「……なんだ、これは」

 アサトがチャットルームに戻り、見つけたのは、数十本にも及ぶ様々な武具の山だった。巨大な鎖付き鉄球や、しゃれこうべが先端にある禍々しい杖、見た目には何の変哲も無い剣、弓、槍、ナイフなどありとあらゆる武具がそこにあり、そしてまるで捨てられていた。
 すぐさまアサトは【解析】を開始する。【解析】とは対象の行動や言動、外見などから、性質を見抜くスキルである。ただし、発動すれば、通常の観察時、思考時とは比べ物にならないくらい疲れる。
 【解析】完了。恐るべき結果がでた。

 これらは全て、『元』禁忌の武具だ。

「アサトくん」

 突然背中、それも間近で声をかけられ、またもアサトは理解不能を感じる。後ろに立つのは、実質のキルタイム設立者、アメツキだった。

「君が一本も【禁忌の武具】を持ってこれなかったことについては、誰も責めたりしない、と思う。少なくとも俺はしない。別にキルタイムは面倒な労働を強いる集まりではないからね。

 抜けたくなったら、いつでも抜けていいし」

 アサトは、背後に居るアメツキの声だけで、【解析】をしてみた。おそらく、最初は本当。最後は『嘘』だ。

「それに、既に終わってたからね、武具集めは。ここからがキルタイムの本番だよ。アサトくんも存分に楽しむようにね」

 くくく、と忍び笑いを残して、アメツキは気配を消そうとしていた。

「待て」

 反射的に、アサトは声を出した。

「賢者の石は、どこだ?」

 アメツキはその言葉に、少し驚いたようだが、すぐさま口元を楽しそうに歪めた。

「へえ、君が賢者の石を求めているということを、俺が知っているということを、知っていたんだ?」

「ああ、アンタはそれが楽しそうだったから、俺に声をかけたんだろ?」

「ははは、ある程度はお見通しというわけか。流石は【解析】持ちだな」

 アサトは大きな心臓の音を一回、聞いた気がした。アサトは情報の重要性をよく知っている。だから、ほとんどのプレイヤーが知らないはずの、隠しスキル【解析】について、それをアサトが所持していることについて、もう看破されているならば、それは一大事なのである。

「構えるなよ。ちゃんと教えてやるから。今現在、もちろんアレは、銀が持っている。俺はお前みたいな奴が、アレを何に使うのか、非常に楽しみだ。別にほかのことはいいから、その期待だけには応えてくれよ。アサトくん」

 たっぷりの余裕を残して、アメツキは消えた。なるほど、確かに俺はアメツキのキルタイムの一員だな、と認めざるを得ない会話だった。

 アサトは、人の下にいるのが嫌いだった。プライドが高かった。負けるのが嫌いだった。

 冷静に考える。【解析】などしなくても、わかっていたことだが、やはり、何かに負けた気がする――が、当初の予定通り、考え通り。

 まずは賢者の石を獲得しなければ。

コメント

痺れ武蔵
痺れ武蔵
2008年1月25日11:56

なんか俺が書くよりアサトがかっこいい件

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