123.赤

2007年3月27日 LIVE
 一瞬視界が、赤に染まった。

「……あ……」

 大きな、大きなものを、失くした。

 私の腹には、大きな穴が空いていた。

 中身は全て吹き飛んでいた。

 サティンの姿は、すぐ近くにあった。

 その手は、私の血で、真っ赤に染まっていた。

 サティンは、笑った。

「ひゃ、ひゃははははははははは!」

 覚悟していたとはいえ、これはきつい。

 体中から力が抜けていく。

 天使の歌声がすぐ近くで聞こえる。

 口から吐いた血が、私の手が、足が、ドット状に分解されて、サティンに吸収されていく。

 ……なら、あの石も、吸収されるのか。

 だが、私が死んでは意味がない。意味がないのだ……。

 ちくしょう、覚悟、していたの……に……。

 ……。

「さようなら、アレックス」

 誰でもあって、誰でもない声だった。

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