そこでシンリは、目を覚ました。
シンリは薄暗いテントの中で、荒くなった息を整え、そして自分の胸に触った。
――自分だ。
なぜかそのことが、無性にうれしくて仕方がなかった。
その小さなテントの中には、シンリが一人だけ。何もない。シンリが一人だけ。
護衛に24時間つくと、ポチは言って聞かなかったが、シンリは許さなかった。自分(シンリ)を守るくらいなら、自分(ポチ)を守ってほしかったからだ。
――さあ、準備はよいか?
違う自分から、問いがきた。今の自分は、どう答えるのだろう。
――いや、
答えるまでも、 ない、 か。
白と黒のリバーシブルローブ。その白側を衆の灼熱の太陽の下にさらした。
同時に、絶大な歓声。
数百を超える衆の民が、シンリを称え、迎えた。
「「「シンリ、シンリ、シンリ!」」」
数百の声が重なり、その重低音が砂漠の砂を震えさせ、シンリの耳朶をうつ。
数百の命をその背中に乗せて、潰されそうなシンリを支えることができるプレイヤーは今、一人もいない。
ザクロも、ポチも、ジョーカー仮面も、リペノも、ステラの戦士も、それぞれ役職を与え、責任を与えて、自分から離した。
「……」
それでよかった。たとえ、それが、逃げているということだとしても。
「「「シンリ、シンリ、シンリ!」」」
砂漠全体を覆いつくすほどの数のプレイヤー達の声は、鳴り止まない。人海戦術でつきとめたチョコの集落までは、今日中にたどり着くだろう。
そのとき、どうなるのかは、相手次第である。
「シンリ様」
役職も、責任も捨て、夜も寝ずにテントの外で見張っていたのは、ライだった。
「……」
シンリは答えず、前に一歩出た。歓声が静まる。
「進め」
シンリは静かに言った。静かな声なのに、一瞬で集団に浸透し、その軍は進行、あるいは侵攻をはじめた。
シンリは、一人だった。
シンリは薄暗いテントの中で、荒くなった息を整え、そして自分の胸に触った。
――自分だ。
なぜかそのことが、無性にうれしくて仕方がなかった。
その小さなテントの中には、シンリが一人だけ。何もない。シンリが一人だけ。
護衛に24時間つくと、ポチは言って聞かなかったが、シンリは許さなかった。自分(シンリ)を守るくらいなら、自分(ポチ)を守ってほしかったからだ。
――さあ、準備はよいか?
違う自分から、問いがきた。今の自分は、どう答えるのだろう。
――いや、
答えるまでも、 ない、 か。
白と黒のリバーシブルローブ。その白側を衆の灼熱の太陽の下にさらした。
同時に、絶大な歓声。
数百を超える衆の民が、シンリを称え、迎えた。
「「「シンリ、シンリ、シンリ!」」」
数百の声が重なり、その重低音が砂漠の砂を震えさせ、シンリの耳朶をうつ。
数百の命をその背中に乗せて、潰されそうなシンリを支えることができるプレイヤーは今、一人もいない。
ザクロも、ポチも、ジョーカー仮面も、リペノも、ステラの戦士も、それぞれ役職を与え、責任を与えて、自分から離した。
「……」
それでよかった。たとえ、それが、逃げているということだとしても。
「「「シンリ、シンリ、シンリ!」」」
砂漠全体を覆いつくすほどの数のプレイヤー達の声は、鳴り止まない。人海戦術でつきとめたチョコの集落までは、今日中にたどり着くだろう。
そのとき、どうなるのかは、相手次第である。
「シンリ様」
役職も、責任も捨て、夜も寝ずにテントの外で見張っていたのは、ライだった。
「……」
シンリは答えず、前に一歩出た。歓声が静まる。
「進め」
シンリは静かに言った。静かな声なのに、一瞬で集団に浸透し、その軍は進行、あるいは侵攻をはじめた。
シンリは、一人だった。
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