「あんたが【救世】のアレックスだな?」

 ある昼下がりのプロで、アレックスとNETはロッカク堂にて暇を潰していた。そんな気が緩みまくりの空気に割り込んだのは、いかにも理由あり気な二人組みである。少し背の高めの男と、ロングの紫色の髪が暗闇で映える、いかにも魔女な女。アレックスの顔がさっと「面倒そう」な顔に変わり、NETの顔がさっと「面白そう」な顔に変わる。

「? いや違いますよ」

 表情を変えず、アレックスはしれっと答えた。

「アレックス、その嘘は意味ないぞ。ネーム見えてるから。あと微妙に顔を背けると余計怪しいから」

 すかさずNETがフォローする。

「なんでそういうこと言うんですか! もしかしたらそのまま気付かず帰ってくれるかもしれないでしょ!」

 もちろん激昂アレックス。いつものパターンである。

「いや、アンタは99.9%、【救世のアレックス】だ」

 少し背の高めの男が、言った少し違和感のある言葉。

「……」
「……おお、珍しいな、【解析】か」

 元元老、NETは「ますます面白く」、【神速】のアレックスは「ますます面倒だ」、といったような表情に変化した。

 ----------------------

 四人は喫茶店でもないのに普通においてあるテーブル席に座り、喫茶店でもないのに普通においしいコーヒーを店主シンカに頼み、さあこれからどうしようといった空気になった。
 店主なのに全く客を敬う気配を見せずコーヒーを雑に置いたシンカは、さっさとカウンターに戻って新聞を読み始めた。

「あなたたちなら、気付いていると思って」

 そら来た。アレックスはすっかり毒され、昔のまじめさ、ピュアさをすっかり失い、いかに『楽』に生きるか、『ストレス』に悩まされず生きるかをいつも考えるようになっていた。これはいつもNETが側にいる成果である。「あなたたちなら、気付いていると思って」と言ったのは、背の高い方の男である。このような言葉が出だしでは、

「『世界に崩壊が近づいている』ことに」

 ほらぁ。思わず手で顔を覆い隠し、空を仰ごうとしたアレックス。NETの目はますます輝きだしている。アレックスに悪夢が訪れようとしていた。

「俺はアサト。こっちは魔女」
「ヘレナ。本当に、あなたは失礼ね。お二方も馬鹿ではないのだから、ネーム確認すれば自己紹介なんて不要でしょう。
 久しぶりにカイドの森を出て、プロくんだりまで来たかと思えば、なんでこんなことをしてるんだか……。私は賢者の石が手に入ればそれでいいのに……」

 口を開いた冷たそうな魔女は、まだ文句を言いたいらしかったが、

「世界を救いたいって、わけじゃないんだ。だけど、俺はまだこの世界を見て、視て、観て、診て、【解析】し尽くしていない。それで終わるのが嫌なんだ」

 アサトが言葉を紡いだ。

 それは、世界を救いたいということなんですよ。アレックスは優しく諭そうとした。が

「ああ、その通りだ。このまま終わらせてはいけない」

 NETに容易く阻まれた。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索