闇の空間。

 その空間には、闇が立ち込めていた。

 その空間には、泣きじゃくる子供。

 その空間には、不気味なオーラを出している長身の男。

 その空間には、【無常】アイゼン。

(二人の視界は奪ってあります。解除しますよ)
(ああ)

 【空間】に答えを返すアイゼン。空気が一瞬変わる。

(二人から貴方は見えません)
(わかった)

「うわああああん!」

 子供は黒髪の長髪で、見た目性別はわからない。身長は150cmほどだろう。闇の空間に怯え、座り込んで泣いている。

「……」

 男は身長が190cmはある。真っ白な短髪、鋭い赤眼。

「う?」

 子供は泣き止んだ。突然目の前に長身の男が現れたからだろう。きっと何も見えない状況よりは、マシだったに違いない。

「……」

 だが、長身の男は子供を見ても、何も言わなかった。赤目でギョロリと子供を睨みつけただけだった。

「うっ……」

 子供はまた泣きそうになった。【無常】は身動きもせずにそれを見ている。長身の男が静かに歩き出した。両手にはいつのまにか、禍々しい黒ナイフが握られていた。

「あ……あ……」

 子供は後ずさる。子供の着ていた大き目の布の服が擦れて音を立てた。
 長身の男は無言。黒いナイフを一度手の上で回した後、口元を邪悪にゆがめた。

「わあああああああああん!」

 子供は悲鳴をあげた。

 *

 *

 *

 水滴の、落ちる音。

 ピチャン

 綺麗な、氷のオブジェは、赤に染まっていた。

 ピチャン

 つららで体中を貫かれた長身の男

 ピチャン

 昇天して消えた。

 ピチャン

 血で赤く染まった自分の手をみた子供は。

「あー……? あはっ!」

 笑った。

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