83.周

2007年2月19日 LIVE
 豪風に逆らって、 飛んだ。

-----------衆 『チョコ』--------------

 午後 9:20

 床が突然現れた。バランスを崩すと思ったが、崩さない。

 その部屋は、薄暗かった。広い部屋の四方に、ロウソクが灯っているだけ。他には何もない。誰もいない。

 その、人物、以外は……。

「ご苦労だったな、ヒラタ……」
「はっ……」

 いつのまにかヒラタさんは正座して床に伏していた。
 その人物は、ヒラタさんの前に座っていた。簡素な敷物の上に、自然体で座っていた。だが、違う。
 その人物は、深い真紅の流れるような長髪を持っていた。それは揺れるロウソクの炎に照らされ、本当に燃えているようにも見えた。そしてその人物は、琥珀色の全てを見抜くような瞳を持っていた。その瞳に映っているのは、私達などではない。もっともっと大きなものだった。

「お前達も、突然すまなかった」

 周さんに声をかけられて、私はハッとしてその場にすぐ正座した。ポチさんとザクロさんは既に正座していた。だがクサモチさんは大の字で寝ている。なんという度胸。

「おれも歳だな。随分と心配性になってしまった。笑うか? ヒラタ」
「はい」
「そこはいいえと言え」
「ジョークです、すいません」

 噴出しそうになったが、堪えた。なんだこの空気は。

「お前達もそんなに固くならなくていい。これから起こること、おれは“知っている”。お前達が聞きたいことも解る。だからおれが一方的に話そう。聞け」

 薄暗い部屋の中で、暗闇に栄える琥珀色の双眸。見ているだけでも飲み込まれそうだった。

「まずはお前達を早く呼んですまなかったな。謝ろう」

 …………。

「何度も言うが、おれはこれから起こる事、ある程度“知っている”。だが、その起こる事を今まで変えることはできなかったし、多分今もできないだろう。ならば、その起こる事に対して最善を尽くす。おれにできるのはそれくらいだ。
 おれが視たのは、【四人が訪れる。その後、四人は最大の悪と戦う】という場面だけだ。三人は容姿からすぐにわかった。【隻眼の剣士】と【雷撃の魔道士】、【幸運の女神】。考えてみればシムシとカイドの有名人が組んだ豪華なパーティだな」

 一気に居心地が悪くなった。どなたかの名前だけ呼ばれていないからだ。

「ふん、おれはむしろお前の方に興味が湧いたのだがね。まあ、それはいい。【最大の悪】の姿は、おれも確認できなかった。だが、必ずお前たちと対峙することになる。まあ、もう少し後だ。固くなるな。覚悟するのは良いことだがな」

 無理だろ。【最大の悪】と戦うことになる、と言われて。

「さて【幸運の女神】」
「ザクロでいいです……」
「そうか、ザクロ」
「はい……」

 ザクロさんは何処からかスクロールを取り出した。ヒラタさんが使用したものより少し小さい程度。(中)だろう。

「よう、周」

 アトラさんの声が、それから漏れた。

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