何時から?

 一年前。

 何故?

 わからない。

 それは溜まった。まさしく溜まったのだ。

 この世界に対する、不満、矛盾、抑圧、悪意、嫌気、疑問、怨念、後悔、つぎつぎつぎつぎつぎつぎと。

(アイゼン様バンザーイ!)
(アイゼン様ありがとう!)

 民から受ける賞賛。それは心を素通りする。

(戦に勝利したぞ!)
(俺達の勝ちだー!)

 何かに対する勝利。それも心を素通りする。

 何が私の心を満たすのだろう?

 

 

 

 

 だよ。

 

 

 

 
 誰が言った……。

「誰が言ったのだろう……?」
「アイゼン!」

 周の声。アイゼンの心を素通りする。

「昔を思い出していた……」
「アイゼン、何を言っている!」

 必死の声。アイゼンの心を素通りする。
 アイゼンは再び黒いオーラで顔を隠した。アイゼンが顔を見せたのは、『キング』であるアイゼン王行方不明を演じるために、フルファイアに素顔を見せたとき以来だった。

(ひどいですね。相手のキングがこちらの思い通りになるようなものです)

 何故かアイゼンは、フルファイアのそんな言葉が、笑えた。

「だけど、お前に我の顔を見せたのは、何故なんだろうな、周」
「アイゼン……!」

 もう何も言わせなかった。アイゼンは周の首を掴んで持ち上げる。初めてログインして、初めて出会ったプレイヤー。あれからどれだけ経った。アイゼンのそんな思い出は、黒く染まっていた。

「完全なるアレの復活の為に、死んでもらおう」
「アイゼン、お前まさか……!」

 その時、ザクロはスクロールを思いっきり開いていた。中に描かれていた魔法陣から青い光が溢れ出した。

「よう、馬鹿者」

 白のTシャツに、黒いジャージ。緑のツインテールを一度揺らして、段々と実体化。

「久しぶりじゃのう」

 Tシャツの胸元には赤く描かれた『王』の一文字。だが『王』には見えないラフな格好。

「アトラ王の、お出ましじゃぞ」

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