番外 炎の男の口上

2007年2月10日
 もう見慣れた黒い空間で、フルファイアと【無常】の二人だけ。

「『キング』は、計画通りに処理しましたよ。ええ、眼鏡が割られたのは、『計画外』でしたけどね」
「……」
「まあ、これでシムシはガタガタになるでしょうね……。ふふふ、ひどいお方だ」
「……」
「衆は既にボロボロ。シムシは首相様が消えた。カイドは国宝賢者の石を奪われた。さらにシムシとカイドの間に争いの『種』を植えることにも成功している。全く、本当に恐ろしいお方ですね」
「本当に口がよく回るな……」

 【無常】は言いながらもフルファイアに制裁を加えない。それは、フルファイアの強さをよくわかっているからだ。戦うことになれば、どちらも無事では済まされない。

「これは、褒めているんですよ。思い通りになることほど、楽しいことはないでしょう? チェス・ゲームならこれで私達の勝利は決まったようなものですよ。この優位を保つだけで、試合に勝てるのですから」
「これは、チェスゲームではない」
「重々承知ですよ。ですが、私が最近知った【事実】は、イコール【勝利】でしたよ? ふふふ、ね? 【無常】様」
「……」
「おや、だんまりですか。それもいいですね。喋りすぎよりはマシでしょう。それでは、失礼します」

 本当によく喋った後、フルファイアは黒の空間から消えた。ボス【無常】はもしかしたらこの世界で最も信用できない男に、【正体】を知られたことを悔やんだ。いや、それは悔やんでも仕方がないこと。問題は、簡単に始末できないことだ。

(……放っておくしかない……。アレが完成するまでの賭けだな……。銀の勧誘も成功した……計画は順調に進んでいる……)

 【無常】は静かに、世界の破滅を考えていた。

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