98.逢

2007年3月1日 LIVE
 衆。

 私は砂漠を、トゥエルと歩いていた。

 とりあえずチョコに向かおうと思った。だが、まだ三人がチョコにいる可能性は低いだろう。三人とも私とは比べ物にならないほどの有名人だ。多忙だ。それぞれの国に帰っているかもしれない。

“シムシ、カイド、遂に開戦”

 数日前に見た新聞を思い出してしまった。
 しまった、違う、違う、思考がそれた。
 ポチさん、ザクロさん、クサモチさん(?)。占いや、【人探しします】の看板を掲げた店に入れば、簡単に見つかるだろう。この世界はファンタジーだ。占いもある程度は信用できる。しかし、他人に頼るのは良くないと思う。それに、面白くもない。

(死んでいるかもしれない)

 そんな予感が、ないわけではなかった。
 だが、自分で、探し出す。そう決めた。三人を信じて、探し出す。そう決めた。そう決めたら、そうする。もう揺るがない。二度と。

 シンカさんから貰った二枚目と三枚目の紙は既に読んだ。二枚目は、【癒しのナイフ】に関すること。三枚目は意外や意外、私が森で動物達から貰った、【輝く石】のことだった。だが、内容は10さんが見たら泣いて喜ぶようなもので、今後の戦闘に役に立つとは思えないもので……まあつまりはただのゴミd。

 巨大な魔方陣が、突然現れた。チョコは目の前、だがまだ見えない。見えるのは砂漠。周りは何も見えない、ただの砂漠。夜。月が綺麗な夜だった。

 湧き上がる大量の魔力。砂を巻き上げ、風を起こし、トルネードを目で見える形に発現させた。次に閃光と爆発音。強力な魔力の破裂。光の粒子がそこら中に飛び散る。

「……」
「……ヒヒン」

 それらの光に照らされ、風に飛ばされそうになりながら、私とトゥエルはその光景を呆然として見ていた。しばらくして魔力の奔流が収まっていくと、同時に風や光も収まっていく。最後に巨大な魔方陣がパンと小気味のいい音を立てて破裂して、それは終わった。残ったのは、風の奔流で砂漠にできた不思議な波紋。

 そしてその中心にいる、十五歳ほどの子供。

 十五歳ほどとは体格のことだ。大人の姿のプレイヤーが多いLiveで、彼(彼女?)は比較的子供っぽい体格をしていた。だが、小学生と言うほどでもない。成長期、かなあ、曖昧な時期である。手足や顔は人形のように整っており、透き通るような白さの肌、裸足。一瞬寒気を覚える程の美しさだった。髪は体全体を覆うような長髪。暗い赤色の布の服。

 まさに「人形」という表現が相応しかった。

 息を呑みながら、私はその彼(彼女?)に近づく。ネーム:確認をしてみるが、名前は何故か表示されなかった。
 落ち着け、落ち着け私。落ち着いて今の状況を整理しろ。

 ・子供が砂漠の真ん中で倒れている。

「トゥエルー!」
「ヒヒン!」

 子供を担ぎ上げ、トゥエルに飛び乗る。

「チョコまで全力疾走!」
「ヒヒーーーン!」

 トゥエルは勢いよく前足を上げたあと、月が綺麗な夜の砂漠を、風のように駆け出した。

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