21.アサト、アメツキ
2008年1月24日 Live2 コメント (1)「……なんだ、これは」
アサトがチャットルームに戻り、見つけたのは、数十本にも及ぶ様々な武具の山だった。巨大な鎖付き鉄球や、しゃれこうべが先端にある禍々しい杖、見た目には何の変哲も無い剣、弓、槍、ナイフなどありとあらゆる武具がそこにあり、そしてまるで捨てられていた。
すぐさまアサトは【解析】を開始する。【解析】とは対象の行動や言動、外見などから、性質を見抜くスキルである。ただし、発動すれば、通常の観察時、思考時とは比べ物にならないくらい疲れる。
【解析】完了。恐るべき結果がでた。
これらは全て、『元』禁忌の武具だ。
「アサトくん」
突然背中、それも間近で声をかけられ、またもアサトは理解不能を感じる。後ろに立つのは、実質のキルタイム設立者、アメツキだった。
「君が一本も【禁忌の武具】を持ってこれなかったことについては、誰も責めたりしない、と思う。少なくとも俺はしない。別にキルタイムは面倒な労働を強いる集まりではないからね。
抜けたくなったら、いつでも抜けていいし」
アサトは、背後に居るアメツキの声だけで、【解析】をしてみた。おそらく、最初は本当。最後は『嘘』だ。
「それに、既に終わってたからね、武具集めは。ここからがキルタイムの本番だよ。アサトくんも存分に楽しむようにね」
くくく、と忍び笑いを残して、アメツキは気配を消そうとしていた。
「待て」
反射的に、アサトは声を出した。
「賢者の石は、どこだ?」
アメツキはその言葉に、少し驚いたようだが、すぐさま口元を楽しそうに歪めた。
「へえ、君が賢者の石を求めているということを、俺が知っているということを、知っていたんだ?」
「ああ、アンタはそれが楽しそうだったから、俺に声をかけたんだろ?」
「ははは、ある程度はお見通しというわけか。流石は【解析】持ちだな」
アサトは大きな心臓の音を一回、聞いた気がした。アサトは情報の重要性をよく知っている。だから、ほとんどのプレイヤーが知らないはずの、隠しスキル【解析】について、それをアサトが所持していることについて、もう看破されているならば、それは一大事なのである。
「構えるなよ。ちゃんと教えてやるから。今現在、もちろんアレは、銀が持っている。俺はお前みたいな奴が、アレを何に使うのか、非常に楽しみだ。別にほかのことはいいから、その期待だけには応えてくれよ。アサトくん」
たっぷりの余裕を残して、アメツキは消えた。なるほど、確かに俺はアメツキのキルタイムの一員だな、と認めざるを得ない会話だった。
アサトは、人の下にいるのが嫌いだった。プライドが高かった。負けるのが嫌いだった。
冷静に考える。【解析】などしなくても、わかっていたことだが、やはり、何かに負けた気がする――が、当初の予定通り、考え通り。
まずは賢者の石を獲得しなければ。
アサトがチャットルームに戻り、見つけたのは、数十本にも及ぶ様々な武具の山だった。巨大な鎖付き鉄球や、しゃれこうべが先端にある禍々しい杖、見た目には何の変哲も無い剣、弓、槍、ナイフなどありとあらゆる武具がそこにあり、そしてまるで捨てられていた。
すぐさまアサトは【解析】を開始する。【解析】とは対象の行動や言動、外見などから、性質を見抜くスキルである。ただし、発動すれば、通常の観察時、思考時とは比べ物にならないくらい疲れる。
【解析】完了。恐るべき結果がでた。
これらは全て、『元』禁忌の武具だ。
「アサトくん」
突然背中、それも間近で声をかけられ、またもアサトは理解不能を感じる。後ろに立つのは、実質のキルタイム設立者、アメツキだった。
「君が一本も【禁忌の武具】を持ってこれなかったことについては、誰も責めたりしない、と思う。少なくとも俺はしない。別にキルタイムは面倒な労働を強いる集まりではないからね。
抜けたくなったら、いつでも抜けていいし」
アサトは、背後に居るアメツキの声だけで、【解析】をしてみた。おそらく、最初は本当。最後は『嘘』だ。
「それに、既に終わってたからね、武具集めは。ここからがキルタイムの本番だよ。アサトくんも存分に楽しむようにね」
くくく、と忍び笑いを残して、アメツキは気配を消そうとしていた。
「待て」
反射的に、アサトは声を出した。
「賢者の石は、どこだ?」
アメツキはその言葉に、少し驚いたようだが、すぐさま口元を楽しそうに歪めた。
「へえ、君が賢者の石を求めているということを、俺が知っているということを、知っていたんだ?」
「ああ、アンタはそれが楽しそうだったから、俺に声をかけたんだろ?」
「ははは、ある程度はお見通しというわけか。流石は【解析】持ちだな」
アサトは大きな心臓の音を一回、聞いた気がした。アサトは情報の重要性をよく知っている。だから、ほとんどのプレイヤーが知らないはずの、隠しスキル【解析】について、それをアサトが所持していることについて、もう看破されているならば、それは一大事なのである。
「構えるなよ。ちゃんと教えてやるから。今現在、もちろんアレは、銀が持っている。俺はお前みたいな奴が、アレを何に使うのか、非常に楽しみだ。別にほかのことはいいから、その期待だけには応えてくれよ。アサトくん」
たっぷりの余裕を残して、アメツキは消えた。なるほど、確かに俺はアメツキのキルタイムの一員だな、と認めざるを得ない会話だった。
アサトは、人の下にいるのが嫌いだった。プライドが高かった。負けるのが嫌いだった。
冷静に考える。【解析】などしなくても、わかっていたことだが、やはり、何かに負けた気がする――が、当初の予定通り、考え通り。
まずは賢者の石を獲得しなければ。
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