46.周、こころ

2008年5月20日 Live2
 その後はもちろん、シンリがチョコを仕切り、自然衆を仕切っていく形になった。衆始まって以来の、長交代が、よどみなく、素早く行われていった。
 すでにシンリ軍は、内乱で暴れる賊をいくつか討伐し、衆での知名度をある程度得ていた。そして誰もが内乱で疲れていた状況で、立ち上がり、内乱に対して何も打開策をうち出さなかった現体制を打倒したという功績は大きい。
 一ヶ月もしないうちに一国の長となったシンリは、無名から有名へ、他に比べれば一瞬ともいえるスピードで出世を果たした。

 しかしシンリは考えることを止めない。止められない。

(これで、【周派】は消えたといってもいい。だが、【銀派】は?
 元々この内乱は、変革を望む【銀派】と、継続を望む【周派】との対立で起こったものだ。いつまでもシムシに対抗せず、のうのうと暮らす、過ごす、臆病な現長:周に反乱した銀とそれに同調する者達との戦い……ということらしいが)

「不自然なことが、多すぎます」

「……そうだな、ライ」

 チョコ、長の間で、シンリの横にいるのは、ライのみだった。

「まず、明らかに非があるのは裏切り者の銀です。というか、衆では基本的に裏切りは死罪です。お国柄、といいましょうか、銀は絶対に許されません。それなのに、この内乱が成り立ってしまっている。銀と同調する者がいる」

「その同調者は明らかに衆内部のプレイヤーではない」

「はい、シンリさん。それに周さんの行動も不可解です。内乱に対して有効な策を出せず、首都チョコは移動ばかりを繰り返して何もできていない。逃げの一手です。【未来視】の能力よりも、衆の長、周さんはその統率力で衆の頂点に君臨していたといってもいいです。ですが」

「何もできない。となれば」

「何らかの外因が働いたと思われます」

「あるいは圧力」

「あるいは脅し」

 二人の声が重なっていく。

「「周さんの場合、よほど大切な、『人』」」

 たとえば裏切られたとしても、親友が殺されると聞けば、その人はどうするのだろうか?
 まさかとは、思った。だが、否定しきることも、できなかった。

(非情だが、すべて終わったこと――か)

 スイッチを切り替える。過去の推察は終わった。あとは過去から、未来に何を得るかだ。

「ライ、ずっと何も言わずついてきた君に、感謝をする」

「いえ、シンリ様」

「シンリでいい」

「……でも」

「――頼む。
 私を、――これから……、助けてくれ」

「……はい、シンリ」

 イナヅマ色の瞳を少し潤ませ、ライは力強く頷いた。

 シムシ宣戦布告の報が届いたのは、その直後のことであった。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索