116.表

2007年3月11日 LIVE
「……は! ……やられた……な」

 地面に大の字に倒れたフルファイアは悔しそうに言った。最早動くこともできなくなったようだ。
 【搾取のナイフ】は本当の賭けだった。自身の生命力の上限を超えて相手の生命力を搾取することはできないし、射程も普通のナイフと一緒でかなり短い。もし仮に、神速で射程内に近付けたとしても、神速後のクールタイムに攻撃を喰らう、もしくは戦闘に関して全くの素人である私のナイフの刺撃を敵に避けられればそこで終わりだ。だから私は、一旦自ら囮になりトゥエルにフルファイアの注意を逸らしてもらうしかなかった。生命力【C】ならば、なんとか即昇天は防げ、自身の生命力値の調節もできるのではないか、という予測で。

「……リバース」

 バシンと音を立てて、【搾取のナイフ】は【癒しのナイフ】へと戻った。這って黒焦げになったトゥエルに近寄る。生命力をフルファイアから貰ったとはいえ、体力はすぐには回復しなかった。

「……ごめん」

 私が本当の囮にしたのは、トゥエル、君……だ。

 癒しのナイフをトゥエルに突き刺す。頼む。生きてくれ。死なないでくれ。

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