115.裏

2007年3月11日 LIVE
 ――肺に残っていた空気は全てその一言に使った。

「……リバース」

 握っていた癒しのナイフがバシン、と音を立てて変化した。黒い刀身、禍々しい装飾。癒しのナイフとは正反対のビジュアル。シンカさんに貰ったメモに書かれていた、癒しのナイフのもう一つの形態。

 【搾取のナイフ】……!

 トゥエルに注意していたフルファイアのふとももに、そのナイフを突き刺した。フルファイアは驚く。その痛みのなさに。そう、これは体力を奪うナイフじゃない。

「き、キサマァアアアアアアアアアアアアアアア!」

 フルファイアが叫んだ。そして搾取のナイフはフルファイアの【生命力】を搾取し始める。体力、魔力、その前にある、プレイヤーの【命】自体を削り始める。

「うおおおおおおおおおおおおおおお!」

 フルファイアはすぐさまふとももからナイフを抜こうとした。だが、ナイフからは黒い電撃のようなものがでてきて、触れられない。それはもちろん私も攻撃しているのだが、このナイフの柄だけは絶対に離すことはできない。

「離せええええ! 離せええええええええええええ!」

 フルファイアの指先が炎に変わった。何をしようとしているのかわからないが、無駄。
 【生命力】とは人を作る源だ。体力、精神力、魔力。生命力が削られれば、それら全てが削られてしまう。

「くそ! 魔力と精神力が足りない! やめろキサマアアアアアアア!」

 残った体力と魔力。全てを注ぎ込んでフルファイアは私を攻撃した。流石に痛い。だが、絶対に。

 離さないぞ

 10さん、真っ赤な夕焼け。10さん、笑う横顔。10さん、焦げたけれどなんとかまだある再会のスカーフ。10さん、焼けた服の間から、名前隠し君が落ちて転がった。
 
 
 
 
 
 
 フルファイアが、膝をついた。

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