102.覚

2007年3月4日 LIVE
 ここ……が?

(癒しの泉。ポチさんと私が、ステラに来た理由です。その子と、ここからすぐ近くの森に行ってみればわかりますよ)

 本当にここは衆なのかと疑いたくなるほどの、立派な森だった。魔力や生命力が溢れる森の中。だが生物の気配はなく、水や木のざわめきだけが聞こえる。神聖な気配。

(その子、じゃ不便ですね。……『サティン』。サティンというのは、どうですか?)

 流石ザクロさん。ナイスネーミングセンスだった。

「サティン、どうだ?」

 背中に乗せた白い子供改め『サティン』に声をかける。ここには魔力も生命力も溢れている。一言で言えば、居心地が良い場所なのだ。

(そこでは私の白魔法も何倍かの効力になります。ナノニナゼ、治らないんでしょうネ)
(ビクビクッ)

 ポチさんがおかしな動きをしていたのを思い出して、私は自然と笑ってしまった。

(一度その子と一緒に行ってきてみてはいかがでしょうか?)

 ザクロさんの言うとおり、きてみてよかった……。

「……『助ケテ』」

 か細い声。でも、確かに聞こえた。

「……サティン?」

 足を止める。目の前にはいつのまにか綺麗な泉が広がっていた。それから視線を外し、背負っているサティンの顔を見ようとした。

「……『殺サナイデ』」

 まるで、機械のように、抑揚のない声だった。均一。無感情。何もない声。

「……『近ヨルナ、バケモノ』」

「……何を、言っているんだい?」

 サティンは突然、激しく震えだした。

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