カイド王座の間で、アトラが報告兵を脅していた、一方その頃、フォロッサ城のほぼ中央に配置されている重要施設の割にはアトラがあまり利用しない場所、【大会議室】で、事実上のカイド王国のトップ達が出揃っていた。
緑が基調とされている部屋の中で、一際目立つ白色の法衣。一分の隙も見せない物腰と話し方で、その会議場をほぼ支配している人物がいた。彼の名はカイド王国実質No.2、軍師【シシ】である。
「以上が、シムシの動きです。今後の対策は手はずどおりです。オールトンは、東カイドの国境を、ネイザンは西カイドの――」
ゆったりと諭すような口調で、シシは部下一人一人に指示を伝えていく。そこで動かす口、手、空気の流れにさえも、彼は隙を作らない。
「――指示は以上です。貴方達の働きに期待しています」
「「ハッ!」」
シシの言葉を合図に、カイドの軍事、政治を司るプレイヤー達が動き始めた。その指示は王から下されたものと同じ意味を持つ。王が既にそう明言している。
(――本来はアトラ王から、直接部下に指示を伝えていただくべきだというのに……)
全てのプレイヤーが去り、随分広くなった大会議場で、シシは白い扇をどこからか取り出し、顔の下半分を隠した。それはまるで、誰にも自分の表情を覚らせないためのようで、僅かに見えるシシの双眸は、空間のある一点を見据えて動かなかった。実際、彼が何を考えているのか、常人には理解できないだろう。
(アトラ王は戦争が嫌いだ)
(だが、それは甘い。こちらから仕掛けなければ)
(シムシの情勢が不安)
(奪われた【禁忌の武具】は、今はいいか?)
(衆の内乱がさらに悪化。情勢回復の見込み無し)
(Liveプレイヤー総数の急上昇)
これらは全て、シシ一人の思考である。
彼は瞬時に全てのことを考え、一の答えを出す。
(シムシを一刻も早く倒す)
もうだらだらと戦争を続けていくことはできない。あくまで本人は隠そうとして、実際シシ以外の誰も気付いていないが、シシにはわかっていた。アトラがなんとかカイドがシムシを倒さないようにしていることを。戦争の先延ばしを望んでいることを。
――シシには理解ができない。
(――そろそろ、考えなければなりませんね……)
不穏な空気が、カイド王国に流れ始めていた。
緑が基調とされている部屋の中で、一際目立つ白色の法衣。一分の隙も見せない物腰と話し方で、その会議場をほぼ支配している人物がいた。彼の名はカイド王国実質No.2、軍師【シシ】である。
「以上が、シムシの動きです。今後の対策は手はずどおりです。オールトンは、東カイドの国境を、ネイザンは西カイドの――」
ゆったりと諭すような口調で、シシは部下一人一人に指示を伝えていく。そこで動かす口、手、空気の流れにさえも、彼は隙を作らない。
「――指示は以上です。貴方達の働きに期待しています」
「「ハッ!」」
シシの言葉を合図に、カイドの軍事、政治を司るプレイヤー達が動き始めた。その指示は王から下されたものと同じ意味を持つ。王が既にそう明言している。
(――本来はアトラ王から、直接部下に指示を伝えていただくべきだというのに……)
全てのプレイヤーが去り、随分広くなった大会議場で、シシは白い扇をどこからか取り出し、顔の下半分を隠した。それはまるで、誰にも自分の表情を覚らせないためのようで、僅かに見えるシシの双眸は、空間のある一点を見据えて動かなかった。実際、彼が何を考えているのか、常人には理解できないだろう。
(アトラ王は戦争が嫌いだ)
(だが、それは甘い。こちらから仕掛けなければ)
(シムシの情勢が不安)
(奪われた【禁忌の武具】は、今はいいか?)
(衆の内乱がさらに悪化。情勢回復の見込み無し)
(Liveプレイヤー総数の急上昇)
これらは全て、シシ一人の思考である。
彼は瞬時に全てのことを考え、一の答えを出す。
(シムシを一刻も早く倒す)
もうだらだらと戦争を続けていくことはできない。あくまで本人は隠そうとして、実際シシ以外の誰も気付いていないが、シシにはわかっていた。アトラがなんとかカイドがシムシを倒さないようにしていることを。戦争の先延ばしを望んでいることを。
――シシには理解ができない。
(――そろそろ、考えなければなりませんね……)
不穏な空気が、カイド王国に流れ始めていた。
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