(アイゼンと出会ったころ……? ふん、そんな遠い昔のことは忘れてしまったわ。
――視界が狭まる。
遠い昔、楽しかったといえば……楽しかった様な気もするが……。
――音が消える。
国? 戦争? なにも思わんかった。ワシもアイゼンも、わかっていたことなのじゃ。
……。
というかワシは、こういう回想が好きじゃないし、似合わない)
「【圧魔力】」
アトラの右手にアトラのすべての魔力が圧縮された青い球体ができあがっていた。魔球の中では、アトラの全魔力が暴れまわっている。『圧縮した魔力を対象に打ち込む』、ただそれだけの、もっとも単純明快な攻撃方法。だが、その攻撃の純度密度攻撃力は魔力に比例する。魔力の高低が顕著に現れる技なので、初心者にはオススメできない究極の技。
アトラ、アイゼン両名に躊躇はなかった。
黒剣にやはり全ての力を込めたアイゼンは、それでアトラの右手を分断しようとした。だが、それより先にアトラの『圧魔力』はアイゼンの黒剣に触れていた。
アイゼンの【絶対領域】は一瞬で吹き飛ばされた。そこで【絶対領域】は絶対ではなくなった。【領域】はまるでタバコの煙のように、さらなる強大な力によって、剣から、アイゼンから、綺麗さっぱり取り払われた。それはまるで、悪魔祓いのようだった。黒いオーラはまるで嘘のように大気に静かに消えた。
続いて、アイゼンの愛剣ツーハンデッドソードが、その魔力球に触れた場所から粉→粒子→無の順番に変化していった。音もなく、静かに。
そのまま順調に行けば、きっとアイゼンは体の一部か全てが消し飛んでいたのだろう。
だが、この因縁はこの物語では終わらず、次へと続く。あと0,1秒を待ちきれず、シロトラがアトラに飛びかかったからだ。突然の奇襲に微妙な魔力コントロールを可能にしていた超集中を切らしたアトラは、圧縮された全魔力を盛大に暴発、爆発させた。
ふとアイゼンと自分と周、三人で笑っていた頃を思い出したアトラ。
――それらは砕けて拡散した。
----------------------------------
アトラが目を覚ますと、そこにはもうアイゼンの姿はなかった。シロトラが済まなさそうに背中を丸めているだけだった。
「……久しぶりに呼んだから遊びたい気持ちはわかるが……。お前はあと少しが待てんのか、シロトラよ」
キューンと鳴いて、シロトラはさらに深く反省した。パートナーのしつけがあまり得意ではないアトラは、ま、こういう場合もあるかと考えた。むしろ、こうなることがわかっていたのか、あまり落胆はしなかった。
まだまだ腐れ縁は続くようだ。まだまだこの縁は、深い闇へと向かっているようだ。
――アトラは空を仰いだ。
――視界が狭まる。
遠い昔、楽しかったといえば……楽しかった様な気もするが……。
――音が消える。
国? 戦争? なにも思わんかった。ワシもアイゼンも、わかっていたことなのじゃ。
……。
というかワシは、こういう回想が好きじゃないし、似合わない)
「【圧魔力】」
アトラの右手にアトラのすべての魔力が圧縮された青い球体ができあがっていた。魔球の中では、アトラの全魔力が暴れまわっている。『圧縮した魔力を対象に打ち込む』、ただそれだけの、もっとも単純明快な攻撃方法。だが、その攻撃の純度密度攻撃力は魔力に比例する。魔力の高低が顕著に現れる技なので、初心者にはオススメできない究極の技。
アトラ、アイゼン両名に躊躇はなかった。
黒剣にやはり全ての力を込めたアイゼンは、それでアトラの右手を分断しようとした。だが、それより先にアトラの『圧魔力』はアイゼンの黒剣に触れていた。
アイゼンの【絶対領域】は一瞬で吹き飛ばされた。そこで【絶対領域】は絶対ではなくなった。【領域】はまるでタバコの煙のように、さらなる強大な力によって、剣から、アイゼンから、綺麗さっぱり取り払われた。それはまるで、悪魔祓いのようだった。黒いオーラはまるで嘘のように大気に静かに消えた。
続いて、アイゼンの愛剣ツーハンデッドソードが、その魔力球に触れた場所から粉→粒子→無の順番に変化していった。音もなく、静かに。
そのまま順調に行けば、きっとアイゼンは体の一部か全てが消し飛んでいたのだろう。
だが、この因縁はこの物語では終わらず、次へと続く。あと0,1秒を待ちきれず、シロトラがアトラに飛びかかったからだ。突然の奇襲に微妙な魔力コントロールを可能にしていた超集中を切らしたアトラは、圧縮された全魔力を盛大に暴発、爆発させた。
ふとアイゼンと自分と周、三人で笑っていた頃を思い出したアトラ。
――それらは砕けて拡散した。
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アトラが目を覚ますと、そこにはもうアイゼンの姿はなかった。シロトラが済まなさそうに背中を丸めているだけだった。
「……久しぶりに呼んだから遊びたい気持ちはわかるが……。お前はあと少しが待てんのか、シロトラよ」
キューンと鳴いて、シロトラはさらに深く反省した。パートナーのしつけがあまり得意ではないアトラは、ま、こういう場合もあるかと考えた。むしろ、こうなることがわかっていたのか、あまり落胆はしなかった。
まだまだ腐れ縁は続くようだ。まだまだこの縁は、深い闇へと向かっているようだ。
――アトラは空を仰いだ。
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