33.心理、心裏

2008年4月27日 Live2
 圧倒的な力には、圧倒的な力を。

 まさしくそのままに。

 大津波に飲み込まれた砂とサーストは、その場から何百メートルも押し流された。全身の包帯が濡れ、湿った砂の上を何メートルも転がって、サーストはようやく止まった。全身の包帯は水と砂で汚れてしまった。

 サーストの右目が、みるみる血走っていく。

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 津波の後の静けさの中に、生き残ったものたちは佇んでいた。
 片手を津波が発生した空間に掲げたまま、謎の少年(青年?)は、口の端を少しつりあげて不敵に笑っていた。

「危ない、危ない」

 そしてわざとらしく、片手で額の汗をぬぐうポーズ。

「ここで死なれちゃ、困るもんね!」

 シンリを見て、にっこり!

「それじゃ!」

 名前確認する間もなく、その少年は、去った。
 シンリは、ザクロは、ライは、呆然としていた。

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「――生き残ったのは、三十八名です」

 族長のテントに、その集落の全プレイヤーが集結していた。逆に言えば、一つのテントに入りきる人数が、今の現実の数である。

「襲ってきたのは【砂漠】のサーストで間違いないでしょう。――そして少年のほうですが……、結局は誰もネーム確認をしておらず、詳細はわかりません。【全魔法行使】を使用した、という情報もありますが……間違いないでしょうか?」

 一人立ち上がって、淡々と情報の整理をしていくライ。幾名かが意見を述べ、また次の情報整理に移る。

「次に今後の私達の方針と、集落の皆さんの方針についてですが……」

 一人、テントの隅、闇の中で、シンリはただ考えていた。

「この人数では集落の維持は――」

 ライの言葉に、ノイズが入っていく。シンリの心理はある一点に向かって収束する。

「――難シく、だ―らこそ――」

 まばたきを、呼吸を忘れ。

「――、――」

 ただ、 がいル。

 シンリの両目から、血の涙が一筋だけ。

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