カイド王国は大きな円形の大海を挟み、東と西に分かれている。その円形の大海のほぼ中央には、ロフ島。そしてその島の北側には、カイド王国首都フォロッサがある。さらにフォロッサには世界最強と呼ばれる城があり、その王座に現在座っているのは、カイド国王、『アトラ』、別名『寅王』(だがあまり使われない別名)である。
相変わらず変な『王』Tシャツを全く着こなす気なく着用し、悠々と玉座に座っているアトラは、鮮烈なエメラルドグリーンの瞳とツインテール、強大な威圧感で誰もかもを一歩ひかせる派手なオーラをもつ人物である。傍らで眠る巨大な白虎の上に肘を乗せて、頭を支えるというゆったりしたポーズは、本人はゆるんだ空気をかもし出そうと努力したポージングなのかもしれないが、一般人に対して逆効果なのは明らかである。
(こえー、あの巨大な虎にもたれかかってるよ……)
初めて王と対峙する報告兵は、カチンと彫刻のように固まり、
「報告を頼むぞ」
王の一言で何かに背中を蹴られたように『気をつけ』し、報告を始めた。
「ハ――ハッ! 報告いたします! 先日、ユグドラシル樹近辺で、【深緑のケルビン】が、何者かに襲撃されました! その際、ケルビンは禁忌の武具、【トロイ】を奪われた、とのことです!」
「ほう、ケルビンが……。あやつは世界でも一二を争う弓の名手であったはずじゃが……?」
「ハッ! ケルビン殿は我がカイド王国の精鋭部隊、アトラ王直属の部隊の一員としても有名であり、自らの希望で僻地の防衛に回られ、」
「んなこと、知っておるわい」
「ハッ! 申し訳ありません!」
自らの行き過ぎた言葉に、後悔する兵士。そしてアトラの次の言葉を恐れる兵士。重苦しい空気に場が包まれる。
「……いいから、力を抜け。別に取って、食ったりはせん。――わしはな」
アトラがシロトラから肘を離して、王座にきちんと座ったことで、シロトラがグルルと唸った。報告兵はさらに固まり、呼吸さえ行うのを忘れた。
「……いかん、いかん、冗談が過ぎたか。すまんすまん! 冗談じゃよ冗談! わはは!」
アトラは話をはぐらかしたが、まだ動揺は隠せていなかった。
(禁忌の武具……? 何故いまさらあんな旧バージョンの遺物みたいなものを欲しがる輩がいるのじゃ……? ……これは変態的な怪しさのある事件じゃな……)
アトラは嫌な予感を拭いきれず、
「ケルビンを呼んでおくれ。詳しいことを聞きたい」
「ハッ!」
固い声で、兵に命じた。
相変わらず変な『王』Tシャツを全く着こなす気なく着用し、悠々と玉座に座っているアトラは、鮮烈なエメラルドグリーンの瞳とツインテール、強大な威圧感で誰もかもを一歩ひかせる派手なオーラをもつ人物である。傍らで眠る巨大な白虎の上に肘を乗せて、頭を支えるというゆったりしたポーズは、本人はゆるんだ空気をかもし出そうと努力したポージングなのかもしれないが、一般人に対して逆効果なのは明らかである。
(こえー、あの巨大な虎にもたれかかってるよ……)
初めて王と対峙する報告兵は、カチンと彫刻のように固まり、
「報告を頼むぞ」
王の一言で何かに背中を蹴られたように『気をつけ』し、報告を始めた。
「ハ――ハッ! 報告いたします! 先日、ユグドラシル樹近辺で、【深緑のケルビン】が、何者かに襲撃されました! その際、ケルビンは禁忌の武具、【トロイ】を奪われた、とのことです!」
「ほう、ケルビンが……。あやつは世界でも一二を争う弓の名手であったはずじゃが……?」
「ハッ! ケルビン殿は我がカイド王国の精鋭部隊、アトラ王直属の部隊の一員としても有名であり、自らの希望で僻地の防衛に回られ、」
「んなこと、知っておるわい」
「ハッ! 申し訳ありません!」
自らの行き過ぎた言葉に、後悔する兵士。そしてアトラの次の言葉を恐れる兵士。重苦しい空気に場が包まれる。
「……いいから、力を抜け。別に取って、食ったりはせん。――わしはな」
アトラがシロトラから肘を離して、王座にきちんと座ったことで、シロトラがグルルと唸った。報告兵はさらに固まり、呼吸さえ行うのを忘れた。
「……いかん、いかん、冗談が過ぎたか。すまんすまん! 冗談じゃよ冗談! わはは!」
アトラは話をはぐらかしたが、まだ動揺は隠せていなかった。
(禁忌の武具……? 何故いまさらあんな旧バージョンの遺物みたいなものを欲しがる輩がいるのじゃ……? ……これは変態的な怪しさのある事件じゃな……)
アトラは嫌な予感を拭いきれず、
「ケルビンを呼んでおくれ。詳しいことを聞きたい」
「ハッ!」
固い声で、兵に命じた。
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