135.死2

2007年5月5日 LIVE
 アレックスは人を一人担ぎながら戦うのは初めての経験だった。難易度は言わずもがな高い。さらに相手を殺せない、【不殺】の戦いとなれば、難易度はさらに上がった。

「いや別に殺せないわけじゃないんですけど……」

 足払い。倒れたシムシの戦士。そのタイミングにあわせるようにして飛んでくる炎や雷や水鉄砲、剣、斧、槍エトセトラ。アレックスは【危険察知】でその全てを上手に避けきるのが不可能だと悟った。【神速】を使わざるを得なくなる。

「ぜはっ!」

 ひとまず攻撃は避けた。が、もちろん体力の消費は通常の約二倍かそれ以上。神速で包囲網を一気に突破しようにも、人がまるで壁のようだ。神速はワープではないので途中で人にぶつかることになる。突破はほぼ不可能に近い。

 アレックスは人を殺せない。サティンに人を殺して欲しくないのだから、それは当然である。人を消して前に進む道はない。
 サティンは相変わらずのフリーズ。これはどうしたことなのだろうか、自惚れかもしれないが、自分の所為なのだろうか、そうであってほしいものである、とアレックスは考えた。

「大きく……、重くなったなあ、サティン」

 流れるように、立ちはだかる戦士達の足に搾取のナイフをトントンと突き刺し、行動不能にしていく。その作業は二百という数の前には無に等しい。

 お前はプレイヤーだろう!? 何故そいつを助ける! といった驚き、憎しみのこもった耳に痛い声も多数聞こえる。

「残念、そんなことでは私の愛は止まらないのだ」

 搾取のナイフで戦闘能力を奪う。の繰り返し。

 終わりはくる。いつのまにかアレックスは大量の汗をかいていた。同時に、完全に四方八方を包囲されていた。危険察知が全方位から危険を察知した。それでわかってしまった。数秒後の未来が。

 さて、死とはどういったものなのだろう。

 アレックスは、思った。

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