75.走

2007年2月11日 LIVE
「避けた? 【危険察知】か?」

 ブラッドが想定外の事態に声を漏らす。

「いえ、【勘】や【運】の複合発動のようです。ですがおそらく、二度目はありません。作戦続行推奨です」

 だが、ローランが冷静に事態を把握。それに答えるかのように、ポチさんは苦笑しながら汗を一滴流した。
 ……あ、ヤバイ、寒気だ。これは多分ポチさん処分→私処分という流れを察知しているからだろう。ポチさんが殺されたら、私もコロサレル。
 考えるより先に、体が銃撃のあった方向へ動き出した。【神速】。五百メートルを一気に走り抜ける。これまでにない長距離だった。

「がっはあっ! はあっ! はあっ!」

 止まった途端、鬼のような疲れがどっと体を襲った。そりゃそうだ。五百メートルを全力疾走したようなものなのだから、当たり前だ。
 高い柵にもたれかかる。一瞬で村の端まで走った。

(このまま逃げるという手もある)

 そんな思いが、一瞬よぎった。

 そして、いつか見た光の柱も。

 ――馬鹿。いい加減に戦え、私。私には私の、戦い方があるだろう。できることがあるだろう。馬鹿。

 ――ポチさんを助けなければ。もう二度と、誰かの死ぬところを見ないように。行くぞ……。考えろ……。
 狙撃について詳しいわけではない。だが、狙撃に適している場所は限られているのだ。見通しがよく、酒場からある程度距離が離れている場所。

 私はすぐ近くにあった梯子に手をかけた。

 【寒気】……無視……。逃げることは、できない。

 弾は地面に突き刺さった。それはある程度の角度があったことを示す。
 おそらく狙撃されているのは、この物見やぐらの上からだ。

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