134.諦

2007年5月5日 LIVE
 『自分が敵』という言葉が相応しい。

 【無神】はまさしく自分と戦っていた。この世界で最強の生物にとって、一番の敵は最強の生物である自分なのだ。

 アレックス。何の変哲もないプレイヤー。抹殺対象。処理は以上で終了のはずなのに。

 駄目

 恐ろしいほどの歯止めがかかっている。

 精密な機械ほど一つの歯車が欠けただけで致命的に故障する。完璧な【無神】は完璧にフリーズし、一時仮想の中の現実世界で起こっている出来事から隔離され、仮想の中の自分の中で戦うことを余儀なくされた。

(処理。抹殺対象スキップ)

 流石に【無神】の決断は早い。対象:アレックスに原因があると考えた【無神】は、すぐさま対象をスキップ、つまり無視することにした。

 ……エラー。

 どうして? 対象について思考することは推奨されない。しかし何故かその思考を中断できない。そして理解不能な感情が次々と突然現れている。

 それは、僅かな喜び。

 戸惑い、悲しみ、苦しみ。

 どうやら完全に、私は壊れてしまったようだと、【無神】は一時諦めかけるほど追い詰められた。

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