70.衆

2007年2月8日 LIVE
 その後は特に目立ったトラブルもなく、衆の国境を越えることに成功した。国境に警備兵はいなかった。
 ザクロさんによると、

「衆の人たちは国境より集落を守ることに専念しています。集落に入るときは少し警備が厳しいので覚悟してください」

 とのことだ。まだ衆のプレイヤーは見れない。

 衆は砂漠の国。事前情報でよーくわかっていたはずだったが、

「あつーーーーい!」

 意味もなく叫んでみた。カイド王国で着ていた防寒着は国境沿いの『 』中立国の町に預けた(ついでに涼しそうな服も購入)。だが、衆の日差しは私の予想を超えた。汗がだらだらと落ちる。蜃気楼が見える。
 ザクロさんは白のローブのままで涼しそうな表情。トゥエルも白色だからあまり熱を吸収しないのだろう、同じく涼しそうな表情。
 だがクサモチさんからは煙が出ていた。

 私達が衆最西端の地域、『クッキ』地域にある小さな集落、『ビスト』に着いた頃には、クサモチさんはトゥエルの背中で干物のようになってしまっていた。

「……ダメだ……水分……」

 まるで海草のようだなと思いながら、私とザクロさんはビストの警備兵に話しかける。衆のほとんどのプレイヤーは鎧を身に着けておらず、赤銅色の肌と逞しい肉体を自慢するようにさらけ出していた。警備兵も例外ではなく、仁王立ちしている上半身裸の屈強な男達に話しかけるのはそれなりの勇気が必要だった。木造の物見やぐらからは鋭い眼でこちらを睨むプレイヤーもいる。
 オラァ、勇気を振り絞る。

「あの……」
「……」

 沈黙。

「集落に入れさせて……欲しいのですが……」
「……」

 沈黙。

「……いやあ、暑いですね」
「……」

 ……沈黙。やばい、泣きそうだ。

「入れてください、お願いします」

 馬から降りたザクロさんが一礼して言うと、二人の警備兵は普通に集落に入れてくれた。あれ? 嬉しいけれど、なんだかキレそうだ。ふふふ何故だろう?

「……水ー……」

 クサモチさんはいまにも昇天しそうな状態だった。アンタ、一体何しに来たんだ。何がしたいんだ。
 まあ、とりあえず衆最初の集落、『ビスト』に到着である。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索