103.暴

2007年3月5日 LIVE
「『殺サナイデ』!」

「!? どうしたの!?」

 突然暴れだしたサティン。私はどうすればいいのかわからなかった。

「ちょっと、落ち着いて!」

 ひとまずサティンを背中から降ろし、振り回そうとした腕を押さえようとする。だが、

「うお!」

 逆に私は泉に放り投げられていた。見かけによらず物凄いパワーだ。冷たい水。泡の音。

「『チョット、落チ着イテ……』!!」

 今度は頭を押さえて苦しみだすサティン。息は荒く、両目からは涙が溢れていた。

「『アアアアーーーーーアアアアアァアアア!』」

「落ち着いて!」

 【神速】。泉の水を弾き飛ばし、0秒でサティンに近付く。そして、私はサティンを抱きしめた。

「落ち着いて……!」

「『助ケテ! 助ケテ!』」

 まるで何も知らない子供のように、サティンはその場で暴れまわった。パワーは確かに凄いが、これだけ近付けば私を弾き飛ばすのは容易じゃないはずだ。

「落ち着いて! 大丈夫だから!」

 呼びかける。私の腕の中からはみ出したサティンの腕が、空気をかき乱す。

「『……アアア! アアア!』」

「大丈夫!」

 何が、と言われると困るが

「『アア……アアア……』!」

「大丈夫だよ」

 とにかく大丈夫。

「『〜〜!』」

 だが、まだちょっと抵抗するサティン。

「大丈夫だって! サティン!」

「『ア……大丈……夫?』」

「ああ、大丈夫、大丈夫」

「『サティ……ン?』」

「あ、ごめん。君の名前は?」

 『サティン』は、私達が勝手につけた名前だった。本当の名前が解れば、用のないものだった。

「『……サティン』」

「え……? サティン……なの?」

「『……サティン』!」

 サティンの涙は、止まっていた。サティンは代わりに、笑っていた。

 元の名前が本当にサティンだったのか、サティンという名前が気に入ったのか、わからない。だが、この時がサティンの生まれた時だった。

「『君ハ……ダレ』?」

「ああ、私は……」

 マテ。

 自身が崩壊スル、と思うほどの

 恐怖と

 ……

 寒気を

 ……

 確かに感じた。

 ――私は、バラバラの死体になっていた。

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