110.行

2007年3月11日 LIVE
 焼き尽くされた森、水の無い泉。

 ……。

「逃げるぞっ、トゥエル」
「ヒヒン!」

 一段と逞しくなったトゥエルに飛び乗る。何故トゥエルは進化したのだろう。生命の危機か、泉の効力か、はたまた両方か。

「……まあ、いいか。生きててくれてありがとう、トゥエル」
「ヒヒン!」

 トゥエルは元気よく棹立ちすると、新品の角をくるりと前方で一回転させた。直後、すさまじい追い風が私とトゥエルを後押しする。トゥエルはその追い風に軽やかに乗り、泉の底から一度の跳躍で出た。まさしくトゥエルは飛んで見せた。

「……すごいな、本当に」
「ヒヒーン!」

 得意げに鼻をならすトゥエルであった。

 *

 そんな調子で、私とトゥエルは、追い風に乗りながらフルファイアが待ち構えているであろう町、ルツェンへと向かった。
 もちろん私の胸中では恐怖や不安が入り交じっている。それはむしろフルファイアに対する恐怖より、サティンがサティンのままでいてくれるのかどうか、という曖昧な恐怖、不安。
 国境を一気に突破する。これでシムシ国に入った。
 ルツェンに近づくにつれ増していく寒気。予感。可能な限りのスピードで走る私とトゥエル。……危険は確実に近づいている。

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