89.燃

2007年2月21日 LIVE コメント (1)
「うわああああああああ!」

 甘かった。

「あああああああああ!」

 弱かった。

 その力はただ、圧倒的だった。

「はははははあはあああああ! 焼かれろあああああああああ!」

 砂漠を炎の海にした男。その男は『焼く』以外のことを考えていなかった。人を『燃やす』ためにできた男。私なんかが敵う相手ではなかったのだ。
 無様に這いずり回り、顔中に砂をつけ、私は逃げた。

 完膚なきまでに逃げた。

 魂や勇気でどうにかなることではない。生半可な決意だったわけではない。確かに私は逃げないことを誓った。はずなのに。

 ただ、強すぎた。ただ、狂いすぎていた。

「燃えろ焼けろ焦げろ消えろ灰になれ、燃えろ焼けろ焦げろ消えろ灰になれ!」

 最早フルファイアのシルエットは魔獣。自分と同じプレイヤーとは思えない。

 今度は何重にも炎の壁。もう体力も尽きた。後はどうなる。燃え尽きる。

「諦めたか。じゃ、死にな

 何の口上も無い。命令。振りかぶられたフランベルジュを、私は他人事のように見ていた。

 ゴメンナサイ、10さん……。
 
 
 
 

 
 

「あー、熱いな」

 何処かで聞いた軽口。青と白の軽鎧。すらりとした長身。優しいダークブラウンの髪。これは、幻覚?

「いいや、現実」

 何処かで体験した感覚。浮遊感。風を切る音。炎は消えて、悪魔は消えて、月と星の綺麗な夜。私は集落の中に、テレポートしていた。

「久しぶりだがボロボロだな、アレックス……」

 あまりに懐かしく、遠い声。だが、今は、何よりも

「ア、アメツキさん……」

 私は、安心、していた。

「ああ、そうだよ、アメツキだよ。流石衆だな。熱かった」

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ザクロ
ザクロ
2007年2月21日16:37

あめつきーーーーーーーーーーーーーーーーー

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