132.白

2007年5月1日 LIVE
「なーんでじゃ……?」

 森で起こった大きな爆発(クサモチの魔法)によってわずかに怯んだアイゼンの黒剣を紙一重で避け、アトラは木の幹に垂直に靴の裏で張り付いていた。重力を無視していた。だがアトラは構わず話を続ける。

「んな犯行の動機とか、そういうものには興味はないんじゃが。じゃが……うーん、何でじゃ? 何故世界を壊す? アイゼンよ」
「それは犯行の動機に興味があるということではないのかね」
「……それもそうじゃな」

 両手をズボンのポケットにしまい、エメラルド色のツインテールを揺らしながらゆらりと地面に着地したアトラは、黒いスニーカーのつま先で地面に方円を描き始めた。それは傍から見るとまるで暇つぶしの落書きである。

「儂は【運】が結構好きでな。確実とか定番とかそういう言葉は嫌いじゃな」
「やはり我のバリアを破ったのも何かの【運】か」
「そこまで言うとらんのに見破るとはのー……。まあ、そうじゃな。あの時は運がよかった。パル○ンテで敵が全滅したみたいな感じでお主の魔法バリアが全滅した、みたいな? ざまあみろじゃよ」

 次に方円内に複雑な文字記号をやはりつま先だけで器用に描くアトラ。それを邪魔しようともせず見守るアイゼン。

「ま、今回の魔法《これ》も【運】が相当絡んでくるシロモノじゃな。止めるなら今のうちじゃぞ? はて、お主はもう少し合理的なはずじゃったがのう? 今の隙を見逃すこともないくらいに」
「【運】などありえない。全ての現象には全て理由がある。運は自ら認識できないその理由と代えられた言葉だ」
「……ふーん、よくわからんことを言いおって。別にお主の意見なぞ聞いとらんわい。さて、久しぶりの対面か? 大きく育ったぞ。

 ――“出でよシロトラ”」

 完成した魔方陣の中心を、アトラは軽く踏んだ。同時、青白い光が一瞬魔方陣から大量に溢れ出し、さらに空中に大きな白い光球を発生させた。

その白い光玉からは、鋭い爪と白い毛を擁した巨大な虎の腕が突き破るようにして出てきた。

「さて今回は、どちらかが消えるまでやるとしようか」
「無論だ」

 二人の間に、もう言葉はいらなくなった。

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