「聞きたいようならいいます。言い訳にすぎませんが、いわせていただきます。実は俺たちは元々、ある集落の民だったんです」

 シンリは腕を組んで、語りだした男の話を聞きだした。ポチとリペノは既に、テント等の片付けや死傷者数の確認の作業に入っていた。シンリ達の会話を聞いていてもしょうがないし、このまま二名を観察していても、何か理解できるようになるとは到底思えなかったからである。

「そして俺たちの集落は、衆の長である族長、『周』派寄りでした。……貴方は衆のプレイヤーじゃないようですけど、今の衆の状況は知っていますよね?」

 確かにシンリは、真っ白いローブを着ていて、一目見るとザクロと同じカイドのプレイヤーに見えた。衆の国に最もふさわしくない格好である。シンリはすぐに賊の問いに答えた。

「いえ、知りません。ちょっと前に周の補佐を務めていた銀が何故か無二の親友であったはずの周を裏切り、銀派として三大国『衆』に対し、反乱を起こした。今現在、衆は国を守る、現政府側『周派』と、新しい国にする、革命側『銀派』の二つの派に別れ、内戦が泥沼状態だということぐらいしか……」

「知っているようなので、話を続けさせてもらいますね。それで俺達の集落は、『銀派』に焼かれました。何の通告もなかったので、俺達は無抵抗のまま故郷を失いました。だから、生きるために、他の集落を襲って収入を得るという安易で下劣な方法に走り、故郷を失った悲しみ、ストレスから、先ほどまでのような暴虐なことをしてしまいました。謝っても、謝りきれません。死んでも、何の詫びにもなりません」

 土下座したまま、男は顔をあげずに喋り続けた。

「――えぐっ」

 シンリは、泣いていた。

「わ、私も、記憶を失ったから、うっ、わかります――辛いですよね」

「いや、それはちょっと違うと思いますが……、ありがとうございます」

 なんと先ほどまで、狡賢い悪党だったプレイヤーに突っ込みを入れられる。その男の名は、シンリ。

「そんな理由があったなんて……わかりました」

「……?」

 シンリは本当に、真っ直ぐで、素直で、お人好しで、

「私たちで、この国の内戦を止めましょう」

 ――馬鹿だった。

 その男の名は、シンリ。

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