――目を開けてシンリがまず行ったのは、自分の確認だった。

 自分は何者か。 わからない。

 何がしたいのか。 わからない。

 何を求めているのか。 わからない。

 テントから外に出る。シンリは考える。

 それぞれ、生きている、三十八名を見て。

 ……。

 シンリが抱いた、ただひとつ確かなものは、

 これ以上壊させない

 そのための力が、必要であること。

「――ライ」

「――はっ」

 自然と、敬語は消えていた。情報を伝達する上で必要がなかったからだ。余計な言葉は、余裕のあるときにつけたせばいい。

「三十分後に出発する。準備を頼む」

「……はい」

 ライは何名かと共に、跡形がかろうじて残った集落に使えるものを使えるだけ探しに行く。

「ポチ、訓練を」

「――はい」

 今すぐに? という言葉と疑問をポチは飲み込んだ。有無を言わせぬ雰囲気。――そして眼だった。

「――ザクロ」

「……はい?」

 最後にしよう。余計は、これが最後にしよう。シンリは自分に誓った。命にかけて誓った。

「今の私は、どうだろう?」

 

 

 

 

 

 ザクロは、一言だけ。

「――少し、悲しいです」

 ――でも、必要かもしれないです。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索