白馬が、砂塵の中を、歩いていた。
背中には、死んだように眠る、一人のプレイヤー。
『フィーユ』地域の集落に、体中砂だらけの白い馬と、ボロボロになった一人のプレイヤーが辿りついていた。プレイヤーに意識はなく、疲労、傷もひどい状態。最早いつ昇天してもおかしくない状態だった。
そんな重傷人を、大砂漠を越えて運んできたその白馬は、フィーユ集落のプレイヤーの制止を振り切り、再び砂漠の中に消えたという。
-----------------------------------------
灼熱があの人を焼いている。
灼熱が私を焼いている。
涙は熱で蒸発する。
灼熱は私を焼いている。
『あははははははは!』
笑い声が、頭の中で響いている。
――私は眼を、開けた。
Live第四章 -世界編-
起きてから、夢だったのかと納得した。しかし、バーチャルでも夢を見るのかと疑問に思った。……まあ、バーチャルといえども、これだけリアルなら、夢にも出るか。
……しかし、ゲームの中で寝るというのはどういうことなのだろう。思えば、危険察知もそうだ。あの寒気は、直接私の脳に届いているような気がする。ある意味ブレインコントロールだ。そう思うと、恐ろしい。なのに、何故。
――私は今も、ここにいるのか……。
ここは、テントの中のようだった。天井は一点に集まっていく布で、周りに置いてある物は小さな戸棚ぐらいだった。私は薄い布の上で寝かされていた。
「お、兄ちゃん、起きたか。凄い生命力だな」
その声で、意識が完全に覚醒した。身を起こそうとすると、
(……あれ?)
起きなかった。
「ああ、無理すんなよ兄ちゃん。凄い怪我と疲労だったぜ? しばらく起きるのは無理だよ」
そう言って私の顔を覗き込んだ男性の顔は、ジョーカーマスクで隠されていた。
「……!?」
「はは、驚いたか? まあ、気にすんな」
無理だよ。
「俺は、そうだな……『走電』だ。お前さんは? なんで名前見えないの?」
『走電』、走る雷。いかにも偽名っぽかったが、ネーム確認などという無粋な真似はやめた。
「私は……」
(11……)
「……覚えて、ないです」
「はは、ゲームの中で記憶喪失か? 珍しい奴だな。
うーん、名無し……いや駄目だな。よし、お前の当面の名前は『喪失』だ! うん、かっこいいぞ!」
『喪失』。なるほど、今の私にぴったりかもしれない。
「……色々とありがとうございました。でも、どうして私は助かったんでしょう? ……ここは?」
「ああ……、そのことなんだが……」
走電さんの声色が変わる。
「まず、ここは衆の首都ともいえる集落『チョコ』の東側大砂漠を越えたところにある『フィーユ』っていう地域にある集落だ。今も内乱でギスギスしてるんだが、あんたは衆人みたいじゃなかったから、俺が勝手に助けた。と、言っても、あの砂漠を越えてあんたを助けたのは、白い馬だったんだけどな」
「……トゥエル……」
「ん? お前のパートナーだったのか。だが、そのトゥエルは、お前をここに運んだ後、またどっかにいっちまったぞ。俺も止めたんだがな」
「……そう、ですか……」
きっと、愛想を尽かされたのだろう。トゥエルは一旦ビストに置き去りにしてしまった。だのに、わざわざ大砂漠にまで助けにきてくれただけでも、感謝しなければならない。
「そんでだな、お前、最近生命力を大幅に削ったことあるか?」
「……? ええ、二回ほど」
初心者の森で女性を助けたときと、フルファイアに殺されかけたとき。
「スキルレベルアップを確認してみろ」
スキルレベルアップ 生命力【C】
背中には、死んだように眠る、一人のプレイヤー。
『フィーユ』地域の集落に、体中砂だらけの白い馬と、ボロボロになった一人のプレイヤーが辿りついていた。プレイヤーに意識はなく、疲労、傷もひどい状態。最早いつ昇天してもおかしくない状態だった。
そんな重傷人を、大砂漠を越えて運んできたその白馬は、フィーユ集落のプレイヤーの制止を振り切り、再び砂漠の中に消えたという。
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灼熱があの人を焼いている。
灼熱が私を焼いている。
涙は熱で蒸発する。
灼熱は私を焼いている。
『あははははははは!』
笑い声が、頭の中で響いている。
――私は眼を、開けた。
Live第四章 -世界編-
起きてから、夢だったのかと納得した。しかし、バーチャルでも夢を見るのかと疑問に思った。……まあ、バーチャルといえども、これだけリアルなら、夢にも出るか。
……しかし、ゲームの中で寝るというのはどういうことなのだろう。思えば、危険察知もそうだ。あの寒気は、直接私の脳に届いているような気がする。ある意味ブレインコントロールだ。そう思うと、恐ろしい。なのに、何故。
――私は今も、ここにいるのか……。
ここは、テントの中のようだった。天井は一点に集まっていく布で、周りに置いてある物は小さな戸棚ぐらいだった。私は薄い布の上で寝かされていた。
「お、兄ちゃん、起きたか。凄い生命力だな」
その声で、意識が完全に覚醒した。身を起こそうとすると、
(……あれ?)
起きなかった。
「ああ、無理すんなよ兄ちゃん。凄い怪我と疲労だったぜ? しばらく起きるのは無理だよ」
そう言って私の顔を覗き込んだ男性の顔は、ジョーカーマスクで隠されていた。
「……!?」
「はは、驚いたか? まあ、気にすんな」
無理だよ。
「俺は、そうだな……『走電』だ。お前さんは? なんで名前見えないの?」
『走電』、走る雷。いかにも偽名っぽかったが、ネーム確認などという無粋な真似はやめた。
「私は……」
(11……)
「……覚えて、ないです」
「はは、ゲームの中で記憶喪失か? 珍しい奴だな。
うーん、名無し……いや駄目だな。よし、お前の当面の名前は『喪失』だ! うん、かっこいいぞ!」
『喪失』。なるほど、今の私にぴったりかもしれない。
「……色々とありがとうございました。でも、どうして私は助かったんでしょう? ……ここは?」
「ああ……、そのことなんだが……」
走電さんの声色が変わる。
「まず、ここは衆の首都ともいえる集落『チョコ』の東側大砂漠を越えたところにある『フィーユ』っていう地域にある集落だ。今も内乱でギスギスしてるんだが、あんたは衆人みたいじゃなかったから、俺が勝手に助けた。と、言っても、あの砂漠を越えてあんたを助けたのは、白い馬だったんだけどな」
「……トゥエル……」
「ん? お前のパートナーだったのか。だが、そのトゥエルは、お前をここに運んだ後、またどっかにいっちまったぞ。俺も止めたんだがな」
「……そう、ですか……」
きっと、愛想を尽かされたのだろう。トゥエルは一旦ビストに置き去りにしてしまった。だのに、わざわざ大砂漠にまで助けにきてくれただけでも、感謝しなければならない。
「そんでだな、お前、最近生命力を大幅に削ったことあるか?」
「……? ええ、二回ほど」
初心者の森で女性を助けたときと、フルファイアに殺されかけたとき。
「スキルレベルアップを確認してみろ」
スキルレベルアップ 生命力【C】
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