大陸東に位置する大国、【シムシ】。
二年前、【無神戦役】により、『首相アイゼン』が死亡という未曾有の事件が起こるも、その後生き残った五人の元幹部(7、セブン)達による【五元帥制】や、【魔導導入】という世紀の改革により、機械と魔導の融合を実現させ、さらに屈強な国となった――。
――それが、表向きの歴史。
二年前。
元々科学力、機械のみを信仰していたといえるシムシの民達は、もちろん【魔導】、自分達の今までの全てを否定するようなものを、すぐに受け入れることなどはできなかった。【五元帥】はもちろん、民主主義の要であるシムシの【議会】からも、承認は得られなかった。
そんな彼らを無理やり【魔導】の道へ、行かせ従わせたのは、やはり、『力』だった。
突然のことである。二年前、【無神戦役】のすぐ後に、自らを【シムシ国王】と名乗った【法王カナン】。彼女は魔法系最強のスキル、【全魔法行使】で瞬く間に【五元帥】【議会】を黙らせ、制圧することになる。実際その時戦った者達が目の当たりにした、『力』に、魅せられる者がシムシのトップの中から出ても不思議ではないほど、そこで見せたカナンの『力』は圧倒的だった。
【五元帥】のうち、元々魔導に精通していた三名が、承認。
【議会】では、金、暴、権等の『力』により、国民達の理解を得られぬまま、承認。
【法王カナン】の誕生である。
その時、【無神戦役】からわずか一週間も経っていない。
世紀の改革で変わったことは、主には+(プラス)が多かった。魔導と機械の融合、略して『魔械』の乗り物、武器は多く戦争に投入され、その成果はすばらしいものばかり。シムシの人々の生活は豊かになり、【法王カナン】に称賛の声があがりはじめるのもそう遅くはなかった。
(バッカだねえ)
既に【魔道大都市】と化したシムシ王国首都、アレクサンドルで、青い軽鎧を身に纏った、シムシ諜報員が一人。背は少し低かった。アレクサンドル城正面に、【光魔法】と【科学技術】の結集によって作成された、巨大なスクリーンが垂れ下がっている。アレクサンドル城三階のテラスからは、【法王カナン】と【五元帥】が、アレクサンドル城中庭に詰め掛けたシムシ国民達に手を振っていた。
(一番強いものに、流されて、流されて……。ま、それが普通なんだろうけど……。ゲームの中でくらいプライドは持とうよ……)
法王カナン万歳と、熱狂する国民達を傍から冷めた目で見ているのは、シムシ国諜報員『コメタロー』である。彼はアメツキの同僚でもある。
(……そろそろシムシにも、見切りをつけたほうがいいかな……)
彼はまだ、幼さが残る少女である法王カナンの顔をちらりと見て、アレクサンドル城から去った。あてはなかった。
二年前、【無神戦役】により、『首相アイゼン』が死亡という未曾有の事件が起こるも、その後生き残った五人の元幹部(7、セブン)達による【五元帥制】や、【魔導導入】という世紀の改革により、機械と魔導の融合を実現させ、さらに屈強な国となった――。
――それが、表向きの歴史。
二年前。
元々科学力、機械のみを信仰していたといえるシムシの民達は、もちろん【魔導】、自分達の今までの全てを否定するようなものを、すぐに受け入れることなどはできなかった。【五元帥】はもちろん、民主主義の要であるシムシの【議会】からも、承認は得られなかった。
そんな彼らを無理やり【魔導】の道へ、行かせ従わせたのは、やはり、『力』だった。
突然のことである。二年前、【無神戦役】のすぐ後に、自らを【シムシ国王】と名乗った【法王カナン】。彼女は魔法系最強のスキル、【全魔法行使】で瞬く間に【五元帥】【議会】を黙らせ、制圧することになる。実際その時戦った者達が目の当たりにした、『力』に、魅せられる者がシムシのトップの中から出ても不思議ではないほど、そこで見せたカナンの『力』は圧倒的だった。
【五元帥】のうち、元々魔導に精通していた三名が、承認。
【議会】では、金、暴、権等の『力』により、国民達の理解を得られぬまま、承認。
【法王カナン】の誕生である。
その時、【無神戦役】からわずか一週間も経っていない。
世紀の改革で変わったことは、主には+(プラス)が多かった。魔導と機械の融合、略して『魔械』の乗り物、武器は多く戦争に投入され、その成果はすばらしいものばかり。シムシの人々の生活は豊かになり、【法王カナン】に称賛の声があがりはじめるのもそう遅くはなかった。
(バッカだねえ)
既に【魔道大都市】と化したシムシ王国首都、アレクサンドルで、青い軽鎧を身に纏った、シムシ諜報員が一人。背は少し低かった。アレクサンドル城正面に、【光魔法】と【科学技術】の結集によって作成された、巨大なスクリーンが垂れ下がっている。アレクサンドル城三階のテラスからは、【法王カナン】と【五元帥】が、アレクサンドル城中庭に詰め掛けたシムシ国民達に手を振っていた。
(一番強いものに、流されて、流されて……。ま、それが普通なんだろうけど……。ゲームの中でくらいプライドは持とうよ……)
法王カナン万歳と、熱狂する国民達を傍から冷めた目で見ているのは、シムシ国諜報員『コメタロー』である。彼はアメツキの同僚でもある。
(……そろそろシムシにも、見切りをつけたほうがいいかな……)
彼はまだ、幼さが残る少女である法王カナンの顔をちらりと見て、アレクサンドル城から去った。あてはなかった。
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