衆の中心、首都であるといえる、チョコでは。

「周さんの決意を無駄にする気はありません。かといって、シンリさん、貴方に仕えることもできない」

「……そうですか」

 シンリとヒラタが、対面していた。

「他の周さんの仲間達も、同じ意見です。許されないというなら私達は潔く殺されます」

「……わかりました。それぞれの意思を尊重します」

 シンリは、周が死んだ後のチョコを、占領はしたが、踏みにじるようなことはしなかった。周の仲間達を手厚く迎え、その意思を尊重して自由にした。
 もちろん、周を殺した、と憤るものもいたが、それはヒラタと空羅が説得し、抑えた。なんにせよ、シンリ軍はそれでほぼ満足したと言えるし、周軍とシンリ軍の衝突はなかったに等しかったのだ。

 周とシンリの望みどおりに、ことは進んだ。

 シンリはそのことを周と画策、工作していたことを、ヒラタ達には話さなかった。話して協力を得ようと思うのは卑怯なことであり、自分を正当化するようなものだと、シンリは思っている。

 周の仲間達はそれぞれ、自分の集落へ戻ったり、チョコに残ってシンリ軍の動向を見極めようとしたり、そのままシンリ軍に入ってしまったりした。やはり人はさまざまである。

 そんな人を大量に見てきて、シンリは思った。

 ――人は、多いなあ。

 シンリにとって、人は人でしかない。シンリ達は行軍の中で、モンスターや動物を殺すことは一切しなかった。シンリが許さなかったからだ。
 なぜか? シンリにとっては、人も、モンスターも、等しくLive世界を保っている重要な「モノ」であるから。等しく愛すべき大切なLive世界の一部なのだ。

 シンリのLiveに対する愛は、等しく、深い。

 ヒラタは最後に、周軍として敵対したプレイヤー達を一人も咎めないシンリに対して、言った。

「……内乱を止めてくれたのが、貴方で良かった」

 その一言だけで、シンリは、いくらか救われた気分がした。気分だけということには、違いないのだが、それはシンリに涙を一粒、流させた。

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