳の中に入り込み、脳へと進入する。

(シムシと戦争はしない)

 カリスマ:Aには、リペノも納得せざるを得ない。力が抜けたようにリペノは座った。

 しかし、不安や疑問は、当然ある。

「……言いたくはないんだが」

 走電がおずおずと手を上げた。

「それでどうするんだ?」

 シンリは眼を伏せ、しばらく沈黙した。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索