88.切

2007年2月20日 LIVE
「ふふ、こういう場面で読者が期待するのは、ズバリ、『追い詰められた主人公、隠された力の発現』、です!
 ふふふふ! 私も期待していますよ! もっともっとモガイテクダサイ! もっと! そうもっと! アァー! モガイテ!」

 暑さと寒気が同時に競りあがっていく。中和されてちょうどいい、ということにはならなかった。(気持ち悪い……)。正直逃げ出したかった。

「もう炎の壁との距離は、一メートルもありませんよ? どうしますか? その代わり私との距離も一メートルもありません? 逆転できますよ?」

 できるか。お前の方が危険なんだよ。喋る余裕、体力はもうなかった。

「ぜはっ……ぜはっ……」
「……つまらない。所詮は、初心者でしたね。これでは10も、浮かばれない

 
 
 
 
 
 
 
 ……あ?

 お前が、言うな! コラァ!

 怒りは全てを超えた。気付いたら私は、フルファイアを全力で殴っていた。ただ、殴っていた。逆に不意を突かれたのか、その拳は驚くほど綺麗にフルファイアの頬に入った。赤いサングラスが割れて、フルファイアの鋭い赤い瞳がちらりと見えた。
 私はそのまま砂漠の砂の中に倒れた。フルファイアは殴られた状態からピクリとも動かない。

「……」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 私の呼吸と、燃える炎の音だけ。
 その奇妙な静寂は、

「はははははははははははははははは

 異質な笑い声にかき消された。

ははははははははははははあはははは!!!

 はー。

 うん、サングラスを割られたのは二回目ですね。一回目は演出のため仕方なく割ったのですが、二回目は貴方に思いがけず割られてしまいました。これは相当残念です。

 死ねや

 全身が凍った。今まで体験したことがない、最上、最高、最低、最悪、の寒気危険! 死ぬ! 死ぬ!

「うわあああああああああああああああああああああああああ!」

 【神速】で炎の壁をつっきった。全身が炎に包まれた。熱い。熱い! 仕方がなかった。

ボケが。【神速】は【テレポート】とは違うんだよ!」

 完全にキレたフルファイアは、炎を消そうと転げまわる私を見下しながら、フランベルジュに魔力を溜めていた。さらに赤熱したフランベルジュは、周りの気流を乱すほどの温度になっていた。

「オラァ! 逃げろよ! 俺を楽しませろ!」

 口調まで変わったフルファイアは、フランベルジュをその場で一振りした。それだけで発生した熱風に私は吹き飛ばされ、砂丘をごろごろとゴミのように転がりまわった。

「ぐああああああああ!」
「ああ? これで終わりかコラァ!」

 私は、全身燃やされながらも、逃げるしかなかった。怖い。絶対フルファイアは、私を許さない。怖い!

「そうだよ、逃げろよ!」
「はぁっ、はぁあああ!」

 【神速】。なんとか町の中に逃げ込む。体はまた炎に包まれていた。

「うわああああああああああああああああ!」

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