114.死

2007年3月11日 LIVE
 片手ずつの炎なら、真正面からでも防げる、あるいは避けることができるはずだ!

「簡易挟み撃ちというわけか」

 それでもフルファイアは冷静だった。その表情は間近で見たからわかった。私は【神速】を使っていた。トゥエルより数秒早く、フルファイアの元にたどり着いていたのだ。0秒で近付いたはずなのに、フルファイアは満面の笑みで私に『両手』を向けていた。【神速】の速さを予想された。だがギャンブルに違いないここで、迷いなく片方に賭けるこの男、フルファイア。寒気もない。神速後のクールタイム。うごけ

 ドン。一瞬で私の視界は炎だけに。致死量の炎を浴びた。熱いを通り越して何も感じなかった。

 炎を風でこじ開けてフルファイアに迫ったのはトゥエル。突き出した角はフルファイアの顔に届こうとしたところで止まった。
 まるでその一瞬の生死を楽しんだかのように笑ったフルファイア。拮抗する炎と風。だが、私を気にする必要がなくなったフルファイアは、全力で炎をトゥエルにぶつけた。

「ヒ……」

 トゥエルの鳴き声は途中で途切れた。黒焦げになったトゥエルが視界の端に映った。だが私も燃やされたのだ。為すすべもなくフルファイアに倒れこむことしかできない。

 生命力が、0へと近付く。

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