――夢の始まり――。
凶悪さ、禍々しさ、気持ち悪さ、どれをとっても一級品のダンジョンの奥底で、三人が見つけたのは、黒々としたただの玉だった。人間の拳ぐらいの大きさの黒玉は、三人が持つ松明の光さえ反射せず、無限の闇をその表面に湛えて、宙に浮いていた。
「こレが【禁忌】……?」
黒塗りの人物が、とりやすい高さにあるその玉を取ろうと、手を伸ばした。
「……待て!」
それを突然アイゼンが、大声で制した。何事かとアイゼンにパーティの視線が集まる。アイゼンは自分でも驚いたようで、言葉を探している様子だった。
「……悪い予感がする、としか言いようがない。やはり、GMから聞き出したバグの塊のアイテムなんかに、手をだすべきでは……」
アイゼンは自分でも、今それは言うべきことではないとわかっていた。だが、言ってしまった。何かが言わせたのだ。
しかし。
「何を言ってるのさ、市超。いや、【鉄壁】のアイゼンと呼んだほうがいいのかな? 今、カイドは賢者の石を持っているんだよ? 衆、シムシなんかの弱小国も、そんな強力な武器が「今」必要なのさ。
――せっかく、■▲■が情報を持ってきてくれたんだから」
銀がアイゼンを諭す。■▲■は、おそらく黒塗りの名前だろう。
「――君の国の民のためにも、ね?」
「民」。その単語が出てしまっては、アイゼンは何もいえない。銀ははじめから、知識の探求と、周のこと、そして好奇心を満たすことしか考えていない。
なら、黒塗りの人は何を考えているんだろう?
それを一番わかっていたのは、自分だと思っていた。
今は【彼】のことを理解できていなかった。
黒塗りの人物が、【禁忌】へと手を伸ばす――。
凶悪さ、禍々しさ、気持ち悪さ、どれをとっても一級品のダンジョンの奥底で、三人が見つけたのは、黒々としたただの玉だった。人間の拳ぐらいの大きさの黒玉は、三人が持つ松明の光さえ反射せず、無限の闇をその表面に湛えて、宙に浮いていた。
「こレが【禁忌】……?」
黒塗りの人物が、とりやすい高さにあるその玉を取ろうと、手を伸ばした。
「……待て!」
それを突然アイゼンが、大声で制した。何事かとアイゼンにパーティの視線が集まる。アイゼンは自分でも驚いたようで、言葉を探している様子だった。
「……悪い予感がする、としか言いようがない。やはり、GMから聞き出したバグの塊のアイテムなんかに、手をだすべきでは……」
アイゼンは自分でも、今それは言うべきことではないとわかっていた。だが、言ってしまった。何かが言わせたのだ。
しかし。
「何を言ってるのさ、市超。いや、【鉄壁】のアイゼンと呼んだほうがいいのかな? 今、カイドは賢者の石を持っているんだよ? 衆、シムシなんかの弱小国も、そんな強力な武器が「今」必要なのさ。
――せっかく、■▲■が情報を持ってきてくれたんだから」
銀がアイゼンを諭す。■▲■は、おそらく黒塗りの名前だろう。
「――君の国の民のためにも、ね?」
「民」。その単語が出てしまっては、アイゼンは何もいえない。銀ははじめから、知識の探求と、周のこと、そして好奇心を満たすことしか考えていない。
なら、黒塗りの人は何を考えているんだろう?
それを一番わかっていたのは、自分だと思っていた。
今は【彼】のことを理解できていなかった。
黒塗りの人物が、【禁忌】へと手を伸ばす――。
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