「11さん!」

 ザクロが叫ぶ。飛び出そうとしても、外へ出る穴を塞ぐ二人のプレッシャーは凄まじい。オルゾフ、と、名前も顔も見えない人物。顔は黒いオーラで隠れ、名前も11さんと同じように隠れている。

「待って、ザクロさん。僕が行きます」

 ポチが立ち上がる。剣は既に抜かれていた。

「ぐへへ、ならお前の相手は俺だなぁ!」

 黒いローブを纏った小柄な男が、ポチを誘った。

「……はあ、やれやれ。どうやら仕方がないようですね」

 ポチは【無常】を警戒しながら、【暴君】オルゾフと共に外へ飛び出した。オルゾフも相当な実力者だとポチは見抜いていた。一番厄介そうな奴を残してしまうことになるが、仕方がなかった。

「我の目的は元老だけよ。……雑魚に用はない」

 ポチをも無視して、【無常】が周に向かって歩き出そうとした。ヒラタはすぐさまミノタウロスに変身して、その前に立ちはだかった。

「雑魚に用はないと言っておろう」
「ミノタウロス、何も恐れない。ヒラタウロスは、かっこいいんですよおお!」

 ヒラタは巨大な斧を振りかぶった。【無常】はそれを何もせずにそれをただ見ているだけだった。

「死を選ぶか、それも良い」

 ヒラタの振り下ろされた斧が、【無常】に届く前に何かに弾かれた。

「何!?」
「対物理反射バリア……」

 無常の呟きと共に、黒い風がヒラタを襲い、弾き飛ばした。ヒラタは部屋の壁をぶち破り、地面をしばらく転がって、止まった。ミノタウロスはピクリとも動かなくなり、やがて変身は解けてしまった。後には地面に倒れたままのヒラタと土煙だけが残った。

「馬鹿な、何故だ、何故だ!」

 周はまだ取り乱したままだった。ザクロは動けない。クサモチはまだ寝ている。

「何故だアイゼーーーーーーーーーン!

 禍々しい黒のオーラ、【無常】その顔の部分だけが薄くなり、髪も髭も全て黒く染まった、アイゼンの顔を晒け出した。

 月が綺麗な、夜だった。

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